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ただの猫カフェじゃない! 捨てネコと飼い主をマッチングする保護猫カフェ「SAVE CAT CAFE」に行ってきた

ふつうのネコカフェとはちょっと違う、ネコと人のためのお店。

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 ネコなどかわいい動物たちとふれあいながらお茶を楽しむことができる「動物カフェ」が人気です。その中には、ペットがしあわせに暮らせるようにユニークな試みを行っているお店もあります。今回取材した保護猫カフェ「SAVE CAT CAFE」もその1つです。

ルームの中では猫たちがマイペースに行動

ネコと里親をつなぐお店

 SAVE CAT CAFEがあるのは、大阪市北区天神橋筋商店街。JR天満駅から歩いて5分ほどの場所です。落ち着いた照明が印象的な店内は飲食スペースとふれあいスペース(キャットルーム)に分けられており、利用者は時間に応じた料金を支払うことでルーム内のネコと遊ぶことができます。

大きな看板が目印
ゆったりくつろげる店内

 ルーム内のネコは部屋中を走り回ったり、ベッドでごろんと寝ころんだりと気まぐれに行動しています。カメラを向けると興味ありげに近づいてのぞき込んでくるのがとてもラブリー。

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トンネルの中にも!
ふつうの猫カフェとはちょっと違う?

 カフェにいるネコは全て、もともと野良猫だった子や、飼い主に捨てられた子で、みんなつらい過去を持つ猫たちです。このお店ではそうしたネコたちをNPO法人「おおさかねこネット」から預かり、お世話しているのです。カフェのネコたちと利用者がふれあい、「互い」が納得した上で、さらにいくつかの審査をパスすれば一緒に暮らすことができます。また、飲食スペースでケーキやドリンクを注文すれば、支払ったお金はネコのお世話代に使われるのです。

お店を利用することがネコの暮らしにつながる

 この保護猫カフェは一体どのような経緯で作られたのか。また、ネコと人がしあわせに暮らせるためにどのような工夫をしているのか。店長の曽野宏信さんに詳しくお話を伺いました。

2年間で100匹以上のネコが里親の元へ

―― お店を開くこととなったきっかけについて教えてください。

曽野宏信さん(以下:曽野) 一番のきっかけは、インターネットでネコが殺処分される動画を見たことですね。「このようなことが世界で起こっていてよいのか」と、強い衝撃を受けました。そこからボランティアや里親会などのお手伝いをするようになったんですが、活動を続けていく中で、ネコちゃんと里親になってくれる方をよりよくマッチングさせるためには「保護カフェ」というやり方が一番よいのではないかと考えるようになり、2015年4月にこの店をオープンしました。

―― なぜ、保護猫カフェというやり方がよいと考えたのですか?

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曽野 ネコを飼うというのは、家族に迎え入れて10年も20年も暮らし続けるということ。ですので、引き取りたいと考えたネコちゃんがどういう性格なのか、ふだんはどのような様子なのか、事前にしっかりと知っていただけた方が送り出す側としても安心できます。そのための方法として、保護猫カフェがよいのではないかと。飼い主さんもカフェのネコちゃんたちも、ふれあうことによってお互いを知ることができると考えているのです。

ネコとふれあいお互いを知る

―― カフェの猫たちですが、どういう経緯でここにやってくるのですか?

曽野 おおさかねこネットの会員さんが保護されるのですが、最近多い理由としては「多頭飼育崩壊」というものです。これは不妊去勢手術を受けておらず放し飼いにされているネコちゃんがノラちゃんと接触することによって子どもを増やしてしまうというもので、多い場合は70匹以上に増加することもあります。そのために周囲から苦情がきたりしてどうしようもなくなり、ボランティアさんが相談を受けて保護しています。こういった問題が最近各地で起きているのです。

―― 店内に貼られているポスターを見たのですが、「さくらねこTNR」(野良ネコの無料不妊手術事業)などはそうした問題を防ぐためにあるんですね。

曽野 そうですね。その他の理由としては、高齢の方が今まで1人で飼っていたけど、老人ホームに入るために飼えなくなり、他の家族も引き取れない。そういう経緯で殺処分されてしまうのを防ぐためにボランティアさんが相談を受けて引き取って、うちにくるということもあります。でも、確かにどうしようもない場合もあるのですが、本来であればそういうところまで考えてネコちゃんを迎えて暮らすのが当たり前だとは思います。ネコちゃんは自分でおうちを決めることができませんから、人の運命に振り回されてしまうんです。

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看板猫の「いちろー」。耳の一部が切り取られているのは去勢手術を受けた証明
お耳にはそんなヒミツがあったんですね

―― この店に来るネコは月にどれぐらいで、引き取られていくのは何匹ほどですか?

