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漫画海賊サイトを追い詰めた松文館の執念 損害賠償金は作家へ分配 「やる価値は十分にあった」(2/3 ページ)

2017年に管理人逮捕が話題になった海賊サイト。今冬に違法アップロードサイトと示談を成立させた著作権管理会社と本件を担当した弁護士に、経緯やサイトの実態を取材しました。

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示談がうまくいったポイント

 グループ・ゼロではこれまでにも違法アップロードサイトへの対応に取り組んできたが、これまでは無断配信を停止をさせることが主であり、賠償金を得られたのはこれが初めて。示談が成立したポイントはどこにあるのか。

 1つは「数の力」だと山口弁護士は話す。

 もし当該サイトにアップされている作品のうち、松文館が管理している作品の数が少なければ、損害賠償を請求したところで金額が少なくなる。相手方に危機感を持たせることはできないばかりか、示談が成立したとしてもコストがかかりすぎて割に合わない。ところが、大量に違法アップされている場合には、請求可能な損害賠償額も大きくなり、刑事事件化する可能性も高くなるので、十分にコストを割く価値が出てくる。

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 もう1つは、運営元を特定できた点だ。

 違法アップロードサイトの運営は往々にして匿名。仮に連絡フォームから請求してもスルーされるのがオチだ。しかし、身元が特定できれば話は異なる。

 「特定が第一の関門でした。逆に、特定さえできれば、損害賠償請求も刑事告訴もできますし、相手方も自らの違法行為を正当化することは不可能なので、相手もこちらを無視することができないだろうと考えました」(山口弁護士)

 加えて、特定した先が“日本国内”だったことも大きな要因だという。「相手が海外だったら削除はともかく損害賠償を受けるのは難しかったかもしれません」(山口弁護士)

 ちなみに気になる特定方法だが、それについては教えてもらえなかった。手の内が漏れると、サイト側に対策されてしまうからだ。

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悪質サイトは強大 違法行為の証明の難しさ

 「今回のアクションが成功したのは、相手が狡猾(こうかつ)ではなかったから」と宇野氏は振り返る。

 「違法と目されるようなサイトには、極めて悪質なものもあれば、認識の甘いサイトもあります。このたびは後者だったのでうまくいきましたが、より大規模なサイトは組織的で、何らかの形で抜け道を設けていたりします」(宇野氏)

 例えば悪質なサイトは、運営元が自ら違法アップロードを行っているのか、それともユーザーが行っているのか、事実を確認できない作りになっている。運営元が膨大な広告収入を得るために大量の著作物を無断投稿していたとしても、その事実を突き止めない限りは「こちらはプラットフォームを運営しているだけで無断投稿したのはユーザー」と責任逃れされてしまう。

5月に突然閉鎖した海賊サイト「フリーブックス」も、無断投稿したのが誰なのか特定しづらい作りとなっていた(関連記事

 「悪質なサイトを相手に、個人、個社の小さな規模感で違法行為の事実を確認し、対応、対策を講じることは相当難易度が高い」と、宇野氏は顔をしかめる。

 もちろん、無料配信サイトが全てダメということはない。広告収益を権利元に分配することで、版元の許諾を得て配信しているサイトもあるからだ。

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損害賠償金の分配は通例なのか

 グループ・ゼロは今回、獲得した損害賠償金を作者に分配したが、これは「著作権侵害の損害賠償は作家に帰属すべき」と考えているからだ。出版社はあくまで作家からコンテンツの管理を任されているのであり、そこから派生して得られたお金は還元するのが筋だという見解だ。

 他の出版社・著作権管理会社も損害賠償金を得られた場合、同じように分配しているかどうかはわからないが、「一般論としては分配すべき」とのことだった。

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