連載

“自分アニメイト”をオープン? 驚愕のエピソード満載の『高河ゆん漫画家30周年記念本』司書メイドの同人誌レビューノート

秋葉原のカルチャーカフェ「シャッツキステ」の司書メイドことミソノが、同人誌のディープな魅力を紹介する連載企画。同人誌の用語を解説していく「ミソノ流ワンポイント用語解説」も必見。

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 一般にはあまり出会う機会のない同人誌。アニメやマンガのパロディや、コスプレの写真集などさまざまなジャンルがありますが、こちらの連載では、私設図書館「シャッツキステ」の司書メイド・ミソノが、オリジナル創作や評論ジャンルの同人誌を中心にご紹介します。作家の「好き」が形になった同人誌、その魅力を体感してください。


『高河ゆん漫画家30周年記念本 30 ――までだと思っていた道は、まだ先に続いている(といいな)』

紹介する同人誌

タイトル:『高河ゆん漫画家30周年記念本 30 ――までだと思っていた道は、まだ先に続いている(といいな)』

著者/出版社:高河ゆん/一迅社

形態:B5 107ページ 表紙カラー・本文モノクロ

 いつもは創作・評論系の同人誌をレビューしている本連載。今回は商業誌ですが、同人誌のすごい歴史が伺える本を紹介いたします。

高河ゆん先生の軌跡がここに……!

 『アーシアン』『LOVELESS』などの代表作を持つ漫画家でありながら、「機動戦士ガンダム00」のキャラクター原案、「UN-GO」のキャラクターデザイン、『悪魔のリドル』の原作……と活動を広げる高河ゆん先生の漫画家30周年記念本がついに発売されました!

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 数々の作品で、多数の読者を魅了してきた高河先生は、プロになる前、なってからも同人誌作りを続けていらっしゃいます。その活動は長年に渡っており、そうしますと高河先生と特別なお知り合いでなくとも、「すごいご活動をされているんだって!」と、そのエピソードを耳にすることも。これまでは、すごすぎていまひとつ信憑(しんぴょう)性が……などと思っていたのですが、伝説はまことだったのです。

もう時効だからって、こんなことまで語っていいんですか!?

 高河先生の同人誌活動のすごさは、高河先生、筆谷芳行さん(コミックマーケット共同代表)、三崎尚人さん(同人誌研究家)の三者対談で、存分に味わうことができます。「ちょっとね、イベントに出るのが面倒になった時期で」という理由で、自分で自分のサークルの活動発表会を開催! 20代初めに、自分のグッズを取り扱うお店を渋谷にオープン(高河先生いわく「自分アニメイト」)! 装丁をがんばったあの本は、お家が建てられるくらいの印刷代だった! などなど、あらゆる時代で築かれたびっくりエピソードの数々! バブル期だったから出来た盛り上がりだったのかしら? いやいや、高河先生の行動力がすごいのだわ、これ……と思い知るのです。

 何より私が驚いたのは、当時の人、イベント、ジャンルのことを実名を出しながら、ざっくばらんに語られていることです。1982年ごろは、創作同人誌界隈の人と二次創作の人は反目し合っており、そこでお隣のサークルさんとケンカ腰のイヤミバトルが勃発! など、そのときあったこと、思ったことを高河先生の目線からストレートに語られているんです。時代の折に、ときどき「なんて愚かなんだろうと思います」と若かりしころのご自身を殊勝に振り返りながらも、ご縁のあった方の話を交えていらっしゃることが、より一層「あのころの空気感」をしっかり伝えているように思います。この本が出版されて世に出ることで、歴史の一ページが刻まれた気すらしてきます。

隅々まで必見の一冊

 今回は、同人誌活動をメインにレビューしましたが、同書では、漫画を書きはじめる前から、デビューのころ、最近のお仕事、商業誌での活動にも、もちろんスポットが当たっています。車田正美先生に憧れて、毎週熱いファンレターを出していた結果、車田先生の仕事場に呼ばれたり……といった、これまた驚きのエピソードが満載。そして、CLAMPの大川七瀬先生との対談も必見です!

ミソノ流ワンポイント用語解説

台車

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 『高河ゆん漫画家30周年記念本 30 ――までだと思っていた道は、まだ先に続いている(といいな)』の中でイベントに台車を持ちこんだのは、「ゆんちゃんがほとんど最初の人なんじゃないかな」と言われています。それに対する高河先生のお返事は「本が多くて、そうでなければ対応できなくなってきた」と。おおお……! 私はいつも手で持てるくらいの搬入量なのですが、とはいえ、帰路は身軽になろうとして宅配便の列に並ぶと、意外と腕にじわじわダメージがくるのです。

 ただいま東京ビッグサイトでは、夏のコミックマーケットの真っ最中! 体調に気をつけて楽しい三日間になりますように!


ミソノ:いつでも優しい笑顔で、皆の心をいやしてくれる。普段は大きな図書館で司書をしており、司書ならではの本に関するお話は、日常では知る機会の少ない情報満載で、一聞の価値あり

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