新生活になじめない人へ ストレスを減らすための4つのポイント
環境の変化に戸惑うことも多い新生活。ストレス軽減のポイントを臨床心理士が解説します。
春は進級や進学、就職や転勤など、大きく環境が変化して新しい生活がスタートする時期です。そんな新生活が始まって約1カ月がたちましたが、今までとは違う人間関係などの変化に、いまだになじめていないという人も多いのではないでしょうか。
新しい環境や生活というのは希望や期待もある反面、かなり大きなストレスがかかります。それで落ち込んでしまったり、憂鬱になったり疲れてしまう人も出てきます。
では、こうした新生活にまつわるメンタルや身体の不調は何が原因で起きていて、またどうやってつきあっていけばいいのでしょう。今回はそんな新生活の過ごし方の話です。
臨床心理士みらー プロフィール
大学院修了後、専門学校の非常勤講師および、高校のスクールカウンセラーを勤め、同時期に教育機関での心理相談員および不登校対策事業の心理相談担当を歴任。
現在は悩み相談掲示板サイト「ココオル」で相談員を務めるほか、活動領域を青年期支援に移し、地域若者サポートステーションにて若者支援も行い、年間のカウンセリングは1000件以上行い、相談支援に定評がある。
新生活でメンタルの不調が起きる理由
新生活はストレスがかかりやすく、心身に不調が出やすいということは皆さん経験的に知っていると思います。実際のところ、こうした不調はどうして起きるのでしょうか。
人間には「ホメオスタシス」という自分を一定の状態に保とうとする機能が備わっており、あまり変化を好まない性質があります。しかし、新生活では自分を取り巻く環境が大きく変わるため、その変化に慣れるまではちょっとしたことが心身の負担になり、ストレスがかかります。
結果、自律神経に大きな負担がかかり、不調を引き起こしてしまいます。これは悪い変化のときばかりに起こるわけではなく、周りの人にとってはうらやましく見えるような良い環境変化であったとしても、本人にとって負担となってしまう場合があるのです。
メンタルの不調を抑え、新生活をうまくやっていくには
環境変化が起きた場合、ある程度時間をかければほとんどの場合適応していくことが可能です。しかし、それまでの間は心身に負担がかかりますし、適応する前に不調でうまくいかなくなってしまうこともありえます。
今回は、環境変化によって起きるストレスや不調を軽減してなんとかやっていく方法をいくつか紹介します。
(1)予言の自己成就――なんとかなるという気持ちを持つ
新生活というのは住む場所や人間関係等、未知の世界が広がっているものです。こういうときは誰でも、慣れないことをしていくわけですから不安になります。
通常であれば、人間は新しい環境に適応できるので、それを待てばよいのですが、それまでに「どうにもならない」と思い込んでしまうと、本当にどうにもならなくなってしまうことがあるのです。
この現象は、心理学では「予言の自己成就」と呼ばれています。これは、こうなるという思い込み(予言)を持ってしまうと、人はその思い込みに沿った行動を取ってしまい、実際にその思い込みが現実のものとして成就してしまうということです。
しかし、この予言の自己成就はプラスの思い込みにも作用しますから、つらくなったときはまず、「今はつらいけれど、誰でも最初はつらくなるし当たり前。そのうちなんとなかる」と考えを変えるようにしてみましょう。
(2)変化しない部分を作る
新生活でかかるストレスは、変化に対して適応しようとする負荷によって起こります。ですから、変えなくていい部分に対してはなるべく変化をしないようにすると、負担を軽減できます。
例えば通勤、通学中はいつも聞いていたお気に入りの音楽を聴いたりゲームをしたりする、家族や友人と接して連絡を取る時間をしっかり確保する、いつも見ていたテレビやいつも食べていた料理、部屋の小物等々前から使っていたものを用意するなど、生活の変化を少なくするとストレスを軽減できます。
また、生活リズムが崩れると心身の不調につながりますから、なるべく生活リズムを変えないように意識することも効果的です。
(3)自分なりのリラックスするための手段を身につける
新生活で起きる不調はストレスによるものです。ですのでストレスを解消してしまえば、ある程度の不調は軽減できます。
ストレスを解消するにはいろいろな方法がありますが、例えば休日には思い切り羽根を伸ばすなどのごく当たり前の方法から、趣味に打ち込んだり、散歩などの軽い運動をしたり、十分な休息を取る、好きな音楽を聴く、ゆっくりお風呂に入る等の自分の心身をリラックスすることに時間を使うと、ストレスが軽減し、新生活を楽に過ごしていくことができます。
(4)新生活に楽しみを見つける
人間は、ストレスとは逆の楽しいことに出会うと、心身も良い方向に向かうものです。環境変化はストレスがかかることでもありますが、一方で新しい刺激に触れたり発見があったりと、良い変化やチャンスが起きることもあります。
ですので、新生活で新しい環境に身を置いたら、新しいお店を探してみたり、新しい人間関係を探してみたりするのも良いでしょう。すると新しい出会いや発見があるかもしれません。
環境が変わるということは悪いことばかりではありません。いままで行ったことがない場所や会ったことがない人、見たことがないもの等、いろいろなものと出会うことができ、自分の人生にとって良い方向に向かうような要素もたくさんあります。
みなさんもこういった対処法で新生活のストレスを軽減しながら、新しい刺激や楽しみを見つけていっていただければと思います。
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