電王戦で敗れた“サトシン”こと佐藤慎一四段 「本当の悔しさ」をブログで語る
「未だ体が震えている」「悔しいかすらわからない」と、割り切れない心情を吐露。
第2回将棋電王戦の第2局が、3月30日に将棋会館(東京都渋谷区)で行われ、コンピューター将棋ソフト「ponanza」が、佐藤慎一四段に勝利した。現役のプロ棋士が、公の場でコンピューターに敗れたのは今回が初めて。惜敗した佐藤四段は、自身のブログで勝負後の心境をつづっている。
対局翌日のブログでは、「未だ体が震えている」「悔しいかすらわからない」と、割り切れない心情を吐露。勝負前のエントリーに殺到した結果(敗北)へのコメントについて、「全て読ませて頂いた」「批判のコメント、当たり前だと思っている」とし、ファンの期待に応じられなかったことを謝罪した。これに対し、平常時の100倍を超える激励コメントが寄せられている。
続けて4月1日に、「本当の悔しさ」と題した長文エントリーを掲載。本局を整理して振り返りつつ、悔しさを滲ませている。佐藤四段は、人間とコンピューターの将棋を指す方法について、「(伏線を含めた)流れを感じ“線”で考える」「局面を“点”で捉える」の違いがあり、それらは事前の研究で分かっていたという。
電王戦では、ほとんどの開発者が棋士側に旧バージョンのソフトを貸し出している。第1局で勝利した阿部光瑠四段は、それを元に研究を重ね、コンピューターの“癖”を見抜いていた。ところが、「ponanza」だけは、開発者・山本一成さんが“真剣勝負”にこだわり、貸し出していなかった。そのため、佐藤四段は第3局のソフト「ツツカナ」相手に対策したことを明らかにしている。「100局近くの練習将棋」など、本番で対戦するソフトではないと理解した上で、「強迫観念みたいに自分を動かしていた」という。
そして、「勝つ為だけの準備」をこなし、勝利するイメージを築きあげていたものの、十分にそれを発揮することはできなかった。実際の対局は、人間が終盤の入り口まで優勢に進め、最後にミスをしてコンピューターに逆転される流れだった。「141手で終わる将棋じゃなかった」「もっと指したいんだ! ここからだったんだ!」――佐藤四段は“本当の勝負”に挑めなかったことが、心の底から悔しいと告白している。
佐藤慎一四段は1982年生まれの30歳。2008年にプロ棋士となった。愛称はサトシン。なお、同じプロの佐藤紳哉六段もサトシンであることから、2人の対局はサトシンダービーと呼ばれる。
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