インタビュー

『NEW GAME!』もっともっと知りたいぞい! 得能正太郎さんに突撃

「今日も一日がんばるぞい!」がネット上で話題となった芳文社の『まんがタイムきららキャラット』で連載中の4コマ漫画『NEW GAME!』。得能正太郎さんが描くこの作品にどうしてこんなに引きつけられるのだろう。

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 2013年、芳文社の漫画誌『まんがタイムきららキャラット』で連載が始まった得能正太郎さんの4コマ漫画『NEW GAME!』。

 高卒でゲーム会社に入社した女の子・涼風青葉を主人公に、さまざまな魅力あふれるキャラクターによって展開される同作は、あるコマがSNSで話題となったことで一気に話題に。紙のコミックスは重版が掛かるものの、入手困難な状況が続いていたが、電子版の配信も始まり、さらに3月末には2巻も発売された。特に電子書店「コミックシーモア」では、独占先行配信や大々的なキャンペーンも実施中だ(4月13日まで)

書影クリックで試し読みもできちゃうぞい! 書影クリックで試し読みもできちゃうぞい! (大事なことなので2回言いました)

 作者の得能正太郎さんとは一体どういった人物なのか。作品に込めた思いや作画する上で重視するポイント、さらには作画環境や影響を受けた作品を得能さんに聞いた。

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表情の匠(たくみ)、得能正太郎のこだわり


「今日も一日がんばるぞい!」のコマはネット上で大きな話題に ©得能正太郎/芳文社

―― 青葉の「がんばるぞい!」のコマが期せずして話題になりました。セリフとイラストが絶妙に合わさっていてなぜか気になるコマですが、得能さんが「いや、このイラストとセリフの組み合わせもいい……」とひそかに思っているコマはありますか?

得能 セリフは、そのコマの表情で言いそうな範囲まで、と決めているので、それでそんなふうにとらえられているのかな……と、別に意識しているわけではないです。


グラフィックチーム アートディレクター(AD)のりん。青葉との会話の中で見せたこの笑顔にはさまざまな思いも? ©得能正太郎/芳文社

 でも、2巻の23ページ右4コマ目のりんの笑顔は、いつも通りの描写ではあるんですが、描いている時に漫画じゃないと描けない表情だったかなとは思っていました。たぶん僕も含めて読者さんもサラっと読んでしまうコマだとは思うんですが、個人的に気に入っているコマです。

―― 得能さんはゲーム会社で勤務されたご経験があり、『NEW GAME!』にもそうした経験が生かされていますよね。ご自身が読者としてこの作品を見た場合、自身の体験と合わせて、胸に何かがこみ上げてくるコマや言い回しは?

得能 2巻の91ページ左4コマ目の「設定画集ではなく、設定っぽい画集では?」ですかね。

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 漫画でも、ラフやネーム、キャラ設定を表に出すことがたまにあるんですが、常日ごろからお客さんに見せても問題ないものは心がけたい……ですけど、まぁ漫画は個人作業で自己完結に近いので、勘弁ですね!!

―― 得能さんが作画の際、最もクオリティーに影響すると考えるのはどんな部分ですか?

得能 表情ですね。キャラクターを描く際に一番大事な部分だと思います。それを描くためにはキャラクターの性格を把握しないといけないわけで、上手くキャラ作りができれば、それにともなっていい表情も描けるかなと。


©得能正太郎/芳文社

―― なるほど。ちょっと話題を変えて、特に印象に残っているゲームのキャラクターなどはいますか? グラフィック以外に、そのキャラクターを印象づけた性格なども合わせてお聞きしたいです。

得能 昔の作品だと、『幻想水滸伝2』(1998年発売、プレイステーション)の主人公と親友のジョウイの組み合わせは好きでしたね。親友で、最終的な目的は二人とも一緒なのに、それを達成するまでの過程の考え方が正反対で、それで対立してしまう関係は、今でもとても印象に残っています。

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―― 『NEW GAME!』2巻で自分たちが作ったゲームの発売列に並んでいるときの「コナーがラスボス」に通じるものを感じます(笑)。この作品づくりには、担当編集の方とのコミュニケーションがよい影響を生み出しているように思うのですが、両者がよい形で歩み寄っていたりするのでしょうか。

得能 ご質問のとおり、両者が歩み寄ろうという気持ちを持つことが大事でないかと思います。

 これは妥協という意味ではなくて、「相手の話を聞く」ことと「相手の話を理解する」ということは全く別もので、後者ができるかどうかだと思っています。

 相手の話を理解した上での否定は、気分の悪い否定にはならないんです。ここができるかどうかで、上手くお互いの考えのすり合わせができるかどうかにもつながるんじゃないかと思ってます。

―― コミックシーモアでの独占先行配信や電子書籍化をお祝いしちゃうぞいキャンペーンは、かなり力の入ったものだと思いました。

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青葉とおそろいクマさん寝袋は鋭意制作中とのこと ©得能正太郎/芳文社

得能 僕は1枚イラストを描いただけなので、それでとても良い感じの宣伝をして頂いてスタッフの方には感謝ですね。あと、クマの寝袋をつくってくださるとかで、驚いてます(笑)。

―― 青葉とおそろいクマさん寝袋ですよね。宗次郎きぐるみだったらどうしようかと思いましたが(笑)。ところで、得能さんの作画環境はどんな感じなんでしょう。特に重要/お気に入りなものは?

得能 全行程をPCで作業しています。PCに詳しくないのでサッパリなんですが、3年くらい前に買ったもので、当時のハイスペックゲームができる程度のPCですね。いい時代ですね。

 液タブはワコムの「Cintiq 21UX」と「Cintiq 13HD」の両方を使っています。漫画のモノクロの線画の時だけ密度の高い13HDを使っています。

 描画ソフトは、Photoshop CS3が基本で、漫画のモノクロの線画とトーン作業はCLIP STUDIO。それ以外のラフやネーム、カラー原稿の線画も色塗りも全てPhotoshop。Photoshopで表現できないことをCLIP STUDIOでやってる感じです。

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―― eBook USERではインタビューさせていただく方に、人生でどんな本に感銘を受けたのかを伺っているんですが、得能さんが最も印象深い作品といえば?

得能 あまり本を読まない方なので、難しいですね……。

 漫画は天野こずえ先生の『ARIA』で。この漫画を読んでなかったら女の子だけの日常漫画を描いていることはなかったと思います。最初のきっかけですね。

 あとは北方謙三先生の『水滸伝』。小説嫌いの自分が、全巻読んでしまったので。通勤当時、電車内でずっと読んでいました(笑)。腐敗した国へ立ち向かっていき、最後は……とても衝撃を受けた作品でした。

―― ありがとうございます。得能さんの描くキャラクターたちのこれからも楽しみです。

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