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「『DeNAのDNA』を持ち合わせていない者たちによって始められた事業」 DeNA、キュレーションサイトについての第三者委員会調査報告書を公開

DeNAは3月13日に都内で会見を開く予定。

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 3月13日、DeNAはキュレーション問題について「第三者委員会調査報告書」を公表した。第三者委員会は本問題について「DeNAがこのような問題点を適切に認識反省して、事業参入後においても適切にチェックやふり返りを行うことを可能とする体制とプロセスの構築を具体的に実施していくことを求める」と結論づけている。

 276ページにも及ぶ調査報告書を公開したのは、名取勝也弁護士など弁護士が中心となった第三者委員会。DeNAは自社が運営していた複数のキュレーションメディアで、著作権法や薬機法などの法令に違反する可能性が指摘され、12月7日までに運営していた10サイト全ての記事を非公開としていた

権利侵害記事は記事全体の1.9~5.6% 画像は74万件に問題

 第三者委員会は記事の著作権法上の問題を調査するために、DeNAが公開していた37万6671記事(2016年11月10日までに公開された記事)の中から、統計的観点から合理性の認められる数の記事をサンプルとして抽出。複製や翻案などを行った可能性のあるネット上の他記事を特定した上で両者を見比べたという。

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 その結果、複製権・翻案権侵害の可能性がある記事の出現率の推計値は1.9~5.6%の範囲内で、可能性がないとはいえない記事の推計値は、0.5~3.0%の範囲内であったとのこと。ただし、ほかの記事との間で記事作成の先後関係が不明なものも存在することから、これら全てについて第三者の権利を侵害していると断定することはできないともしている。

 画像に関しては、2016年11月10日時点で公開されていた記事に挿入されていた画像、合計472万4571個を調査。個別に利用承諾を得ていた可能性があるもの含めて、正当な権限なく画像の複製を行ったもの、つまり複製権侵害の可能性がある画像は、74万7643個とされている。これらは公衆送信権侵害または表示権侵害となっている可能性も示唆された。

DeNAがキュレーション事業に参入した経緯

 2011年6月25日にDeNAの代表取締役社長兼ソーシャルメディア事業本部長に就任した守安功氏は、同社の柱としていたモバイルゲーム事業に続く収益の柱となる事業を模索していた。

 その際に中長期的な成長エンジンとすべく、ヘルスケア事業やその他の複数の新規事業に参入したが、これらが安定的な収益をもたらすようになるまでには相当の期間を要すと見込まれた。そこで、その間に比較的短期間で大きな収益を見込める事業として、守安氏が着目したのが、iemoを運営していた「iemo社」と、MERYを運営していた「ペロリ社」だったという。

 DeNAが両社を買収するにあたり、弁護士を起用して法務デューディリジェンス(買収に当たって行う事業に関する法務リスクの調査)を行ったところ、双方の記事の文章について著作権侵害の可能性があることが発覚。また記事に使用している画像については「著作権侵害の事実がある」と指摘されていたことも明らかにした。

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 これを受けてDeNAは「著作権の侵害状態を解消する措置を講じることを買収の条件」として、記事内の画像については、従来採用していたそサーバに画像データを保存して表示する方法(サーバ保存)から、ほかのウェブサイトの画像をリンクによって直接表示させる方法(直リンク方式)に変更させた。しかし記事の文章については、具体的な著作権侵害の事実が確認出来なかったとして、特に指示しなかったという。

 DeNAからの要望を受け、ペロリ社はそれまでに作成した記事の画像表示方法を直リンク方式に改めたものの、新規作成記事については、引き続きサーバ保存方式を取っていた。

WELQの医療監修

 今回の騒動で最も問題視されたのが医療系メディア「WELQ」の記事だ。肩こりの原因が霊障にあるかのようににまとめた記事などが話題になっていた。

 第三者委員会によるとWELQを編集したチームはサービス開始にあたり約100本の試作記事を用意していた。しかし、法務部から「記事の内容によってはユーザーの健康被害を招来するリスクがあるため、医療記事に関する内容を含む記事については医師等の専門家の監修を付けるべき」との指摘を受けていた。

 そこでWELQチームは監修をつけることを検討したが、記事作成に対する手間やコストが想像以上に増えることが判明。結果的に記事の大量生産というモデルにそぐわないことから監修を付けることを見送ったのだという。

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 その結果、この100本の試作記事は掲載を見送りにし、監修が不可欠とはいえないライトヘルスケア系の記事を中心として運用を始めたと説明している。

 例外的に妊娠や出産、子育てを中心とした記事を掲載していたcutaに関しては、上位記事100本について医療監修を依頼したことがあるというが、cutaの記事を除いてDeNAが運営する10サイトにおいて医療監修は付されていなかったという。

コピペ推奨マニュアル

 DeNAでは、サイトごとに記事の書き方などについて、マニュアルが作成されていた。この中にはコピペを推奨しているとも捉えられかねない文言が使用されているものもあった。第三者委員会はこの事実について認めつつ、ボードメンバー(非公式な会議体においてキュレーション事業の運営方針を話し合っていたメンバー)の主導のもと、意図的にコピペを推奨したとは認められないとした。

クラウドソーシングサービスから採用されたライター

 DeNAでは各メディアについて、クラウドソーシングサイトから採用したライターに記事の執筆を依頼している場合があった。これらの記事については、編集担当者や外部編集ディレクターが記事の内容を確認し、コピペチェック等を行っていた。しかしこの確認は記事を読んだ際に違和感を覚えた部分だけ検索エンジンで検索したり、コピペチェックツールを使用するなどにとどめており、全ての記事の全文がチェックの対象とはなっていなかったという。またコピペか否かについては担当編集者や外部編集ディレクターの裁量に委ねられていたほか、サイトによってはコピペの有無についての確認がほとんど行われていないところもあったという。

