“自分アニメイト”をオープン? 驚愕のエピソード満載の『高河ゆん漫画家30周年記念本』司書メイドの同人誌レビューノート

秋葉原のカルチャーカフェ「シャッツキステ」の司書メイドことミソノが、同人誌のディープな魅力を紹介する連載企画。同人誌の用語を解説していく「ミソノ流ワンポイント用語解説」も必見。

» 2015年08月14日 12時00分 公開
[eBook USER]

 一般にはあまり出会う機会のない同人誌。アニメやマンガのパロディや、コスプレの写真集などさまざまなジャンルがありますが、こちらの連載では、私設図書館「シャッツキステ」の司書メイド・ミソノが、オリジナル創作や評論ジャンルの同人誌を中心にご紹介します。作家の「好き」が形になった同人誌、その魅力を体感してください。

『高河ゆん漫画家30周年記念本 30 ――までだと思っていた道は、まだ先に続いている(といいな)』 『高河ゆん漫画家30周年記念本 30 ――までだと思っていた道は、まだ先に続いている(といいな)』

紹介する同人誌

タイトル:『高河ゆん漫画家30周年記念本 30 ――までだと思っていた道は、まだ先に続いている(といいな)』

著者/出版社:高河ゆん/一迅社

形態:B5 107ページ 表紙カラー・本文モノクロ


 いつもは創作・評論系の同人誌をレビューしている本連載。今回は商業誌ですが、同人誌のすごい歴史が伺える本を紹介いたします。

高河ゆん先生の軌跡がここに……!

 『アーシアン』『LOVELESS』などの代表作を持つ漫画家でありながら、「機動戦士ガンダム00」のキャラクター原案、「UN-GO」のキャラクターデザイン、『悪魔のリドル』の原作……と活動を広げる高河ゆん先生の漫画家30周年記念本がついに発売されました!

 数々の作品で、多数の読者を魅了してきた高河先生は、プロになる前、なってからも同人誌作りを続けていらっしゃいます。その活動は長年に渡っており、そうしますと高河先生と特別なお知り合いでなくとも、「すごいご活動をされているんだって!」と、そのエピソードを耳にすることも。これまでは、すごすぎていまひとつ信憑(しんぴょう)性が……などと思っていたのですが、伝説はまことだったのです。

もう時効だからって、こんなことまで語っていいんですか!?

 高河先生の同人誌活動のすごさは、高河先生、筆谷芳行さん(コミックマーケット共同代表)、三崎尚人さん(同人誌研究家)の三者対談で、存分に味わうことができます。「ちょっとね、イベントに出るのが面倒になった時期で」という理由で、自分で自分のサークルの活動発表会を開催! 20代初めに、自分のグッズを取り扱うお店を渋谷にオープン(高河先生いわく「自分アニメイト」)! 装丁をがんばったあの本は、お家が建てられるくらいの印刷代だった! などなど、あらゆる時代で築かれたびっくりエピソードの数々! バブル期だったから出来た盛り上がりだったのかしら? いやいや、高河先生の行動力がすごいのだわ、これ……と思い知るのです。

 何より私が驚いたのは、当時の人、イベント、ジャンルのことを実名を出しながら、ざっくばらんに語られていることです。1982年ごろは、創作同人誌界隈の人と二次創作の人は反目し合っており、そこでお隣のサークルさんとケンカ腰のイヤミバトルが勃発! など、そのときあったこと、思ったことを高河先生の目線からストレートに語られているんです。時代の折に、ときどき「なんて愚かなんだろうと思います」と若かりしころのご自身を殊勝に振り返りながらも、ご縁のあった方の話を交えていらっしゃることが、より一層「あのころの空気感」をしっかり伝えているように思います。この本が出版されて世に出ることで、歴史の一ページが刻まれた気すらしてきます。

隅々まで必見の一冊

 今回は、同人誌活動をメインにレビューしましたが、同書では、漫画を書きはじめる前から、デビューのころ、最近のお仕事、商業誌での活動にも、もちろんスポットが当たっています。車田正美先生に憧れて、毎週熱いファンレターを出していた結果、車田先生の仕事場に呼ばれたり……といった、これまた驚きのエピソードが満載。そして、CLAMPの大川七瀬先生との対談も必見です!

