国内に現存なし 歴史的価値のある旧日本軍「九五式軽戦車」里帰り計画が本格始動、クラウドファンディングで支援募集(2/2 ページ)
かつて2300台以上が生産された国産戦車を日本に。
日本への里帰りを目標としている九五式軽戦車ですが、実は過去に日本へ返還されたことがあります。
現在も15台ほどの九五式軽戦車が残されているミクロネシア連邦ポンペイ島から、1981年に元アメリカ軍人の厚意によって2両が日本に返還されました。
そのうち1両は再塗装後、再びポンペイ島に返還・寄贈されましたが、もう1両は1986年から京都嵐山美術館にて展示されていました。1991年に美術館が閉鎖されてからは和歌山県の南紀白浜ゼロパークへ移管されました。
しかし、2004年に南紀白浜ゼロパークが閉鎖されたことで、九五式軽戦車は行き場を失い、新たな買い手となったのは英国の愛好家。これにより日本国内に残された最後の1台である九五式軽戦車が日本を離れることになりました。
防衛技術博物館を創る会代表の小林雅彦さんは当時、購入したいと手を挙げたもののタッチの差で間に合わなかったそうで、その悔しさがNPO法人設立のきっかけの1つとなったことをクラウドファンディングサイト上で語っています。
NPO立ち上げ後は、英国の愛好家が購入した九五式軽戦車とポンペイ島に残された九五式軽戦車の返還交渉が進められていましたが、どちらも難航しました。しかし、2017年になって英国の愛好家から「やはりこの戦車を購入しないか?」「ただし、車両の修復費用もサポートしてほしい」と連絡が届いたことで返還のチャンスが訪れます。
英国の愛好家が購入した九五式軽戦車は想像していたよりも状態が悪く、10年にわたり修復作業を行っていましたが他の修復車両を抱えていたこともあって、最終的に修理を断念。中東の石油王、ロシアの戦車マニアへの売却を検討していたときに、防衛技術博物館を創る会の存在を知り、「本来あるべき場所にこの戦車を返すべきだと考えが変わった」と申し出があったそうです。
この申し出を受けた防衛技術博物館を創る会は九五式軽戦車の日本への里帰りプロジェクト立ち上げ、約2年の月日を経て本格的に動き出したというわけです。
九五式軽戦車の修理はすでに進められており、2018年末に三菱製空冷ディーゼルエンジンA6120VD型のオーバーホールと動作確認が行われました。今後は3月中にエンジンを搭載しての試運転を実施して、5月末には復元終了を目指しています。
九五式軽戦車の修理が完了すると、オリジナル三菱空冷ディーゼルエンジンで走行する旧日本軍戦車としては世界で2台目となります。
九五式軽戦車の里帰りプロジェクトへの支援は期間は4月30日午後11時まで。目標額の5000万円はReadyfor史上最高額となる見込みです。
防衛技術博物館を創る会の小林さんは今回のプロジェクトが成功すれば、ポンペイ島にある他の旧日本軍の車輌の里帰り機運も高まるのではないかと期待しているそうです。
ちなみにポンペイ島には現存するのは世界で1台のみとみられているトヨタ製の水陸両用トラック「スキ」、牽引トラクター「ホフ」のほか、実際に走行も可能な九七式軽装甲車など、多数の歴史的価値のある車輌が残されています。
(だい)
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