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kgや円、cmにGB、身近なものの単位を見て触って体験できる「単位展」が面白すぎた!

「しごと」と「かてい」、どっちが重いの?

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 「りんご1つの大きさ」を問われたら、正確に答えられるだろうか? 1円玉1000枚は何kg(キログラム)なのか知っているだろうか? 「1GB(ギガバイト)」と言われて、それを文字に換算するとどれくらいの情報量なのか、想像つくだろうか? 普段なにげなく「ギガバイト」などの単位でひとくくりにして認知している身近なものを、体感できる展示が話題になっている。六本木の21_21 DESIGN SIGHTで現在開催されている「単位展 ― あれくらい それくらい どれくらい?」である。

チケットは1m(メートル)メジャーのようなデザイン

大きさ、長さ、重さ、高さ、時間など身近な単位を体感

 入口すぐの大きなパネルには、まず単位の働きについてが説明されていた。要約すると、単位があるおかげで、「はかる、比べる、共有する、計算する、規格化する、変換する」の6つが可能になっているという。そのすぐ横にあるのは、りんごの大きさを手で作って体感するコーナー(「りんごってどれくらい?」パーフェクトロン)。思いの外、一回目でりんご「ジョナゴールド・大」が出たが、その後何度やっても出たのは同じ「ジョナゴールド・大」ばかり。私の手の癖なのだろうか。微妙な大きさの違いで、別の品種も出るらしい。

大きすぎるとカボチャが出ることも
「ジョナゴールド・大」が出た

 次の部屋には、mやJ(ジュール)、mol(モル)などの聞いたことのある単位を丁寧に解説したパネルや、1kgと1lb(ポンド)の質量を比較した展示があった。

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赤コーンは1kg、Yシャツ3枚は1lb(ポンド)(右)

 部屋の真ん中には、長さ、重さ、高さ、時間をそれぞれ体で感じるコーナーが。

キュビットなど普段使わない長さも
いろいろな重さを手に乗せてみる
椅子の座り比べで心地良い高さを感じられます
ストップウォッチをぴったり止めようとするのは誰もが通る道

 そして、こちらは1GBの情報量が流れるディスプレイ。ちなみに、流れている文字の総数は3億5791万3941文字らしい。

見よ、これが1GBだ!(どーん)

 こちらはお札や硬貨を、重さや長さで表現したショーケース。1円玉1000枚の重さは1kg、1円玉25枚の幅は50cmらしい。言ってしまえば、まったく知る必要のない情報、実に愛すべきムダである。さぞ、準備が大変だったことだろう……。

途方もない苦労の結晶

「しごと」と「かてい」は重さの単位で表すとどっちが重い?

 一見とりとめのないオブジェだらけに見える大広間。この部屋に入ってすぐのところにある「ことば の おもみ」(大野友資+岡本健)が、「単位展」の中で最も心躍った展示だった。

大広間に展示がいっぱい

 「ことば の おもみ」は、濁点を1.00gとした場合、50音はそれぞれ何gになるかを調べたもの。「ぬ」が17.00gで一番重いらしい。

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濁点よりも半濁点のほうが重いことが発覚

 この50音を使って、言葉を天秤ではかってみると、「おもい」と「かるい」では、「おもい」のほうが重い。正しい結果になって、安心だ。

おもい=35.54g、かるい=32.94g、その差は2.6g

 「しごと」と「かてい」は、しごと=25.35g、かてい=29.22gで、「かてい」のほうが重かった。なかなかにメッセージ性の高い結果である。

「仕事と家庭、どっちが大事なの?」「かていのほうがしごとより3.87g重いかな」

 また、言葉を入力して重さを調べてみるコーナーで、自分の苗字と名前を比べてみたところ、名前のほうがかなり重いことが分かった。だからどう、というわけでもないが、なるほど、今後参考にして生きてゆきたい。

あさい=34.41g、まゆみ=43.35g

単位しりとりに、ピクセル体感マシーン。あれも単位、これも単位

 ほかにも数え切れない展示があるこの大広間の中で、特に印象深かったものを紹介していく。1cmから順にアイテムを並べていった展示。ほとんど網羅しているが、一部欠けているものも。

ただいま72cmのアイテム募集中(右)

 A判・B判を積み重ねた展示に、月を表す英単語を分かりやすくしたもの(1anuary=1月、8ugust=8月、など)。

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本の大きさも積み重ねると一目瞭然(左)、英単語に数字が入るだけでこんなに分かりやすく!(右)

 「100mlビーカーにつまようじを入れたら約450本入った」という発見を発表しているものや、「わりばし1本の高さと回転寿司お皿12枚は同じ」という豆知識の披露なんかもあった。

100mlビーカーにつまようじは約450本入ります(左)、皿12枚はわりばし1本分(右)

 文字のつくりから新種の賀寿を勝手に作った「年がら年寿」では、自分の年齢のハンコを押せる。

7歳は「六+一」で「立寿」

 学校の授業で使えそうなのが、「単位しりとり」(菅俊一+藤田すずか)。1リットルのペンキで塗ると=10平方メートル、10平方メートルの面積には……、としりとりで画面が移り変わっていく。

単位がつながっていくのがおもしろい!

 画面に近づくごとにピクセルが粗くなっていく体感コーナー「Pixelman」(岡田憲一/LENS)。

一歩近づくごとに自分の姿がドット絵に
ショップでは単位タオルを切り売りしている(左)

 この「単位展」で見られるもの、体験できるもの、そのほとんどが、もしかしたらすべてが、人生においてムダなものかもしれない。1円玉の重さが正確に分からなくたって、1GBの情報量がどれくらいの文字数なのか知らなくたって、人は生きていける。お金の単位は「kg」ではなくて「円」だし、情報の大きさをまとめた単位が1GBだからだ。

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 単位は、物事を分かりやすく役割を担っているものなのだから、それでいい。そういった前提がある上で、「単位」というものを深く知る、愛すべきムダの集合体。それが「単位展」を体験してきた感想だ。円とkg、GBと文字数、単位があらゆるものを繋いでいた。単位じゃないものすら、ここでは単位になっていた。万物は、森羅万象は、単位なのかもしれない(錯乱)。

朝井麻由美(@moyomoyomoyo)。フリーライター・編集者・コラムニスト。ジャンルは、女子カルチャー/サブカルチャーなど。ROLa、日刊サイゾー、マイナビ、COLOR、ぐるなび、等コラム連載多数。一風変わったスポットに潜入&体験する体当たり取材が得意。近著に『ひとりっ子の頭ん中』(KADOKAWA中経出版)。構成書籍に『女子校ルール』(中経出版)。ゲーム音楽と人狼とコスプレが好き。

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