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釣魚のオークションサービス登場、ネットで不安や疑問の声 運営と厚生労働省の見解は

釣った魚を個人間で売買できる魚専門のオークションサービス。画期的である一方、「食品衛生面でトラブルが起きないか」など疑問の声が相次いでいます。

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 釣った魚を個人間で売買できる魚専門のオークションサービス「Fish Sale」が発表され、ネットでは「食品衛生面でトラブルが起きないか」「漁業者と対立しないか」など不安視する声が上がっています。運営元のFresh Speedと、厚生労働省の食品監視安全課に、運営上の問題はないのか取材しました。

前例のない魚のオークションサービスに不安や戸惑いの声

 「Fish Sale」は4月1日にスタート予定の釣魚オークションサービス。個人が釣った魚を、写真と説明文、値段の3つを登録するだけで1匹から出品でき、買い手は欲しい魚をオークション形式で競り落とせるというサービスです。大量に釣れてしまった魚をロスせずに提供できる、釣果を趣味の釣り費用にできる、買い手も魚市場が休みの日でも購入できるなど、さまざまなメリットを打ち出していました。販売手数料は落札価格の10%。

いわゆるフリマサービスの魚版という内容(Fish Sale公式サイトより)

 サービスは1月31日に発表されましたが、2月8日ごろからネットでは、サービスに食の安全面でリスクがあるとした指摘が注目を浴びています。不安視されている点は次のようなものです。

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  • 魚市場では食中毒が発生しないよう食品衛生監視員が監視指導したりしているが、Fish Saleでは同様の存在、仕組みがあるのか
  • そもそも食品衛生法など日本の法律において、サービスに問題ないのか
  • 魚種の誤同定(毒を持った魚を、似ている他の安全な魚と双方が勘違いして売買してしまうケース)、鮮度劣化や生物濃縮で食中毒をもたらしてしまうケース、人気のある絶滅危惧種の乱獲を招いてしまうケースが考えられるが、対策はあるのか
  • 上記のトラブルが発生した場合、責任の所在は売り手、買い手、運営のどちらにあるのか
  • こうしたサービスで個人で魚を売るに当たって、漁業権の問題はないのか

 Twitterでは指摘をまとめたツイートが7万回以上リツイートされるなど話題に。「可食魚の見分けは命に係わるのに」「素人で魚の売買は危ないのでは」「食中毒とかその他の事故が起きた際に責任の所在をどうするつもりでリリースするのだろう」などさまざまな意見を集めていました。

大きく注目を浴びたツイート

Fish Sale側の主張と対応

 これら指摘について運営元のFresh Speed(本社:大阪府大阪市)に取材したところ、次のような回答が返ってきました。

 まずFish Saleが食品衛生法など日本の法律に抵触する可能性については、2017年に厚生労働省の医薬生活衛生局食品監視安全課水産安全係に確認した際は「問題ない」と回答をもらったとのこと。しかし今回の騒動を踏まえ、あらためて現在、大阪市保健所、水産庁、消費者庁、環境庁、警視庁、大阪府警に問い合わせ中だといいます。

 有毒魚を個々人で売買してしまうのを防ぐ対策については、「毒のある魚の写真などを掲載します」とのこと。また同様のケースや絶滅危惧種の乱獲などの責任については「慎重に出品していただけることかと思いますし、出品の際には規約に同意するチェックボックスで、注意喚起も行います。また、落札者側にも注意喚起を促す文言を入札時に表記させます」と説明しました。

 それでも上記のトラブルが発生した場合、責任の所在がどちらにあるかについては省庁に問い合わせ中。14日時点で次の回答をもらっているそうです。

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  • 種の保存法(※)に該当する魚を出品した者、落札者に対して警察が捜査を行い、刑罰の可能性もある。
  • 運営側の管理責任としては、運営会社に該当ページの削除を行ったり、該当者の抹消など。レッドリストなどを掲載してもらった方がいい。
  • 削除要請に応じなかったり、捜査の結果ほう助の疑いなどがあると(運営側が)共犯となる可能性もある。ケースバイケースでどうとも言えない。

※絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律

 また漁業権の問題、個人が釣った魚を売買する際の違法性については、水産庁は「Fish Saleに違法性はなく、釣った魚を売ることにも違法性はない」と見解を示しているそうです。

 「そもそも、釣り魚の売買は規制対象外であり、魚は漁業権の対象外です(※)。営利目的で、反復継続する場合には漁業と見なされるかもしれないので、自身の船であれば漁船登録の手続きが必要ですが、岸から魚を釣る陸っぱりは対象外になります。漁業権は基本的に漁業協同組合にありますが、漁業を営むために加盟する必要はない、とのことでした」(Fresh Speed担当者)

※漁業権の対象は藻類や貝類、うにや伊勢エビといった農林水産大臣指定の定着性動物

第一種共同漁業権の対象になる貝藻類等(全国漁業協同組合連合会パンフレットより

 同企業は公式Facebookページでも回答を公開中。各省庁からあらためて正式な回答が得られ次第、プレスリリースおよびSNS上で発表するとしています。

厚生労働省の主張と見解

 厚生労働省の医薬生活衛生局食品監視安全課の企画法令係に取材したところ、Fresh Speedから水産安全係に問い合わせがあったのは事実。しかしその際応対した担当者は、「Fish Saleの業態はネットオークションになり、直接魚を扱っているのは出品者と落札者、両者になるのでは」と意見はしたものの、「業態の細かい判断については管轄自治体の保健所に確認してほしい」と伝えたといいます。

 「基本的に省庁では個別の事業について問い合わせがあっても、食品衛生法の規制対象となるかどうか判断は下しておりません。一般論を伝えるか、管轄自治体の保健所に判断してもらうよう案内しています」(企画法令係)

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 そもそもFish Saleのように食品を扱うサービスは、どのような基準で食品衛生法の規制対象となるのか。一般的には、サービスの業態が食品衛生法の定める「営業」に当てはまるか否か、または各自治体の条例に引っ掛かるか否か、2点に掛かってくるといいます。

 食品衛生法の「営業」は、第四条第七項で次のように定められています。

この法律で営業とは、業として、食品若しくは添加物を採取し、製造し、輸入し、加工し、調理し、貯蔵し、運搬し、若しくは販売すること又は器具若しくは容器包装を製造し、輸入し、若しくは販売することをいう。ただし、農業及び水産業における食品の採取業は、これを含まない。

 例えば炊き出しなど、金銭のやりとりが発生しない食品の“譲渡”行為も、食品衛生法の「業」に当てはまる例があるとのこと。もしサービスが対象だった場合、各自治体の保健所から許可をもらえないと営業ができなかったり、食品監視指導員の監視指導も入ってくるケースも考えられるといいます。

 Fresh Speedは大阪市保健所からの回答を待っている段階。運営側が直接的に魚の売買を行わないとしても、プラットフォームを提供して販売手数料を取っている場合は食品衛生法や各条例の規制対象となるのか、注目したいところです。

黒木貴啓

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