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乗り物酔いしやすい人ほど「他者の視点」を把握できる――その研究から幽体離脱のメカニズムも解明へ?

ここで言う「視点」は「ものの考え方」でなく、視覚のほうです。

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 乗り物酔いしやすい人は、そうでない人よりも「他者の視点を知覚する能力が高い」――つまり、文字や絵などが相手の視点ではどう見えているか把握しやすいことを、追手門学院大学の認知心理学研究チームが実験で明らかにしました。この発見は人の社会性やコミュニケーション能力の研究に役立つほか、幽体離脱のメカニズムも説明できるのだそうです。話は急に飛びましたが、順を追って説明します。

研究チームが立てた仮説。「わたし」が「Aさん」の見ている文字を知ろうとするとき、脳内で自分をAさんの位置まで動かして読んでいるとしている

 「他者の視点を知覚する能力」は対人コミュニケーションにおいて重要なもの。これを発揮するとき、人は内耳にある前庭と三半規管の反応を利用して、脳内で他者の位置まで身体を動かすシミュレーションをすると、研究者は仮説を立てました。

 前庭と三半規管の感度が高い人ほど乗り物酔いしやすいことは、先行研究で解明済み。そこから、「乗り物酔いしやすい人ほど仮説で示したシミュレーションが早くできる(他者の視点を把握しやすい)ことを確認する」実験が進められました。

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 実験に際しては、同学の学生から乗り物酔いしやすい人とそうでない人を被験者として募集。女の子の人形と動物のぬいぐるみを対面させて被験者の前に置き、ぬいぐるみのいずれかの耳には印を付けます。

実験内容と結果

 そして、人形から見て印はどちらの耳にあるか回答してもらい、その速さを測定。被験者の見る角度や印の左右を変えて測定を重ねた結果、あらゆるパターンで乗り物酔いしやすい人の回答が速く、仮説は証明されました。

 今回の発見で、他者の動作などを把握するための機能に個人差があることが明らかに。研究チームは人の社会性やコミュニケーション能力の形成過程を考えるうえで重要な知見だとしています。例えば、発達障害の子どもが前庭と三半規管を鍛え感度を高めることで、コミュニケーション能力を向上できるといった効果が期待されています。

 研究者は、同研究は幽体離脱のメカニズムを考察するうえでも重要な知見と考えています。幽体離脱については、脳のある部位が損傷すると発生することが先行研究で判明していました。今回の実験をもとに考えれば、脳に損傷がある場合、他者がいない状況でも脳内で身体を他者の位置へ動かすシミュレーションが無意識に発生し、あたかももう1人の自分が別のところにいるように認識してしまう――それが幽体離脱の実態だと説明できるとしています。

脳内シミュレーションで身体を動かし、過去に見た自分の姿をイメージした結果が、幽体離脱だという考察

(沓澤真二)

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