ニュース

漫画海賊サイトを追い詰めた松文館の執念 損害賠償金は作家へ分配 「やる価値は十分にあった」(1/3 ページ)

2017年に管理人逮捕が話題になった海賊サイト。今冬に違法アップロードサイトと示談を成立させた著作権管理会社と本件を担当した弁護士に、経緯やサイトの実態を取材しました。

advertisement

 2017年5月に閉鎖した投稿サイト「フリーブックス」や9人の逮捕者を出したリーチサイト「はるか夢の址(あと)」など、著作物の無断利用が指摘されているネットの海賊サイト問題。11月下旬にTwitterで、ある出版社が違法アップロードサイトと示談を成立させ、勝ち得た損害賠償を作者に分配したという漫画家のツイートが注目を集めた。

 示談を成立させたのは、成人向け漫画を扱う中小出版社・松文館。2016年10月上旬にあるサイトに松文館の出版物が大量に無断アップロードされているのを発見し、およそ1年で損害賠償の獲得にまでこぎつけたのだという。また作者のツイートによれば、「正規のダウンロード印税より(海賊サイトから得た)その分配金の方が高額だった」とも。

 海賊サイトといえば運営元の特定や違法行為の証明が難しく、一般的にできることと言えば連絡フォームに作品の削除を要請する程度。賠償金を得て、それを作者に分配できたケースは異例で、あったとしてもこのように表に出てくることはまずない。

advertisement
作家に届いた「損害賠償金の分配」通知(提供:海野螢さん

 一体どのようにして松文館側は示談を成立させ、どのような判断のもと作者に恩恵が行き渡る措置をとったのか。松文館の著作権管理を担うグループ・ゼロの取締役社長・宇野英明氏とグループ・ゼロの代理人として本件を担当した山口貴士弁護士(リンク総合法律事務所)の2人に話をうかがった。

 なお本件の取材では、示談成立にあたり当事者間での守秘義務が生じたため、サイト名や数字など運営元が特定できるような情報は明かせないとのことだった。そちらを踏まえて読んでいただきたい。

「やる価値は十分にあった」 発覚から損害賠償金分配までの流れ

 無断投稿の発見から損害賠償の分配までの流れは、次の通りだ。

 2016年10月上旬、著作権を管理している“大勢”の作家の作品が“多数”、あるサイトに無断アップロードされている事態をグループ・ゼロが把握した。すぐ山口弁護士に相談して被害状況を調査したところ、他にも複数のサイトに無断投稿されており、これらに国内の4団体が関与していることを特定できた。

 シラを切ることができないよう、サイトの画面を保存したり作品をリストアップしたりなどと証拠固めを慎重に行い、翌月には弁護士名の書面で運営サイドに通知。すぐに応じる所もあれば長らく無視し続ける所もあり、反応はそれぞれだったが、粘り強く交渉を進めた結果、2017年11月に全ての団体と示談が成立した。なお無断公開されていた作品は、通知から短期間で公開停止にできたという。

advertisement

 得られた損害賠償金の額は守秘義務により言えないが、「やる価値は十分にあった」とのこと。弁護士費用などの経費を引いて残った額を、被害にあった作家へ“印税に準ずるもの”とし、無断投稿されていた著作物の作品点数に応じてそれぞれ分配した。作家への報告は11月、振込は11月24日。事態の発覚から約1年というスピード感だった。

1万回近くリツイートされた海野螢さんのツイート

 作家への分配額はそれぞれだが、本件をTwitterで明らかにした漫画家・海野螢さんは先述の通り「正規のダウンロード印税よりその分配金の方が高額だった」と報告していた(※)。

※:海野螢さんの松文館作品は『少女の異常な愛情』『アリスの二つの顔』など。何点が無断利用されていたかは明かされなかった。

       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

記事ランキング

  1. 「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
  2. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
  3. 元「おニャン子」内海和子、娘・ゆりあんぬの“胃の粘膜ぶっ壊す”食事に激怒! 有名飲食店に謝罪し「出禁にして」「違う星の人そんな気がしてなりません」
  4. 「恐ろしい」 北海道の道路標識 → “見落としたら絶望”のとんでもない表示に衝撃走る 「普通にホラーでは?」
  5. 優しそうな“おかっぱ頭”の男性→プロがカットしたら…… “別人級の仕上がり”が470万再生「えっ!? って声出た」「EXILEみたい」
  6. 平愛梨、“夫・長友佑都選手”に眠れなくてLINE送信→“まさかの返信”に「なんやねん」「もう寝るしかない」
  7. 高畑充希と結婚の岡田将生、インスタ投稿めぐり“思わぬ議論”に 「わたしも思ってた」「普通に考えて……」
  8. 「天才が現れた!」 森永が教える“秋らしい”お菓子の作り方→たこ焼き器を使ったアイデアに「すごいすごい可愛い」
  9. “無給餌”で育てたメダカが2年後、驚きの姿に→さらに半年後…… 放置しておいたビオトープで起きた“奇跡”に「ロマンを感じる」
  10. 「うどん屋としてあるまじきミス」→臨時休業 まさかの“残念すぎる理由”に19万いいね 「今日だけパン屋さんになりませんか」