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客の露出行為で男根型モニュメントを自粛した奇祭「かなまら祭」 2016年度の改善に見る、神事存続への想い

男根型のお神輿が好奇の目を引く奇祭――存続のために神社が重ねている工夫。

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 男根を模したお神輿(みこし)が町を練り歩くことで知られる例大祭「かなまら祭」が、4月3日に金山神社(神奈川・川崎大師)で開催されました。見た目の奇抜さから奇祭として年々知名度を上げる一方、昨年は境内での露出行為といった祭りの本義を無視した行為が発生したため、今年は目玉の1つである男根型の記念撮影用モニュメントを自粛することに(関連記事)。

2016年、川崎大師の商店街を進む「かなまら祭」のお神輿
設置が自粛されたモニュメント

 伝統行事を存続していく上で参加者の協力が求められる今回、かなまら祭はどのような催しとなったのでしょうか。3年前にもお祭りに参加した身として(関連記事)、当時からの変化と合わせて開催の模様を見つめてきました。

 「かなまら祭」は毎年4月第1日曜日、性と鍛冶を祀る金山神社が開催。商売繁盛や子孫繁栄に御利益があるとされるお祭りです。3種類の男根型のご神体をお神輿で担いで川崎大師の商店街を周遊するのが見もので、ここ5年ほどは境内だけでも約2万人の参加者が訪れる人気の祭りとなっています。

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 一方で、注目されるのを狙った無許可のパフォーマンスや、悪ふざけ、迷惑行為も年々増えつつありました。お祭り中、境内は身動きを取るのも難しいほど混雑するのですが、突然のパフォーマンスに人が殺到すると事故が起きかねません。神社側は警察と協力し再三注意を払ってきましたが、なかなか改善が見られないため、2016年度は参加者が子宝祈願としてまたがることができる男根型の木製モニュメントを自粛すると決定しました。

自粛を発表する金山神社
2016年は境内の桜が満開に
出発前のお神輿

 満開の桜の下を男根のお神輿が行き交った今年のかなまら祭。予定通り木製モニュメントの姿はありませんでしたが、うわさに聞くような過度なパフォーマンスも特に見受けられませんでした。金山神社による公式TwitterやFacebookでの呼びかけ、モニュメント自粛という具体的措置に、参加者が応えたようです。

町内を進むピンク色の「エリザベス神輿」
黒光りの鉄製「かなまら舟神輿」
木彫の「かなまら大神輿」

 お祭りを初開催時から知る前宮司・中村紀美子さん(69)も「例年よりも静かな神事になって本当に良かった。パフォーマンスを注意する場内アナウンスもほとんど聞こえなかったんじゃないでしょうか」と安堵の表情。モニュメントの再開は検討するものの、当面は置かない方針であることを明かしました。

 「悩んでいた境内の混み具合も、今年は分散化に成功しました」とも。今年は初の試みとして、お神輿の折り返し地点を神社から離れた大師公園まで延長しました。さらに男根を模ったアメなど人気のお祭りグッズを境内だけでなく公園でも販売することで、参加客が散らばる形に。

2016年のお神輿ルート(左)と大師公園(右)。昨年は提灯店の交差点で折り返していた
人気グッズの男根型アメを公園でも販売

 おかげで参加客の数は約1~2万ほどと3年前と大して変わらないにもかかわらず、ぎゅうぎゅう詰めだった境内が大きく改善。天突く男根が街なかを進む奇景を拝みたい人も、安産を祈願したい人も、みんながより穏やかに参加できるようになっていました。

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 さらに大きな変更点が。地元の飲食店と盛んにコラボすることで、男根をモチーフにした食べ物が豊富になったのです。

創業明治17年のそば屋「松月庵」さんの「子宝そば」。うずらの玉子とちくわ・魚肉ソーセージの天ぷらが、あの形……!! ホタテの天ぷらも2個載っていて恵まれそうでした

 男根が登場する奇祭は4種類行ったことがあるのですが、男根型のアメといったような奇祭ならではの食べ物は、3月に愛知県小牧市で開かれる「田縣神社豊年祭」がずばぬけてバラエティ豊かでした。チョコバナナやフランクフルト、人形焼など、いつも縁日の屋台で見るような食べ物がほとんど男根型に変身しているのです。以前のかなまら祭はTシャツや鼻眼鏡などグッズはさまざまにありましたが、食べ物はアメくらいでした。

 しかし、昨年初めて周辺の飲食店や土産物屋など7店舗とコラボを実施。好評だったため今年はその数を21店舗と大きく増やしました。あるそば屋では男根型の天ぷらを載せた「子宝そば」を提供したり、あるカフェはソーセージを巻いたタコスでお神輿を再現したり。お祭りの目玉を“食”切り口でぐっと楽しめるようになった上に、地元の活性化も実現しました。

エリザベス神輿をイメージしたというすごいタコスも
まんじゅう屋「みかど」さんも「揚げまん」をピンク色の生地にして販売

 「奇抜さが目立ちはするものの、お祭りは全て正しい神事にのっとって行っています」と中村前宮司。実際、お神輿は出発前に宮司がさかきを振るって御霊入れを行い、担ぎ手たちも頭を下げて臨むなど、かなまら祭では日本の伝統的な神事を通して見ることができます。神事の観光として2~3人のツアーでやって来る外国人も。参加者から子宝に恵まれたという報告も絶えず、お祭りの御利益も感じていると言います。

出発前の例祭の様子(左)、宮司さんがお神輿に御霊を入れる様子(右)

 「海外の方にとっては日本の中でも参加しやすいお祭りで、神事を海外に知ってもらう良い足掛かりになっているのではないでしょうか。国内でも日本の伝統文化はどんどん無くなっています。これらを後世に残すためにも、お祭りを途絶えさせないことがとにかく大事だと思います」(中村前宮司)

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 男根型のお神輿は好奇の目を引く一方、警察や地域からの理解を得るのも簡単ではありません。安全は保ちつつ地域へ経済効果をもたらし、神事を未来に伝えていく――そんなお祭りを作ろうと、具体的な策を講じる姿が奇祭の裏側にはありました。

境内に帰ってきたお神輿

 最後に、3種類のお神輿の中で最も目立つ「エリザベス神輿」について。約30年前に日本最古の女装クラブ「エリザベス会館」が奉納したお神輿。ピンク色で巨大なご神体を会員のみなさんが「か~なまら~、でっかいま~ら~」と担ぐ様は、かなまら祭の花形でした。

2013年に会員がエリザベス神輿を担ぐ姿(左)、2016年の様子(右)

 今年は会員の姿は見えず、お神輿は台車に乗せて手押しで運ばれていました。神社によると、会員の高齢化などさまざまな理由で会館から辞退の申し出があったそう。奉納者である会員以外の人に担いで欲しくないという神社側の想いからこのような形になりました。性的少数者も楽しめるかなまら祭の象徴とも言える存在でもあっただけに、ネットでは不在を悲しむ声が。会員たちがつないできたバトンを受け継ぐ人が現れ、川崎大師を揺れ動くエリザベス神輿が見られる日がまた来るのを願うばかりです。

黒木貴啓

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