ミソノ流ワンポイント用語解説

台車

 『高河ゆん漫画家30周年記念本 30 ――までだと思っていた道は、まだ先に続いている(といいな)』の中でイベントに台車を持ちこんだのは、「ゆんちゃんがほとんど最初の人なんじゃないかな」と言われています。それに対する高河先生のお返事は「本が多くて、そうでなければ対応できなくなってきた」と。おおお……! 私はいつも手で持てるくらいの搬入量なのですが、とはいえ、帰路は身軽になろうとして宅配便の列に並ぶと、意外と腕にじわじわダメージがくるのです。

 ただいま東京ビッグサイトでは、夏のコミックマーケットの真っ最中! 体調に気をつけて楽しい三日間になりますように!

ミソノ:いつでも優しい笑顔で、皆の心をいやしてくれる。普段は大きな図書館で司書をしており、司書ならではの本に関するお話は、日常では知る機会の少ない情報満載で、一聞の価値あり

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2410/09/news133.jpg 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  2. /nl/articles/2410/10/news108.jpg 辻希美の高2長女、TikTokに「8時間頑張ったよ」 プロ並みのクッキー缶作りを初公開
  3. /nl/articles/2410/10/news026.jpg 相場4万円台が990円……!? なぜか洋服店で買えた「PCパーツ」が異常な破格で話題「ドッキリを疑うレベル」
  4. /nl/articles/2410/09/news196.jpg ホロライブ・音乃瀬奏、“耐久配信”中に号泣し視聴者も涙 「涙が止まらないよ」「もうどうにかなりそうだった」
  5. /nl/articles/2410/10/news078.jpg ミスドの“箱詰め”はドーナツ何個から? 運営元に聞いた「ミスドの箱でしか満たされないものがある」
  6. /nl/articles/2410/10/news136.jpg 「朝から眼福や……」 元鉄工所勤務の大食いタレントが“気になる”人続出 「くっそかわいいな」「お名前知りたいです!」
  7. /nl/articles/2410/10/news100.jpg 「生きて頑張りたい」 神田沙也加さんの元恋人・前山剛久、YouTubeやTikTokを開設し騒動謝罪&復帰希望→“厳しい意見”であふれる
  8. /nl/articles/2410/09/news190.jpg 「今すぐ広告を中止してほしい」 “ルッキズムに警鐘を鳴らす”駅広告が「逆効果」と物議 運営は取材に「回答しかねる」
  9. /nl/articles/2410/10/news101.jpg スシロー、ラーメンの“ピンクのチャーシュー”への懸念受け謝罪 「安心して食べられる」としつつも調理方法を変更
  10. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  2. 「驚愕の修理代」の金額明かす お見送り芸人しんいち、約2000万円の愛車が故障で「終わった」「お金がないです」
  3. プロ警鐘「エアコン、夏が終わったらコレやらないと……」が530万再生 水漏れや“内部のスライム化”を防ぐコツが目からウロコ
  4. “医療ミス”で両頬に大きな火傷 「鏡見るたび涙が止まらない」フォロワー24万人のモデルが悲痛の声 「周りの目が怖い」
  5. スーパーで買ったニンニクを土に植えると…… ぼこぼこ増える驚きの簡単栽培に「たくさん出来て最高」「植えてみよう」
  6. 「これは合格出せない」 リンガーハットがジョブチューン挑戦→“まさかの不合格メニュー2品”に騒然
  7. 「全く動けません」清水良太郎がフェスで救急搬送 事故動画で原因が明らかに「独りパイルドライバー」「これは本当に危ない!!」
  8. 「本当に56歳…?」 “王騎”大沢たかお、“腕と足の太さがほぼ同じ”の圧倒的肉体を披露 「かっこよすぎる」
  9. モグラに似てる“ヤベぇ虫”を、2カ月育ててみたら…… 感動の展開に「これはマジで凄い」「学術発表レベル」
  10. カインズの「撒くだけで防草できる砂」本当かどうか検証してみたら…… 驚きの結果に「魔法のような砂、買いに行きます!」「これさえあれば」
先月の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  3. 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
  4. 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
  5. 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
  6. 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
  7. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  8. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  9. 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
  10. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声