過重労働が常態化、深夜のワンオペ解消されず……すき家の労働環境、第三者委員会が調査報告書
これまでのビジネスモデルが限界に達し、壁にぶつかったと第三者委員会は指摘している。
牛丼チェーン「すき家」の労働環境について、運営元ゼンショーが設置した第三者委員会が調査報告書をまとめ、7月31日にすき家に渡した。報告書では過重労働など過酷な労働環境が浮き彫りにされている。
第三者委員会は、今年3月に起きた大量店舗閉鎖を受けて設置されたもので、弁護士の久保利英明氏らが委員を務める。この大量閉鎖は、就職などで学生クルー(アルバイト)が多く退職し人手不足になる2~3月に、手間のかかる「牛すき鍋定食」が投入され、現場が疲弊したことによる。また同時期に、大雪でクルーが帰宅できず長時間労働することがあり、これをきっかけにクルーの不満が爆発して稼働率や人数が減少、代わりにシフトに入った社員へ過重な負担がかかったという。
これを受け、同委員会では社員数推移などのデータや、現場への聞き取りなどにより実態を調べた。
調査によると、過重労働が常態化し、恒常的に月500時間以上働いていた社員や、2週間家に帰れない経験をした社員も見られた。またかねて問題視されていた1人勤務体制(ワンオペ)についても、防犯上問題のある深夜帯のワンオペが、「順次解消する」との公表があったにもかかわらず解消されていないことが分かった。ほかにも休憩時間がない、十分な休日が付与されていないなどの問題も挙げられている。
ゼンショーおよび親会社ゼンショーホールディングスではこうした問題について全社的な検討・対応がされず、「目の前にあるはずの過重労働問題等に対する“麻痺”が社内で蔓延し、『業界・社内の常識』が『社会の非常識』であることについての認識が全社的に欠如していたものと言わざるを得ない」と報告書では指摘されている。
委員会は、長時間労働の絶対的禁止のルール化、深夜時間帯のワンオペ解消などを提言。今回の事態について、「『外食世界一を目指す小川CEOの下に、その志の実現に参加したいという強い意志をもった部下が結集し、昼夜を厭わず、生活のすべてを捧げて働き、生き残った者が経営幹部になる』というビジネスモデルが、その限界に達し、壁にぶつかったものということができる」と述べている。
ゼンショーホールディングスは同日、分社化や労務管理体制・ガバナンス体制の強化といった改革を実施すると発表している。また第三者委員会の提言に対して、「当社と子会社である株式会社ゼンショーとの間の権限の問題が重要であると受け止め、今後速やかに改善に取り組む所存です」「株式会社ゼンショーの労働環境に向けた改革、ガバナンス体制強化に向けた取り組みが順調に進むよう、サポートとチェックを続けてまいります」とコメントしている。
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