「同人誌ならグレーだから訴えられない」「駿河屋で買って自社で裁断」 被害続く“違法同人誌サイト”、法人運営の悪質手口を関係者に聞いた(1/2 ページ)
弁護士「同人誌であっても、著作権者の許可なくネット上に本文を全文転載することは違法」。
違法同人誌アップロードサイト「同人あっぷっぷ」などを、熊本県の法人A社が複数運営していることがねとらぼ編集部の取材で分かりました。見えてきたのは著作権者の許可なく同人誌を自社で裁断し、アップロードするなど悪質な手口です。
「同人誌はグレーゾーンだから訴えられない」と豪語
ねとらぼ編集部が本件を取り扱うこととなったきっかけは「違法同人誌アップロードサイトを熊本県内の法人が運営している」という情報提供。「漫画村」などの海賊版サイトが話題になる中、同人誌業界も同様の被害に長年苦しんできたことはよく知られていますが、運営者の特定に至れず、野放しになっているケースが多いとされてきました。
そんな中、熊本県の法人A社について関係者が詳しい内情を語りました。
――大手同人誌サイトをA社が運営しているとのことですが、詳しい状況を教えてください。
情報提供者:熊本県の法人、A社は「同人あっぷっぷ」などの男性向けサイトと「BL同人801館」などの女性向けサイト、合わせて10個以上の同人誌違法アップロードサイトを運営しています。
――サイトをみると、基本的にはユーザーが同人誌のデータをアップロードする形式が多いようですね。
情報提供者:サイト上はそのような作りになっていますが、実質的にはA社の社内でアップロードしていると聞いています。
――具体的にはどういうことでしょうか。
情報提供者:まずインターネット通販の「駿河屋」で同人誌を大量に購入し、A社内にある裁断機で同人誌を裁断します。そしてそれをスキャンしてデータ化したら、A社が運営するサイトにアップロードするんです。
――サイトを運営するだけでなく、自社でアップロードまで行っているんですか。著作権等についてはどう認識しているのでしょうか。
情報提供者:「同人誌自体がグレーゾーンなもので、著作権を侵害しているのだから、(同人誌の作者から)訴えられることはない」という考え方です。
――強引ですね。実際にクレームが来ることはないのでしょうか。
情報提供者:あります。サークルからのクレームには対応しているようですが、例えば「とらのあな限定」「メロンブックス限定」といった同人誌があって、販売サイト側からクレームがあったような場合は無視していたこともありました。
――同人誌サイトは基本的にチーム運営なのでしょうか。
情報提供者:A社は同人誌の違法アップロードサイトの運営とパワーストーンの販売、女性向けアダルトグッズの販売を主力事業としています。同人誌部門は男性向けチームと女性向けチームに分かれていて、1日に10冊程度の同人誌を違法アップロードしています。同人誌部門だけで月に広告掲載費を2000~3000万円は稼いでいると思います。
――最後になぜ情報提供を決意されたのでしょうか。
情報提供者:「アウトな企業」とは思っていましたが、最近になって良心が痛んだことが大きいです。特に漫画村の件で心が動きました。
広告代理店「全てA社の運営でございます」
ねとらぼ編集部は複数の情報源を基に、A社と取引のあった広告代理店に「同人あっぷっぷ」など11サイトについてのURLを確認してもらいました。
――この11サイトについて運営会社はA社ですか。また取引したことはありますか。
広告代理店:(運営は)全てA社です。全てのURLにおいて取引実績がございました。
――A社とお付き合いが始まったのはいつごろからですか。
広告代理店:2012年7月から継続してお取引させていただいております。
――月にいくらぐらいの取引があったのでしょうか。
広告代理店:2018年初旬はおおむね月95万円から100万円程度の取引実績がありましたが、4月以降は月2万円程度の取引実績となっています。
取材に応じた広告代理店によると4月以降に取引額が激減しているのは、「漫画村」などの海賊版サイトが4月13日に政府よりブロッキングの対象として明示されたことを受けて、海賊版サイトに関与しているおそれのある取引サイトとの取引を停止する措置を行ったからとのこと。A社が運営する一部メディアに対しての措置漏れがあったことなどから若干の取引が発生していたとみられます。
A社は直撃取材に対してなんと答える……?
編集部はこれまでの取材からA社が複数の同人誌サイトに関わっていると確信。同人誌サイトの運営状態を把握しているA社のO部長に取材を申し入れました。
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