鳥嶋和彦、田尻智、シブサワ・コウ―― とんでもないインタビューを量産し続けるサイト「電ファミニコゲーマー」とは何者なのか(2/6 ページ)
電ファミニコゲーマー編集長であり、インタビュー連載「ゲームの企画書」を手がけるリインフォース・平信一さんにお話を聞きました。
「ゲームの企画書」とキュレーションの位置付け
―― 「電ファミ」は今のところ、非常に濃厚なインタビュー連載「ゲームの企画書」と、キュレーションサービスが2本柱ですよね。かなり不思議な組み合わせだと思うのですが、この方針は早くから決まっていたんですか?
平:
いえ、会社を立ち上げた当初は何も決めていなくて。とにかくハコだけ先に作って、さあ何をやろうかという順番でした。そのころSmartNewsとかも出てきて、メディア本体と記事とが分離されつつある印象を受けて。例えば4Gamerでも「トップページを見る」という行動習慣はどんどん減って、Twitterのタイムラインに流れてくる記事だけを見て帰る、という方向にシフトしているんです。昔は雑誌をパラパラめくるとか「媒体」そのものを読んでいたと思うんですが、最近そうではなくなっていて。
―― 媒体を知らずに記事を読んでいることはよくありますよね。
平:
電ファミがすごくいい例なんですよ。電ファミってサービスが立ち上がったばかりで、まだお客さんがついていない。それでも面白い記事があれば、それを読みに来てくれるわけです。
本来、媒体の役割って「情報の流通」と「情報を作る」の2つだと思うんですが、最近はその流通の部分が、TwitterなどのSNSやキュレーションサービスに置き換わっていますよね。だから、面白い記事やバズりやすいコンテンツを作れば、そういったものに乗っかって情報が拡散するというのが今の環境なわけです。
だから、電ファミのキュレーション部分は、「情報の流通」をこれまでとは違う形でやってみようよって取り組みだし、一方で、「情報を作る」って部分も僕らの価値であるはずだから、そっちもきちんとやっていこうという。
―― 後者が「ゲームの企画書」というわけですね。
平:
ただ、あれは大きな狙いがあったわけではなくて、せっかくこういう機会があるのだから、自分のできることを最大限にやってみようというところがスタートでした。僕がカドカワの関係者の協力で誰かを取材できるのも、この瞬間だからやれることの1つですよね。
田尻智さんに遠藤雅伸さんをぶつける座組みの妙
―― その「ゲームの企画書」ですが、毎回驚くような人達が登場されますよね。
平:
僕というよりは周りの人たちが説得してくれる状況ができて、なかなか1人では取れないようなインタビューもやれるようになった面があるかなと。田尻さんもそうですし、鳥嶋さんもそうだけど、どの会社にも(4Gamer時代から)僕の記事を読んでくれてる方がいらっしゃって。その人たちが「自分で読みたい」って気持ちも半分ぐらいあると思うんですね。そのあたりで後押ししていただけている実感はあります。
―― やはり1回目の記事で、長らくメディアに姿を見せてなかった田尻さんが出てこられたことが衝撃だったと思うんです。一種の奇跡がよく起こせたなという。
平:
あれも運みたいなものですね。以前4Gamerでゲームフリークのインタビューをしたとき、そのツテで開発者の人とも仲良くなっていて。あれは「ソリティ馬」のインタビューでしたが、ゲームフリークそのものの話になったんです。
―― 「田尻さんと杉森建さんが『ゼビウス』の話を遠藤雅伸さんに聞く」という座組みが絶妙でしたね。
平:
遠藤さんに「ゼビウス」のことを聞くだけだと普通だけど、「ゼビウス」の話をお二人が聞くのは熱いなと。「ポケモン」だといろいろ制約があるでしょうけど、「ゼビウス」だったら田尻さんもしゃべりたいんじゃないかなって。それで内々に聞いてみたら、本当に興味がありそうだったので。
―― かつて「ゼビウス」の攻略同人誌を作った田尻さんたちが遠藤さんと再会することに一種のドラマがありますよね。
平:
基本的に取材って、受ける側にあまりメリットがないと思うんです。ただ面倒くさいだけだし。であれば逆に、どうすれば出てくれる人たちが喜んでくれるだろうと。そういうことはよく考えているかもしれません。
―― コーエーテクモゲームスの襟川夫妻がそろって出られたのも驚きでした。
平:
襟川恵子さんはゲーム業界ではすごい有名人だけど、その面白さをちゃんと表に出したくて。むちゃくちゃ面白い人ですよね。
―― ご夫妻に承諾をいただくこと自体が難しいですよね。
平:
僕1人では難しかっただろうけど、カドカワの佐藤辰男さん(元「コンプティーク」編集長)のおかげですね。佐藤さんが出るってことであれば、さすがの襟川さんも断りづらいだろうと。
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