「ストV AE」大会でももち選手が7位入賞も10万円しか賞金受け取れず 物議を呼んだ“プロ制度”、JeSUの見解は
「ライセンスがあれば賞金を出せる仕組みだが、ももち選手は自身の判断でライセンス取得をしていない」。
2018年12月に開催された格闘ゲーム「ストリートファイターV アーケードエディション」の公式世界大会「カプコンカップ」で、7位タイとなった「ももち」選手が、本来約50万円の賞金を受け取れたにもかかわらず、10万円しか受け取っていなかったことが分かり議論を呼んでいます。減額の理由は、日本eスポーツ連合(JeSU)のプロライセンスを取得していないこととされていますが、なぜこのような措置が取られたのでしょうか。JeSUに取材しました。
JeSUは既存のeスポーツ関連団体を統合する形で2018年2月に発足。eスポーツ選手の育成や地位向上、eスポーツのオリンピック種目化などを目指すとして、「プロゲーマーライセンス」の交付も行われることになりました。JeSUによると、このライセンスはそれまで明確な定義のなかった「プロゲーマー」の一つの基準となり、“景表法などにより国内で高額賞金がかかった大会を開けない”という問題を解決するものとされています。
「カプコンカップ」は格闘ゲームの中でもトップクラスの賞金が掛けられた大会として知られ、2018年開催時の優勝賞金は25万ドル。7位タイとなったももち選手にも5000ドル(約50万円)の賞金が与えられるはずでした。しかし、2月15日から17日まで福岡で開催されていた「EVO JAPAN」への出場時に、妻であるチョコブランカさんの配信で「ももちはカプコンカップで10万円しかもらえなかった」「本来の賞金は50万円ほどだった」との話題がでたことから、「賞金がJeSUによって不当に減額されているのでは」とライセンス制度が物議を醸すことに。
ももち選手はライセンス制度が発表された際、「プレイヤーやコミュニティーについての議論が抜け落ちている」などとする声明を発表し、その正当性に疑問を投げかけていました(関連記事)。また今回の騒動後に行われた配信でも、「ライセンスを受け取れば賞金を満額受け取れるとの案内があったものの、自らの意思で辞退した」「ライセンス制度発表時に声明を発表したときから、(自身の意見は)大きく変わっていない」「賞金がほしいからと言ってライセンスを受け取るのは違う」などと説明。その場でライセンスを取得すれば賞金も満額(5000ドル)受け取れたことや、それでもあえてライセンスは受け取らず、自らの意思で10万円を選んだことなどを明かしました。
プロゲーマーライセンス制度については発表当初から一部で正当性が疑問視され続けており、今回の件についても「(カプコンカップの賞金は)本当に減額しなければならなかったのか」「興行であれば報酬として賞金を出せたのでは」との意見が上がっています。そこで、カプコンカップの賞金問題について「なぜ賞金を減額しなければならなかったのか」「一部で“興行という形であれば賞金を出せたのではないか”とする意見もあるが、なぜそうしなかったのか」「今後のカプコンカップでも“ライセンスを受け取らない場合は賞金上限10万円”の措置が取られるのか」について、JeSUに問い合わせを行いました。以下、回答の全文を掲載します。
消費者庁の担当課長が、メディアのインタビューで応えた話のなかに「eスポーツの大会出場者が優れた技術によって観客を魅了する仕事をし、その報酬として賞金を得る場合、その賞金はプロ・アマ問わず、景表法で言う『景品類』の該当しない」という言葉がありました。しかし、この言葉で言うところの優れた技術とはどの程度のものなのか、そもそもeスポーツとは何を指すのかなど、言葉の規定はまったくありません。
各IPホルダーが法律を厳守しようとしたとき、法的に許容される線引きが必要になりました。一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)は一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)、一般社団法人 日本オンラインゲーム協会(JOGA)からの協力を受け、出来上がった団体です。従来3つに分かれていたeスポーツ関連団体、社団法人をまとめ、国内における唯一のeスポーツ関連団体として、産業界、関係省庁への窓口を一本化した立ち位置にあります。各方面からの意見を聞きながらまとめあげたものが、JeSUが発行するプロライセンスです。このライセンス制度に関しては、消費者庁にも確認をし、「明確にわかりやすく合法的な仕組みである」との言葉をいただいています。
