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手袋を落とした! 残った片手袋の使い道を謎の人物「片手袋研究家」に相談してみた

片手袋への異常な愛情。

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 お気に入りの手袋を片方だけ落としてしまった……。そんな切ない体験をしたことはないだろうか。何が悲しいって、残された手袋の所在なさ。この“片手袋”に、いい使い道はないのだろうか?

こういうこと、あるよね

 そう思って何気なく調べたところ、なんとこの世の中には「片手袋研究家」なる人がいるというのである。早速、会ってお話を伺った。そもそも“片手袋研究家”とは一体何をしている人なのだろうか?

片手袋研究家の石井さんのWebサイト

「世の中にはびっくりするほどたくさんの手袋が落ちているんです。地面に置き去りにされたもの、誰かが手すりにひっかけたものなど、その形態はさまざま。そんな片手袋を写真に撮って研究を重ね、今年で10年目になります」(片手袋研究家・石井公二さん)

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 予想外に長い研究家人生に衝撃を覚えた。さらに遡ると、幼少の頃にウクライナの絵本「てぶくろ」を読んで以降、街に片方だけ落ちている手袋が気になり始めたのが、片手袋愛への目覚めだという。

「専門分野は“落ちている手袋”ですが、もちろん残された手袋に関しても研究しています。一緒に片手袋の使い道について考えてみましょう」(片手袋研究家・石井さん、以下同)

石井さんの研究によって解明した落ちた片手袋の分類図

「例えば軍手の場合。軍手なら、片方だけでもかなり使い道があるんですよ。ちょっと考えただけでもこれだけあるんですよ」(同)

  • 机や椅子の脚部分にはめて養生にする
  • 魚を調理するときに滑らないように片手にはめる
  • ニンニクを入れて干す
  • 石鹸を入れてネットとして使う
  • コーヒーフィルターとして使う
  • ぞうきんとして、片手にはめたまま床を拭く

 軍手を「手につけるもの」ではなく、「袋状の何か」として捉えることで、新しい活路が見出されるのである。

「そして、落として一番困るのは、やはりオシャレな手袋ですよね。軍手と違って使い道はかなり限定されると思います。しかし、片手袋研究歴10年の僕だからこそ声を大にして言いたいことがあるんです。それは、手袋を落としても簡単に諦めないこと! ふざけてるんじゃないですよ。手袋って本当にいろんな人が拾ってくれてるんです。落としたことに気づいたときは、とにかくよく探してみること。ガードレール、電柱、道端の支柱などに載せられている可能性があります。ただ、どれだけ探しても見つからないというときは、潔く諦めるしかありませんね。そこで、オシャレな片手袋の使い道を考えてみました。例えば、顔をつけてぬいぐるみにしたり、額縁に入れてオブジェみたいにしてみたり、アート作品として活用するのはいかがでしょう? ぬいぐるみやオブジェは、手袋のぬくもりを全面に出せるので、おあつらえ向きだと思います」(同)

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目をつけた手袋をコップに被せたもの。ぬいぐるみに混ざっても違和感がない

 オブジェにしたとたん、手袋が愛らしく見えるから不思議だ。また、「なりきりアイテム」として使う手もあるという。一体どういうこと……?

「世界で一番有名な片手袋って何かご存知ですか? そうです、マイケル・ジャクソンですね。かの名曲『ビリージーン』では片手袋でパフォーマンスしています。ちなみにこの手袋はオークションで1700万円もの値がついたそうです。また、映画『アナと雪の女王』で、エルサは片手袋の状態で『Let it go』を歌いだすんです。去年は空前の片手袋ブームだったといっても過言ではないでしょう。なりきりアイテムとは、つまり片手袋をしてマイケル・ジャクソンやエルサになっちゃおうということです」(同)

 「手袋を片方なくした! よし、エルサになりきろう!」と解決するとは思い難いが、こういった発想が生まれるのも、並々ならぬ片手袋愛ゆえか。そもそも、マイケル・ジャクソンやエルサの手袋に注目したことなんか、なかった。そして最後に、石井さんはこう付け加えた。

「そもそもです。手袋は両方同じものをしなくちゃいけない、という固定概念を捨てることです。サッカーの本田選手の時計と同じで、アンバランスさが逆に格好いいみたいな。手袋を落とした瞬間、あるいは誰かの手袋を拾った瞬間、あなたも片手袋研究家の一員なのです」(同)

(中村未来/清談社)

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