記事単価の安さ

 クラウドソーシングサイトで採用したライターに支払ってきた報酬が不当に安いのではとする指摘について第三者委員会は、クラウドソーシング会社において募集されている記事執筆業務の金額的条件には幅があることや、ライター募集の際にDeNA側は支払う報酬を事前に明示していたことから他社の記事執筆業務の募集に比べて不当に安かったとは考えられないと結論づけた。一方で、安価な記事作成依頼については、「一部の者によるコピペ等を含んだ不適切な記事の執筆を生む背景になったことは否定できないと考える」とした。

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記事に対するクレーム

 今回の調査で各サイトがユーザーからさまざまなクレームを受けていたことも明らかになった。文章の無断使用指摘が112件、画像の無断利用の指摘が874件、医療に関する指摘は91件あったという。これらについては、修正及び記事の非公開措置を取るなど、速やかな対応を行ってきたと説明している。

法令違反などを含む記事の作成・公開

 前述の通り、DeNAが運営する10サイトでは法令違反の可能性がある内容の記事が複数発見されている。第三者委員会がこの中からWELQに掲載されていた記事、19本について調査したところ、薬機法に違反する可能性がある記事が8記事、医療法に違反する可能性がある記事が1記事、健康増進法に違反する可能性がある記事が1本発見された。

 また、センシティブなテーマを扱う記事にアフィリエイト広告を掲載するに際し、不適切な点があった、医療に関する記事にユーザーに対する配慮を欠いた内容を記載していた、医療に関する記事に医師の間でも見解に相違がある内容を容易に記載していた、など倫理的に問題のある記事が掲載されていたことも認めた。

 これらについては、マニュアルの内容が不適切であったこと、画像の挿入に関するルールやシステム構成が不十分であったこと、チェック体制の不備、人的リソースの不足、外部ディレクターに対する監視・指導体制の構築・運用が不十分であったこと、コピペ等のチェック体制が極めて不十分であったこと、記事の内容の正確性を担保するための方策が講じられていなかったこと、ペロリ社において、DeNAによる買収直後から、画像のサーバ保存が続けられていたことを要因にあげている。

キュレーション事業とは何か、に対する明確な答えを持たずに事業参入したDeNA

 第三者委員会はDeNAのキュレーション事業について、「キュレーション事業が一体どのようなものであるのか、キュレーション事業をどのようなものにしようと考えていたのか、キュレーション事業によって何をしたかったのかが極めて曖昧で不明確なまま、もっぱらその収益性にのみ着目し、キュレーション事業に参入してしまった」と分析。こうした曖昧さが原因となってリスク回避が行えなかったのではないかとしている。

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「DeNAのDNA」を持ち合わせていない者たちによって始められた事業

 第三者委員会はDeNAを「比較的コンプライアンス意識の高い企業であるとの印象を持った」と評価している。しかしキュレーション事業については外部のベンチャー企業を買収して開始した事業であることなどもあり、必ずしもコンプライアンス意識が高かったとは言い難いとし、「DeNAのDNA」を持ち合わせていない者たちによって始められた事業であると独自の表現を用いて評価した。

再発防止策

 これらの問題背景から第三者委員会は、再発防止策としてDeNAが掲げる「永久ベンチャー」というスローガンを都合よく唱えずに、どういう意味なのかを再度明確に正しく定義付け、全員の共通認識とすることを根底に置くべきと厳しく指摘。また事業の拡大のみに気を取られて、それに伴うリスクの拡大・拡散を適切に発見・把握し、かつ対応するための体制とプロセスの構築および運用を怠ったことが大きな問題点の1つだとした。

 また管理職については独裁や独走はリーダーの資格がない者のすることである、として監視やチェックの声に真摯に耳を傾けるべきとしている。

再開にむけて

 第三者委員会はDeNAが今後仮にキュレーション事業を再開するとした場合、少なくとも十分に検討を行った上で適切に遂行することを望むと5つの項目をあげた。

  • (1)キュレーション事業について、適切な定義付けを行って、読者や社会にどのような価値を提供するのかを明確にすべきである。
  • (2)情報発信における責任を誰が持つのかということを正しく理解すべきである。
  • (3)キュレーション事業の本質的な前提といえる、オリジナルコンテンツの作成者に対し、その権利を侵害したり、不信感や不快感を与えることを防止又は排除することはもとより、オリジナルコンテンツの作成者がメリットを享受できるような互恵の仕組みを確立させるべきである。
  • (4)仮に外部者に執筆を委託するのであれば、その者に求めることと求めるべきではないことを適切かつ明確に定めるべきである。これらのことを真摯に行うことによって、読者に不正確又は不適切な情報が提供されないことを担保すべきである。
  • (5)DeNA がキュレーション事業により自らの利益の獲得のみに走るのではなく、社会全体に意義ある価値をも提供しているといった認識と評価を各方面にもってもらえるよう、絶えず謙虚に事業遂行していく気持ちを全員が持ち続けることが必要であると考えるものである。

3月13日に公開された第三者委員会調査報告書の全文(DeNA公式サイトより)

 DeNAは第三者委員会からの調査報告を受け、3月13日夕方から都内で会見を行う予定。会見はYouTubeでも中継される。

(Kikka)

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