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深さ3200メートルの海底で発見 「レキシントン」はこんなすごい船だったキャプテンながはまのマニアックすぎるシリーズ(2/2 ページ)

最初は空母ではなく「巡洋戦艦」でした。

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「日本軍からの直接攻撃で沈んだわけではなかった」 レキシントンが沈没した理由

 レキシントンは世界初の空母戦となった珊瑚海海戦で、太平洋戦争初期の1942年5月8日に沈んでしまったことから、「全然活躍していなかったのね」「弱かったのね」などと思うかもしれませんが、それは違います。開戦直後から珊瑚海海戦までは生き残った数少ない主力艦として、日本の拠点があったラバウルや日本の領土である南鳥島にゲリラ的奇襲攻撃を仕掛けるなど、不利な状況でも積極的に戦いを挑みました。


「レディ・レックス」と愛されたレキシントンの美しさがよく分かる正横からの姿

レキシントン級は蒸気タービンで発電して、その電気でスクリューを回す「電気推進艦」という、現代の電気自動車の祖先ともいえる先進的な方式を導入していた。米国の都市タコマの発電所が停止したときには、その発電能力を生かしてレキシントンが街に2カ月にわたって電気を供給していたこともある

 最後の戦いとなった珊瑚海海戦でも、日本軍の攻撃で受けた被害は爆弾2発と魚雷2本の命中に過ぎませんでした。大型空母のレキシントンならば、その程度の被害で致命傷にはなりません。実際、日本軍の攻撃が終わった後も24.5ノットで航行し、日本軍を攻撃して、日本海軍の空母「翔鶴」を撃破して帰ってきた味方の航空機を全て着艦させています。


珊瑚海海戦で日本軍の九九式艦上爆撃機の攻撃を受けるレキシントン

同じく珊瑚海海戦で攻撃を受けるレキシントン。こちらは日本軍攻撃隊が撮影した写真

被弾した5インチ高角砲の状況。配備されていた乗員はそのほとんどが戦死している

「昭和17年5月4日~昭和17年5月10日 軍艦瑞鶴戦闘詳報 (珊瑚海海戦に於ける作戦)」にある日本軍攻撃経過図。日本軍はレキシントンをサラトガと間違えていたようだ

「Battle of the Coral Sea 29 April8 May 1942」にある米海軍行動経過図。レキシントンはニューギニア西端から南東約600キロに沈んでいる

 しかし、魚雷が命中した衝撃で載せていた航空機の燃料タンクに亀裂が入り、燃料が漏れ出してしまいます。その燃料が気化し、密閉した艦内で数度にわたって爆発したのです。レキシントンは17時7分に総員退艦を発令し、その20分後に中央部で大規模な爆発が起きて致命傷に。20時、完全に沈没しました。この致命傷となった爆発は、搭載していた航空機用の魚雷が誘爆したと考えられています。

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 珊瑚海海戦の詳しい経過は米海軍公式戦闘報告書「Battle of the Coral Sea 29 April 8 May 1942」や、日本海軍の戦闘詳報「昭和17年5月4日~昭和17年5月10日 軍艦瑞鶴戦闘詳報 (珊瑚海海戦に於ける作戦)」で確認できます。

 さらに、レキシントンの受けた被害の詳しい状況やその後の対策は、米海軍の公式報告書「USS Lexington (CV2) Loss in Action Coral Sea, May 8, 1942」に書かれています。


まず12時47分に小規模な爆発が起きる。そして、14時45分に最初の致命的となる爆発を起こした

14時45分の爆発は攻撃隊が着艦した直後に起きた。幸い搭載する爆弾も魚雷もなく、残存燃料も少なかったことから航空機の誘爆は起きなかったという

船体内部で爆発して炎上するレキシントン

総員退艦が発令される直前のレキシントン。飛行甲板に消火ホースがあるものの艦内動力は全て止まり、水は出ていない。正面にうっすらと見える巡洋艦ミネアポリスも懸命に放水しているが、届かない

17時7分、総員退艦が出て舷側から海に飛び込む乗員たち

致命的な爆発となった17時27分の搭載魚雷誘爆による大爆発の瞬間。吹き飛ぶ艦上機の姿が見える

Naval History and Heritage Commandでアクセスできる「USS Lexington (CV2) Loss in Action Coral Sea, May 8, 1942」の表紙。CONFIDENTIALが消されている

 なおこの2年後には、同じエンクローズド・バウを採用した日本の空母「大鳳」が、マリアナ沖海戦で同様に魚雷が当たった衝撃で漏れた気化ガソリンの爆発で沈んでいます。

写真:Naval History and Heritage Command

長浜和也

 IT記者は仮の姿で本業は船長(自称)。小型帆船を三浦半島の先っちょに係留する“一人旅”セイラー。伊豆諸島を旅するため、学連経験やクルー修行をすっとばして、いきなり1級船舶免許を取得してヨットに乗りはじめて早20年。かつて船で使うデジタルガジェットを紹介する不定期連載も。

 →「海で使うIT」

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