「同人誌ならグレーだから訴えられない」「駿河屋で買って自社で裁断」 被害続く“違法同人誌サイト”、法人運営の悪質手口を関係者に聞いた(2/2 ページ)
弁護士「同人誌であっても、著作権者の許可なくネット上に本文を全文転載することは違法」。
――A社では同人誌サイトを複数運営されていませんか。
O部長:なんというサイトですか。
――「同人あっぷっぷ」「BL同人801館」「moemax」「同人ラボ」「ビーシェアリンク」「BL同人801館」「BLマガジン」「裏バラ本舗」「ボーイズライブラリー」などです(実際には別のサイトについても問い合わせましたが、名称が過激なため記事内では差し控えます)。
O部長:存じ上げないサイトですね。
――A社の社内で同人誌を裁断しているとの情報もありますが。
O部長:存じ上げません。
――もう一度確認しますが、A社は違法同人誌サイトを運営していないのですね。
O部長:お答えしかねます。
――先ほどは、サイトの存在を知らないと言っていたのに、答えられないというのはどういうことなのでしょうか。
O部長:御社からの質問にはお答えすることがございませんので。
A社には複数回同様の質問をしましたが、いずれもO部長が「知らない」「答えられない」と回答しました。
出稿に関係するアイモバイルは……
「ねとらぼ」ではこれまでにも、違法海賊版サイトにおける広告出稿の責任について取り上げてきました。これは、違法海賊版サイトの運営資金が、多額の広告掲載費について賄われているとみられるからです。
今回取材を行ったA社のサイトでも、アイモバイルなどの広告代理店(前述の取材に応じた代理店とは別)を経由した広告が多数確認されており、こうした広告費がA社の売り上げになっているとみられています。
これについてアイモバイルに質問を行いましたが、「当社と致しましては利用規約に準じて適宜対応しております。また大変申し訳御座いませんが特定の事由についてはお答えできかねます」との回答がサポートセンターから送られてくるばかりでした。
また6月中旬にA社のスマホ版「BL同人801館」に多数の広告が出稿されていた「DMMGAMES R18」のゲームについて、DMMゲームマーケティング本部にも「出稿意図があったのか」などを問い合わせましたが、明確な回答は得られませんでした。
同人誌であっても著作権侵害になる?
こうした状況について、最後にグラディアトル法律事務所の若林翔弁護士にも見解を伺いました。
――同人誌であっても、著作権者の許可なくネット上に本文を全文転載することは違法と言えますか。またいえる場合は、具体的にどういった罪に該当し、どういった処罰を受ける可能性があるのか教えてください。
若林弁護士:同人誌であっても、著作権者の許可なくネット上に本文を全文転載することは違法です。同人誌の内容が原作に新たなストーリーを加えたものであっても、これは二次的著作物として保護されます。そのため、これを許可なくネット上に転載することは違法です。また、同時に原作者の著作権も侵害しており違法です。著作権法上、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金といった刑事罰が定められており、刑事罰を受ける可能性があります。
――こういったサイトを発見した際には、どのような対応を取ればよいのか教えてください。
弁護士:その目的に応じて、刑事告訴、削除請求、損害賠償請求等が可能です。
「同人誌なら訴えられない」という身勝手な主張で、違法アップロードを繰り返しているA社は現在も、手を変え品を変えサイトを更新していることが分かっています。
6月8日には、広告業界団体が「海賊版サイトへの広告を排除」するために定期的に協議を行うことを発表したばかりですが、完全な排除にはまだまだ時間がかかるとみられています(関連記事)。ねとらぼ編集部では今後も海賊版サイトと広告に関する問題について取材を続けていきます。
(Kikka)
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