ボーカロイドの未来はどうなる? 「つま恋」最後のボーカロイド大会リポート(1/2 ページ)
今年いっぱいで営業終了となる「つま恋」リゾートでボカロファンイベント「ボーカロイド大会」が行われた。「ボカロ未来予想」が語られるなどの企画が。
10月29~30日の両日、静岡県掛川市のヤマハ「つま恋」リゾートでボーカロイドファンイベント「第2回世界ボーカロイド大会」(VOCACON2016、通称ボカコン)が開催された。
つま恋は今年いっぱいで営業終了となるため(関連記事)、この場所でのボカコンの開催はこれが最後となる。今回は宿泊(2日通し)参加者が175人、両日の日帰り参加者を含めるとのべ299人が参加した。
未来のボーカロイドは?
2日間でトークセッションやライブ、展示などさまざまな企画が行われた。1日目の目玉企画「ボカロ未来予想」では、産業技術総合研究所(産総研)の後藤真孝首席研究員、同じく産総研の梶田秀司主任研究員、SF作家の野尻抱介氏を招いて、「近い未来、ちょっと遠い未来、そして、めっちゃ遠い未来」のボーカロイド文化について三氏の予想が披露された。
後藤氏は歌声合成技術「ぼかりす」など音楽情報処理に関する研究を長く続けており、梶田氏が開発したロボット「HRP-4C(未夢)」に、人の歌い方をまねる顔表情合成システム「VocaWatcher」を使って歌わせる研究について紹介した。
奇しくも産総研の両氏は、ボーカロイドの未来を描いた野尻氏のSF小説「南極点のピアピア動画」に同名の人物のモデルとして描かれており、これは「研究人生で最も想定できなかった出来事」と後藤氏は語っていた。
10年後の近未来のボーカロイドは今の技術の延長線上にあり、かつてのシンセサイザーのようにボーカロイドが楽曲の制作に使われることが当たり前の状態になると後藤氏。その先の未来でコンピュータが歌詞の意味を理解し感情を込めて歌いだしたとき、私たちはその歌に感動することがあるのだろうか? もし、歌っているのが人間ではなくコンピュータだと分かったときに、感動できなくなるのか?――後藤氏は、チューリングテスト(人間とコンピュータを識別できるかというテスト)的な研究者としての問いかけた。
SF作家である野尻氏は、「シロアリの巣(排熱のため空気循環する構造)を見つけると近くへ行って歌う歌唱装置(ボカロロボット)」を語った。歌唱装置は巣の形から自動で作曲。歌がよく響く巣は空気循環の効率がいいという仮定のもと、よく響く巣の形が自然選択され、新しい巣に合わせて歌も変わる――アリが知性を持った映画「フェイズIV 戦慄!昆虫パニック」を彷彿(ほうふつ)とさせる未来だった。
梶田氏は、人類が滅びているかもしれない10億年後の未来では、初音ミクの化石が発見され、掘り出された初音ミクが「ハジメテノオト」を歌い出すという、映画「AI」的な未来を提示した。その歌を聞くのは果たして人類の末裔なのか?それとも太陽系を訪れた宇宙人なのだろうか?
帰ってきた「ゆかり温泉」やVR体験、企画いろいろ
つま恋が夕闇に包まれると、ゴスペルクワイア(合唱)がチャペルで行われた。チャペルということで、センターには天使のミクさんが降臨、このような場所での合唱はなかなか体験できるものではなく、日帰り参加者も交えて64席のチャペルには立ち見も含めて100人近い観客が詰めかけ、歌声に魅了された。
夕食後は宿泊したホテルで、前回話題となった「ゆかり温泉」がバージョンアップして帰ってきた。浴室に入浴中のシルエットを写したり、脱衣所に匂いつきのタオルを置いたりなど、リアル空間にさまざまな演出を施すことで、バーチャルアイドルとの温泉旅行を体験できる仕掛けだ(関連記事)。宿泊している野尻抱介氏こと尻Pも体験後は笑顔。翌日ミニライブを行うデッドボールPは「衝撃が強すぎた」とのこと。
ホテルの1階談話スペースでは「ボカロ未来予想延長戦」がデッドボールP、オトマニア、以前に初音ミクの人形浄瑠璃(関連記事)を企画した福岡俊弘氏を加えて熱い議論が交わされた。ホテルは傾斜地に階段状に建てられており、ここに宿泊者のうち約80人が集結したために熱気がこもり、10度前後の外気温に対して室温が30度近くまで上がるという熱気に包まれた延長戦となった。
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