やしろあずきの調査―― 明らかに燃えそうなことを何でSNSに投稿しちゃうの? 経験者に聞くネット炎上の理由と怖さ(後編)(2/3 ページ)
炎上から学んだこと。そして、若者に伝えたいこと。
炎上後、炎上する人たちを見てどう思った?
「実際に炎上して、家も引っ越したりと……いろいろ大変な思いをしたと思うんだけど、その後、自分とは別にネットで炎上する人を見たりした?」
「見ました。ちょうど炎上ブーム……という言い方はおかしいですが、ネットを見れば誰かが燃えておもちゃにされてるような状態だったので……今もそうかもしれないですが」
「なるほど。他人の炎上って、やっぱり自分が炎上する前と後とじゃ見方というか、感じ方って変わりました?」
「完全に変わりましたね。炎上する側の恐怖ってやっぱり1回してみないと分からないものだと思います。炎上する前は他人の炎上を見て『バカだなー』って笑ってたんですが、冗談でも笑えなくなりましたから。なんというか胸が痛くなって見ていられなくなります」
「炎上した人に同情しちゃう?」
「同情、ではないです。もちろん悪いのは炎上するようなツイートをしてしまったその人本人だと思うので。ただ自分が炎上してたころとシンクロさせちゃうというか、今ごろ同じ気持ちなんだろうな、こんなことになるとは思ってなかったんだろうな……って、その人を批判しているリプライが全て自分に対して来ているように錯覚してしまって、なんだかこっちまでへこんできちゃいますね」
「なるほど、じゃあ周りと一緒になってたたいたりとかは全くしないと」
「無理ですね。たたく気も起きませんし、自分がたたける立場にいるとはとても思えません……」
炎上をたたく人について
「『たたき』に関しての話題になるのですが、炎上っていうのはそのツイートをたたく人がいて発生する、というか、たたく人が一定以上に増えると炎上になるって感じじゃないですか。たたく人に関しては炎上してしまった身としてはどう思います?」
「それに関してはいろいろ思うところはあるのですが……まず、たたかれるのはしょうがないと思います。僕だって自分が炎上してなければたたく側に回ってたと思いますから……。たたいてる側にとっては正直、お祭りみたいなものですよね。自分は全く無関係ですし名前を出す必要もないので」
「匿名だからっていうのがたたきを助長しているというのはあるよね」
「悪いのは確実に炎上する側だと思います。火のないところに煙は立ちませんから……。だけど、それを前提に聞いてほしいんですが、やはり『たたきすぎなんじゃないか?』と思うことはあります。炎上した人間がこんなことをいうとまたたたかれそうですが……」
「いや、それは大丈夫ですよ。正直見ていてやりすぎだろって思うことも最近すごく多いし」
「はい……何度も言いますが悪いのはこちらです。だけどそれに対して悪いということを自覚させて反省させるというだけでなく、住所を特定したり、直接家に対して嫌がらせをしてきたり、家族や友達まで巻き込まれたり……なんというか、必要以上にたたきすぎてないかって思ってしまうんです」
「正直、たたいてる側も炎上してもおかしくないことをしてるっていうのもあるよね。家にいたずらするとか普通に炎上案件だからね……」
「はい、ただ炎上している時だと全体の空気が炎上者=悪者になるので、たたく行為に関しては善悪問われずに、『いいぞもっとやれ!』っていう感じになってしまっていると思うんです」
「確かに」
「特に今は小学生だって炎上したりするじゃないですか。悪いことをしてるのはその小学生だけど、大人が寄ってたかって袋だたきにして……そういうのはちょっと違うと思うんですよね。もちろん悪いことはしてるんだけど、もうちょっと諭し方というか……」
「小学生の時にそんな目にあったらネットにトラウマ持っちゃいそうだよね」
「昔の子はそういう、まあそこまで大事じゃなくてもちょっと悪いことをしたら、周りの大人や親にめちゃくちゃしかられて学ぶじゃないですか。でも今の子って、下手するとそれと同じ程度の悪いことでも全国の大人たちからボッコボコにされるんですよ。本来それは親の役目だろうって」
「そうだね……。たたく側も少しだけ炎上してる側の気持ちにもなって、ただやぶから棒にたたきまくるってだけじゃなく、ちゃんとその人のタメになる説教ができるようになると良いよね。匿名性が強い日本のネット社会じゃ難しいことだとは思うけど……」
「最後にまた言わせてもらいますが、悪いのは僕ら炎上する側であることには変わりないので。炎上したやつが炎上者をかばいやがって、とかたたくのはやめてくださいね!」
「めちゃくちゃ過敏になってる……まあそうなるよね」
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