知ってた? 東京のタクシーが取り組む「タクシーこども110番」 認知度低く利用報告いまだゼロ
都内の子どもたちにはぜひ教えておきたいところ。
都内に約5万台あるという、東京のタクシー。これらは子どもから助けを求められた場合、乗客の有無に関わらず子どもを保護して警察に通報する制度となっている、という情報がTwitterで話題になっていた。
ツイートには「こんないい制度にも一つ欠点があります。誰もこの制度の存在を知らないということです」という指摘も。確かに、筆者を含め編集部にいた都内在住の6人は全員が初耳だったし、もし本当にこの制度があるなら子どもたちや保護者に広く知ってほしいところだ。
調べてみると、こちらは「タクシーこども110番」という実在する活動だった。2006年4月から東京ハイヤー・タクシー協会が、同年12月から東京都個人タクシー協会が、警視庁と東京都の協力を得て取り組んでいるもの。昼夜問わず都内を走り回っているタクシーの特性を活かし、犯罪に巻き込まれやすい子どもたちを守っていくのが狙いだ。
両協会の活動内容はほぼ同じ。加盟するタクシーは事件に巻き込まれそうになった子どもが助けを求めてきた場合、まずは子どもを車内に保護。事情を聞いた後に警察に通報し、警察の指示に従いながら子どもの安全の確保に努めるという。また子どもたちへの目印になるよう、「タクシーこども110番」の文字が入ったステッカーを車体に貼り付ける。
国土交通省によると都内のタクシーは法人・個人あわせて5万494台(2015年3月時点)。このうち東京ハイヤー・タクシー協会に加盟している法人は離島地区を除いて372社で車両数は合計2万9297台(2015年6月時点)、東京都個人タクシー協会に加盟している個人タクシーは1万4095台(2015年5月時点)。つまり約86%が「タクシーこども110番」に対応していることになる。都内で見かけるタクシーほとんどが助けを求めていいものと思っていいはずだ。
加盟側は実際どのように取り組んでいるのだろう。国際自動車グループ(KMタクシー)は「協会の方針にしたがって、グループ全社に『タクシーこども110番』の内容に対応するよう指導している」と回答。ステッカーを貼っているのは一部の車種だけだが、ステッカーの有無に関わらず全タクシーが助けに応じるという。また大和自動車交通も「全タクシーで取り組んでいる」とのこと。助けを求められたら乗客の在不在に関わらず車内で保護し、そこから家庭や警察に連絡するなどしかるべき対応を取っていくそうだ。
両協会ともに、「タクシーこども110番」で子どもを保護したという報告はまだ1件も受けていないという。交番や「子ども110番の家」のない場所も走る4万台以上のタクシーが、子どもたちにとっての危機回避の場となるのは頼もしい。子どもたちに伝えるのはもちろん、都民全体の認知度が上がると犯罪の抑止にもつながるかもしれない。
(黒木貴啓)
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