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ディズニー作品をアート的&技術的に解説! 「ディズニー・アート展」を一足先に見てきたミッキーマウスからモアナまで

ミッキーマウスの幻のデビュー作から「モアナと伝説の海」まで。

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 東京・お台場の日本未来科学館で、2017年4月8日から「ディズニー・アート展<いのちを吹き込む魔法>」東京展が開催されます。日本においては東京を皮切りに大阪、新潟、仙台を巡回する、ディズニーをテーマにした貴重なアートを直接見られるイベントです。

 結論からいうと「必見」。最新作「モアナと伝説の海」や「ズートピア」に関する展示もいっぱい。ディズニーに触れたことのある方なら、老若男女問わずに楽しめるはず。今回の展示を楽しむための知識として、90年にわたるディズニーアニメ史にも触れつつ、それらを紹介しましょう。

1928年「蒸気船ウィリー」でミッキーは生まれた

 ディズニー史のなかでも大きなマイルストーンは、やはり「ミッキーマウス」の登場です。ミッキーマウスは声と絵がシンクロするトーキー映画「蒸気船ウィリー」でデビューしました。その声を担当したのは、あのウォルト・ディズニーです。

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すべてはウォルト・ディズニーから始まりました

貴重な蒸気船ウィリーのアートの前に立つのは、本展覧会の企画制作を行うウォルト・ディズニー・アニメーション・リサーチ・ライブラリーのメアリー・ウォルシュ氏、そして日本科学未来館のキュレーター、内田まほろ氏

 実は今回、その蒸気船ウィリーよりも前のミッキー出演作の原画が日本初公開されます。それは「プレーン・クレイジー」。描かれたのは1928年、つまり昭和3年。90年近く前に、ウォルトの右腕ともいうべきアニメーター、アブ・アイワークスによって描かれました。


これが「プレーン・クレイジー」。ミッキーマウスの幻のデビュー作です

長編アニメーションを支える科学技術と人

 初の“長編”アニメ作品として、ウォルト・ディズニーは「白雪姫」を制作します。それまでは子ども向けとして認識されていたアニメ作品を、大人が見ても「泣ける」という文化にした、記念碑的作品です。


白雪姫の貴重なアートがたくさん

 その後も「ピノキオ」「ファンタジア」を制作。ところがこれらの作品は、当時はヒットとまではいかず、歴史に埋もれた作品になってしまいました。特にファンタジアはアート性が大変高かったものの、一般向けにはかなり難しい作品として映りました。ウォルト・ディズニーを支えた当時のアニメーターたちは「ナイン・オールドメン」と呼ばれ、いまも伝説的な存在。そして後年、これらの作品は再評価されることになります。


ナイン・オールドメンと呼ばれる伝説的なアニメーターの1人、フランク・トーマスによる「ピノキオ」

 実はここでは、2Dアニメーションに奥行きを与える「マルチプレーンカメラ」や、オーケストラ演奏を忠実に再現する「ファンタサウンド」、そして無数のダルメシアンを描くための「ゼロックス」など、注目すべき技術も考案されています。このあたりがしっかり紹介されているのは、さすが「日本科学未来館」といえるでしょう。


これは2Dアニメーションに奥行きを付ける「マルチプレーンカメラ」の原理を紹介したもの。ウォルト・ディズニーはそのときの最新技術を作り続けてきました

ウォルト・ディズニーの「科学」が「魔法」になる様子をていねいに解説しています

 この時代には、2人ほど重要なアーティストがいます。1人目は「メアリー・ブレア」。ふしぎの国のアリスでカラー/スタイリストとしてコンセプトアートを担当しました。その絵柄を見ると一目で分かるように、彼女は後に、ディズニーの代表的なアトラクション「イッツ・ア・スモールワールド」のデザインも手掛けます。

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メアリー・ブレアの色使いを見ると、どこか懐かしい感じがします

 そしてもう1人は、アイヴァンド・アール。「眠れる森の美女」で背景を担当しています。その緻密さ、独特な色使いはまさに“アート”。その功績を認められ、2015年にはディズニー社による「ディズニー・レジェンド」の称号を与えられました。


