「無慈悲な質問」飛ぶも盛り上がりは控えめ 2回目のネット党首討論、ニコニコに期待するもの
前回より注目度が下がったネット党首討論。視聴者からの質問は切れ味抜群だったが、ニコニコの持ち味が封印されているようにも感じる。
6月28日、東京・六本木のニコファーレでniconico主催の「ネット党首討論会」が開催された。安倍晋三首相(自民党総裁)や民主党の海江田万里代表ら与野党8党の党首が出席し、ネット視聴者からの質問を基に討論を行った。
注目度下がる
ネット党首討論会は昨年11月に続く2回目。事前の告知が少なかったこともあってか、前回は視聴者数約140万人・投稿コメント数55万件だったの対し、今回はそれぞれ約10万人・38万件と大幅に下回り、視聴者によるミラー配信も減少した。前回不参加だった日本維新の会は、橋下徹代表が当初出席予定だったが、直前になって公務のため欠席した。
自民・共産の人気が高い
討論は、あらかじめ視聴者から募集した「経済政策について」「外交について」「各党首に聞きたい事、言いたい事」のテーマで進行。質問内容の選択には、ニコニコ生放送のアンケート機能が活用された。各党首が議論する機会は前回より増えていたが、1度の発言時間は1分~1分30秒と短く、各党や代表個人によるイメージが強調される結果となった。
視聴者コメントでは「安倍総理支持します!」「Cさん(共産党・志位和夫委員長のこと)!」など自民党と共産党の注目度が高かった。また、生活の党・小沢一郎代表に対しては「久しぶり」「元気がなさそう」と心配する声が少なくなかった。
切れ味抜群の視聴者質問
興味深かったポイントは、各党代表に対する視聴者からの指名質問。アンケートで選択された内容は、いずれも切れ味抜群だった。例えば、社会民主党・福島みずほ党首に向けられた質問は「党員が数人しかいない社民党ですが、なぜ議員の数を増やさないのでしょうか? あまり少ない人数では、政権を握ることもできないので、国を変えられないと思うのですが」。これには「無慈悲な質問」とするコメントもあったが、福島党首は「国会議員をとにかく増やしたいと思っています。増やしたくて増やしたくてたまりませんので、参議院選挙で本当によろしくお願いします」と率直に応答。忌憚なき意見のやりとりにはネットならではの可能性を感じさせられた。
また、討論会終盤に児童ポルノ禁止法改正案の是非について各代表に問われると、コメントの雰囲気が一変。改正案に前向きな自民党・公明党には厳しい声が寄せられ、反対した他6党はいずれも高い支持を得ていた。
niconico武器を封印
しかし、こうした視聴者からのコメントが会場に流れたシーンは最初と最後だけのごくわずかな時間だった。通常のニコニコ生放送では、出演者はコメント閲覧モニターなどを通じて“空気を読みながら”進めることができる。コメントというフィードバックがあることが、従来のテレビ中継にはないniconicoの持ち味だが、2回目となる討論会でも本領は伏せられたままだった。
近年、視聴者の声を“抑制力”として機能させながら議論することは民主主義において極めて重要であるといった言説が注目されており、昨年の内閣府ではニコニコ生放送とTwitterのコメントを流しながら行う議論も実施された。今春には、みんなの党が参院選候補者の選考模様を中継するなど、新しい試みも増えてきている。
今夏の参院選(7月4日公示・21日投開票)から、インターネットによる選挙運動が解禁される。政治とネットの関係が深化するなか、niconicoが担う役割も大きくなってくるはずだ。その時、自ら武器を封じることなく、持ち味を生かし続けてくれるよう期待したい。
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