このライセンスの制度は、日本国内における法を忠実に厳守する上で、賞金制度を可能にする大きな取り組みです。選手の賞金を恣意的に減額するしないという話ではなく、ライセンスがあることで、賞金を出せる仕組みです。この取組みついて、ももち選手ご自身も、ライセンスを受け取っていれば、賞金を受け取れることを理解されているなか、ご本人の意思でライセンス取得をされていません。
ライセンスの在り方には、さまざまな法解釈をして、批判をする方がいたことは認識しています。しかし、ライセンス発行から1年が経過し、各方面から危惧された問題点に関して、関係省庁からは一度も批判的なご指摘は無かったことを、御報告します。その間、このライセンスの制度をベースに、約40の公認大会が開催され、賞金総額は1億5000万円に達しています。
今後の開催される個別の大会に関して、賞金が出るかでないかはコメントは出来ません。
しかし、ライセンス制度に賛同し、公認タイトルになっている競技に関しては、いまの法を順守する仕組みで継続して大会運営が行われるものだと思います。
※なお、今回の問題について「カプコンカップ」を開催しているカプコンにも問い合わせを行いましたが、会員企業として個別で回答できないためJeSUに改めて問い合わせてほしいとのことでした。
今回の回答でJeSUは、賞金問題については「ライセンスがあれば賞金を出せる仕組みだが、ももち選手は自身の判断でライセンス取得をしていない」とするとともに、その正当性については「プロゲーマーライセンス制度について消費者庁を含めた各方面に確認を取った上で発行したもの」「危惧されている問題について関係省庁からの指摘はない」と語っています。
また、ももち選手はEVO JAPANの「ストリートファイターV アーケードエディション」部門で優勝し、賞金150万円を獲得(景表法の問題は、スポンサーが賞金を拠出することでクリアしているとみられます)。今回の話題はEVO JAPANの開催期間中に持ち上がったものであることから、一部から「EVO JAPANの賞金も10万円しかもらえないのでは」との意見もあがりましたが、ももち選手は配信上でこれを明確に否定しています。
関連記事
日本国内のeスポーツ市場規模、2018年は前年比13倍の48.3億円に Gzブレイン推定
2022年には市場規模が99.4億円になると予測しています。スマブラSPで勝率1割の初心者が、1カ月でVIPマッチ入りするまでにやったこと
VIPに入って得たものと失ったもの。田口尚平アナウンサー「ねむったー!」 スマブラSP名勝負「プリン対プリン」の動画に本職の実況がつけられ話題に
面白い動画に面白い実況がのったらそれは最高……!「リーグ・オブ・レジェンド」日本リーグ、チーム「PENTAGRAM」との契約打ち切り “在留カード問題”に1つの決着
世界でも問題視された“在留カード問題”に、ようやく1つの決着が付いた形となります。2019年茨城国体でeスポーツ大会が併催 主な種目は「ウイニングイレブン」
eスポーツの認知拡大を図るため、他のタイトルも検討中とのこと。「ぷよぷよ」初のプロライセンス選手決定 「もこう」「Kamestry」「くまちょむ」など11人
4月15日に初のプロ大会を開催予定。「ぷよぷよ」が待望のeスポーツに JeSUの認定タイトル化、4月の「セガフェス」で公認大会も実施
ぷよぷよのeスポーツ化を巡っては、2016年にぷよぷよプレイヤーが開発した「マジカルストーン」が物議を醸しました。日本eスポーツ連合認定プロに「パズドラ」プレイヤー2人 中学生プロも誕生
日本eスポーツ連合(JeSU)は2月1日に設立されたばかり。「日本eスポーツ連合」設立 プロゲーマーライセンスの条件は「公認大会で優秀な成績を収めること」
講習も必要。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.