アイヴァンド・アールが描いた「眠れる森の美女」の背景

「リトル・マーメイド」「美女と野獣」が作った第2黄金期

 1989年、再びディズニー・アニメーションが脚光を浴びます。ディズニー・ルネッサンス期で多用されたミュージカルが戻ってきました。音楽家、ハワード・アシュマンとアラン・メンケンが作り出した作品たちです。「美女と野獣」はアカデミー作品賞に、アニメーション作品として初めてノミネートされるほどの評価を受けました。この時期の作品は、皆さんもよくご存じなのではないかと思います。


音楽家、ハワード・アシュマンとアラン・メンケン。「美女と野獣」はこの2人が作り上げたといってもいいでしょう

 この時期の特徴は、「コンピューターグラフィックス」を効果的に取り入れたこと。今でこそ当たり前のCGですが、美女と野獣での舞踏会シーンをはじめて見たときには本当にびっくりしました。いま見ても色あせない名シーンです。なお、いわゆる「セル画」を使った最後の作品は「リトル・マーメイド」。それ以降はコンピューター彩色が利用されています。


「マケット」と呼ばれる貴重な模型も

こちらは「ライオン・キング」の貴重なアート群

プリンセスが変わる――いま、ディズニーは再び黄金期へ

 実はここで、ディズニーが暗黒期を迎えます。「チキン・リトル」や「ダイナソー」などの作品が作られ続けてきましたが、CG制作の難しさを身をもって知った時期でした。それががらりと変わるのが、ピクサーを買収しジョン・ラセター監督が本格的にディズニーアニメーションスタジオに入ってきた、「塔の上のラプンツェル」以降の作品です。そして爆発的なヒットを迎えた「アナと雪の女王」、先ごろ公開がスタートした「モアナと伝説の海」につながっているわけです。


ディズニーに対する印象が大きく変わった「塔の上のラプンツェル」。ディズニーの3DCG史において大きな存在でした

そして「アナと雪の女王」

 ここで注目したいのは、やはり「プリンセス像」。シンデレラで作られた「夢をかなえる」プリンセスが、「リトル・マーメイド」や「美女と野獣」において「自ら夢を追い、行動する」というスタイルに変化。そして「アナと雪の女王」では「プリンス不在」となり、「モアナと伝説の海」では劇中、自らの言葉としてはっきりと「私はプリンセスではない!」と述べるほど。

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 ディズニーではいま、旧来プリンセス像を変化させ、プリンセスを「高い目標と努力で夢を勝ち取った象徴」にしつつあります。このプリンセス像の変化と、アートの変化を見比べてみることも、本展覧会の醍醐味(だいごみ)です。


かなり初期のアナとエルサ。描いたのはラプンツェルや野獣を描いたグレン・キーンの娘、クレア・キーンです

最新作「モアナと伝説の海」からは、映画全体の「色」を統一する色台本を展示しています

開会式にはモアナ役、屋比久知奈さんも登場


「How Far I'll Go」を熱唱する屋比久知奈さん

屋比久さんは開会式でテープカットにも登場しました

左から日本科学未来館館長 毛利衛氏、「モアナと伝説の海」モアナ役 屋比久知奈さん、メアリー・ウォルシュ氏

 開会式ではモアナ役に抜てきされ、その歌声が既に話題の屋比久知奈さんも登場。劇中で披露される「How Far I'll Go」を生歌で披露しました。

 屋比久さんは展示を見て「映画『モアナと伝説の海』とは異なる、コンセプトアートが多数展示されていて、この映画がさまざまな過程を経て作られたことを感じました。そして監督がリサーチ過程で描いたスケッチブックの実物など、貴重な展示に感動しました」とコメントしました。実は本展の音声ガイドは、あの山寺宏一さんとともに屋比久さんがナレーションを担当しています。大変詳細な解説が聞けるので、ぜひどうぞ。

 ディズニー・アート展は2017年4月8日から9月24日まで、東京・お台場の日本科学未来館にて開催されます。そしてその後、2017年10月14日から大阪市立美術館で、2018年2月17日から新潟県立近代美術館で、2018年6月9日から宮城県美術館での巡回開催が決定しています。大変貴重なアート群、おそらく、ディズニーの印象が変わるほどのインパクトがあるはず。お近くの方はぜひ体験を。


もちろん、グッズもたくさん登場しています!
(C)Disney Enterprises, Inc.


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