「プラモにしたいんで図面ください」ホンダ「ありません」 異色の『美少女×耕運機』プラモデル誕生の秘密(前編)(3/4 ページ)
やりたい放題の結果生まれた、「オーバースペックな耕運機」の物語。
高久:たまたま女の子にF90のフィギュアをつけようと思って企画書持ってったんですけど、そこで3ちゃん農業(※)の話を聞きまして、「女性やおじいちゃんおばあちゃんでも使える機械を作ろう」というのが当時のホンダの汎用機械の基本コンセプトだというのを知りました。それがキットのコンセプトとも合致してたんで、もう「願ったりかなったりです!」と。
※3ちゃん農業:それまで農家の働き手だった男性が出稼ぎに出たりして、残された「じいちゃん・ばあちゃん・かあちゃん」だけで農業が営まれること。1963年の流行語にもなった。
とにかくデザインもエンジンも“やりすぎ”な耕運機、F90
――しかしF90の実車、外で見るとめちゃくちゃかっこいいですね!
中島:F60(F90の1つ前にホンダから発売された耕運機)と比べるとデザイン的に明らかにやりすぎだし、すごく大きいですよね。おそらくエンジンありきなんですよ。全体がエンジンのために大きくなっていく。
――デザインした人が誰かっていうのは分かんないですよね?
高久:もう図面も残ってないですもんね。最初に「プラモにしたいんで図面ください」って言ったら「ありません」っていわれて。
中島:すごく一生懸命探したんですよ。ありとあらゆるところを探したんですけど、「ダメだ、この時代は何も残ってない……」ということになりまして。二輪は1940年代後半から残ってるんですけど。
そこで二輪の先輩にたずねたところ、確かな話ではないものの、F90のデザインは当時の二輪デザイナーが担当していたのではないかという話が聞けたんです。
――始まったときの話は二輪の人しか分からないんですね。
1966年当時のホンダには二輪車のデザイナーしかいなかった。このため農機具のデザインも二輪車のデザイナーが担当していたんではないかと考えらえます。
あくまでも推測ですが、二輪車のデザイナーに「お前、耕運機もやれ」という命令があって、デザイナーが「好きにやっていいならやります」と二輪車的な考えでデザインを担当したのがF90ではないかと。
じゃないと2灯ヘッドライトとか流線型の車体とかにはしないと思います。本来の耕作作業には全く関係ないので。
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