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「クソゲーオブザイヤー2017携帯」まさかの「該当作品無し」 ゲーム界“裏の祭り”に何が起きたのか(2/2 ページ)

「クソゲーが出ないことは良い事です」。その言葉は、どこかむなしく感じた。

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―― 2017年の「KOTY」携帯ですが、単に該当作がなかったのか、それともスレ自体の勢いが落ちているのか、どちらなのでしょうか。

赤野工作:まず結論から言えば、私は両方かな、と思っています。

 2017年のKOTY携帯機版のスレッドには、年初からあまり書き込みが多くありませんでした。それは直接的には、2016年スレの大賞選定が2017年9月ごろまで遅れてしまったため、2017年のスレに書き込む人が減ってしまったことが大きな要因です。

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―― なるほど、前年の選定遅れもあったんですね。

赤野工作:2016年のKOTY携帯機版は、過去にKOTY据置機版で名前が上がったゲーム2作の移植作で争われていました。片方は、12月に発売されたシステムソフト・アルファー(以下「SSA」)の「太平洋の嵐」(※編集部注:もう1つはアクワイアの「Wizardry 囚われし亡霊の街」)。「KOTY」常連のSSAの作品ですから発売前から注目されていました。「KOTY」には総評作成にあたって「検証プレイした人の選評を待つ」というポリシーがありますから、「太平洋の嵐」も検証プレイに名乗りをあげた人が選評を書いてくれるのを待っていたんですが……結局夏になるまで、選評を書く人は現れなかったんです。

 SSAのゲームは遊ぶのに時間がかかるので検証に時間がかかるのも仕方がありません。ただ、わざわざゲームを遊んで「選評」を書こうとする人が減ってしまったという事実は否めないかなと思います。スレ自体の勢いが落ちたというのは正にその通りです。

「KOTY」2017携帯で大賞を争った「太平洋の嵐~皇国の興廃ここにあり、1942戦艦大和反攻の號砲~」。ただしAmazonレビューでの評価は高い(画像はAmazon.co.jpから)

―― 確かにSSA作品は軽く触ってというわけにはいかないですしね。

赤野工作:一方で、該当作が無かったというのもその通りです。KOTY携帯機版が対象としているハード(3DSとVita)が、ここ数年で新作リリースをどんどん減らしているのは確固たる事実ですから。スレでは「そもそも携帯機のゲームって今年何が出たっけ?」みたいな書き込みも見ました。みんな2018年のスレを続ける気ももう無いって感じですしね。ただし、この結果を招いた主な原因が、携帯ゲーム機のリリース本数の減少と、「KOTY」携帯機スレ自体の過疎、そのどちらにあるのかはなんとも言えません。

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 「2017年KOTYが大賞無しになったのは、2016年の大賞選定の遅れが影響して、今年は選評を出す人が現れなかったからだ」とは言いましたが、そもそも前年の選定の遅れは「選評を出す人間がなかなか現れなかったから」こそ起きてしまった出来事じゃないですか。つまり2016年の時点で既に、「KOTY」携帯機スレからは選評を書く人材と、ゲームを自ら検証しようとする人材がほぼ枯渇していたということです。もっと言えば、そうした傾向は2015年の時点から存在していました。一昨年の選定も意見対立で遅れに遅れ、結局大賞が決まったのは6月でしたから。

 携帯ゲーム機の下火と、5chの下火、そのちょうど2つの転換期が重なってしまったのかな、と思ってますね。

―― 確かにその通りですね……。

赤野工作:おかしな人達が「これは『KOTY』だ!」って出来の悪い選評を持ち込んでくることも無くなったし、かと言って住人たちが出来の良い選評の為に「何か候補作に突撃するか」って事も少なくなったし、携帯機版に関しては、今年が節目なのかな、と。

―― 「該当作品無し」は2017年限りのアクシデント的なものではなく、起こるべくして起こった節目的なものだったと。

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赤野工作:まだまだ元気のある「KOTY」据置版の方は、いまだに「KOTY」の名前を利用するためにおかしな人達が気に入らないゲームの不満を持ち込んでくる事も多いですし、住民も目ぼしいタイトルにはこぞって検証プレイに名乗りをあげていますから。おっしゃる通りです。「KOTY」携帯機版の方は、節目を迎えたんでしょうね……。

―― 3DSもVitaもいいかげん現役選手としては苦しい年齢ですし携帯の方は仕方ないといえば仕方ないですね……。

赤野工作:とはいえ……毎年の「KOTY」最終スレの立った日を見ると一目瞭然なのですが、「KOTY」据置版もここ数年、1カ月ずつ総評が出来上がる月が遅れてきているんです。

 これはもちろん、「前年より時間をかけてゲームの検証プレイができている」という良い傾向なのです。でも、単純に携帯機版の前例にならって考えるなら、「KOTY」据置機版も以前に比べると総評を完成させるのが難しくなってきたという前兆かもしれない。特に2017年の据置機版は最後の最後まで住人の意見対立をまとめきることができず、今年は本当に夏まで大賞が決められないんじゃという雰囲気もありましたから。5ちゃんねる自体の人口減少に並行して、KOTY据置機版もこのまま緩やかに運営が遅れていく可能性もあるんじゃないか、とも思います。

―― 候補ゲームの数自体は変わったと思いますか。

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赤野工作:携帯機の方は、絶対数が減るのに比例して、低評価をつけられるソフトも減っていると思います。据置機の方はDL販売が当たり前になって、むしろ一時期より低評価を付けられるゲームは増えていると思います。

―― となると、据え置きもペースが落ちてきているのは住民側の影響が大きいのかもしれませんね。

赤野工作:実際、海外のメーカーのゲームが日本でもDL販売されて、国内でボロボロの評価をつけられるパターンは多いですからね。今だとPS4の「HORSE RACING 2016」とか! でも言っときますけど面白いですからねあれ!


 ゲーム業界の拡大とともに「5ちゃんねる」内で大きな存在となっていた「KOTY」だが、今になり、大きな転換期を迎えているのかもしれない。決して名誉はないものの、10年以上の歴史を持つ「KOTY」は今後どうなっていくのだろうか。

 「クソゲーが出ないことは良い事です」。かみ締めたくなるこの言葉。「面白くないゲーム」が生まれなくなり、「KOTY」そのものが役目を終えられるのか。誰もいなくなり存在そのものが過去のものとなってしまうのか。その答えが分かるのは、まだ先になりそうだ。

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