曽野 平均的には月3~4匹で、1歳前後の若いネコが来ることが多いです。ただ、春から秋にかけては野良ネコの繁殖シーズンなので、その時期は子ネコが多くなります。この店ではネコちゃんが卒業していけばその代わりに新しい子が来るという仕組みなので、引き取られる数も同じです。月によってムラがありますので、年間でいうと30匹、多くて40匹、この店をはじめてからおうちがきまった子は今までで100匹を超えています。

―― かなりの数ですね。

曽野 保護猫カフェは他にもあるので比較して多いか少ないかは分かりませんが、早いペースで決まっていってるとは感じます。ただ、譲渡するにあたっても提携のNPO同様審査や面談、そしてトライアル飼育を設けています。審査の内容は、ネコちゃんを飼える環境であるか、その飼い主さんにはどういった個性や性格を持つネコちゃんがふさわしいかということを見ます。例えば、昼間よくお出かけになられる方であれば、大人しくマイペースな子の方が向いているのではないかといった感じです。トライアル飼育では、実際にトイレやゴハン、ケージや脱走対策について事前にご準備いただいて、ネコちゃんと一時的に一緒に暮らしていただきます。

ルーム内のネコたちはとっても個性豊か。でも仲良し
同じく看板猫の「とらいち」と「とらぞう」。茶トラの兄弟で、とっても甘えたがり

さまざまな工夫で快適なネコライフ

――ネコと飼い主のよりよいマッチングを成功させるために行っている工夫などは?

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曽野 TwitterFacebookInstagramといったSNSに、ネコちゃんの個性が分かるような画像を投稿しています。もしご来店前に気になるネコちゃんがいれば、それらを見ていただくだけでも「あっこの子はすごい甘えん坊なんだ」「この子は遊び好きなんだ」といったある程度のイメージを持っていただくことができるのではないかと。また、お店づくりにおいても、ネコちゃんがのびのびとできる環境に気を配ってまして、お店でのネコちゃんの様子を見れば、飼い主の方がおうちで一緒に暮らす状況をイメージしやすくなると思います。「自分の家だったらこんな感じかな」と。

TwitterやFacebookなどでネコちゃんたちの様子を発信

―― ルームの方も拝見しましたが、ストレスや不安を与えないよういろいろなことに気を遣っているのですね。

曽野 ネコちゃんの安全とリスクケアにはかなり気を付けています。キャットルームの中にある電気コードは噛んでも大丈夫なよう全て保護カバーを設置してますし、ケージの隙間に足を挟んでねんざや骨折をしないよう、敷居板もかぶせています。後はキャットルームの定員数も決めてまして、あまり人を詰め込みすぎず、トラブルが起こりにくいようにしていますね。また、うまくふれあっていただくために、スタッフがネコちゃん一匹ずつの個性や性格、名前や保護の経緯について接客を通して伝えさせていただいたりしています。ネコジャラシの使い方やなで方についても、さりげなくレクチャーさせていただいてます。

こちらも工夫の一つ。ネコが逃げ出してしまわないよう二重扉になっている

―― それでは最後の質問になるのですが、今後保護猫カフェを運営していくにあたって課題などはありますか?

曽野 今以上にお客様もネコも過ごしやすいお店づくりがしたいと毎日のように考えています。キャットルームでのルールについても細かく修正を加えたり。また、毎月ネコは卒業していってますが、そうなると接客やレイアウトの方法を変える必要があるんです。例えば遊ぶのが好きな子が来た場合、ねこじゃらしの数を増やしたり、ゆっくり寝るのが好きな子が来たらベッドを増やしたりとか。保護猫カフェ自体、全国で増加傾向ですので、お客さんもさまざまなお店からネコちゃんを選べるといういい流れになってきています。そんな中、保護猫カフェを運営する側としては「より魅力的なお店づくり」は意識しています。やはりお店であって寄付金はもらってないので、他のお店より魅力的であるように日々がんばっています。

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かわいいネコたちのためには、魅力的なお店づくりが不可欠

ネコたちを守る保護猫カフェの取り組み

 実際、ルーム内のネコたちが非常にのびのびと過ごしていた点からも、曽野さんがお話されていた「ネコと人がしあわせに過ごすためのお店」を実感することができました。

 ペットと人間とをめぐる問題に関して、SAVE CAT CAFEをはじめとする保護猫カフェの行う取り組みは確実に効果を上げています。ネコと遊ぶことができるだけでなく、利用することで彼らの生活を助けるられるのが保護猫カフェの特徴。一緒に暮らすにあたって必要なことを勉強することも可能なので、もしネコを飼いたいと考えているなら、一度お店に足を運んでみるのもよいかもしれません。

ネコだってよりよい飼い主を探している

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