ニュース

園田競馬場の入門マンガ、「公式なのに生々しい」と評判 「的確過ぎ」「すごく笑えるしタメになる」

「行き過ぎたのではないかと不安もあるのも正直なところです(笑)」と園田競馬場担当者。

advertisement

 初めての競馬場、一緒に来るはずだった彼氏が朝イチでパチスロ当たって来れなくなっちゃって――。園田競馬場(兵庫県尼崎市)の公式サイトで公開された“競馬の初心者向けガイドマンガ”が、公式にしては生々しいギャンブルあるあるが随所に差し込まれており、Twitterで「ネジが飛んでいていい」「公式なのにとても面白い」と評判を呼んでいます。

「園田競馬ビギナーズガイド」。普通の競馬入門マンガに見えるけれども……?(画像提供:園田競馬場)

 マンガは園田競馬場に初めて来た女の子が、常連の“おっさん”に馬券の種類や買い方を教えてもらう内容。冒頭で女の子が「園田競馬場に遊びに来たー!!!」と飛び跳ねたり、イケメンなジョッキーにときめいたりと、基本的には知らなかった競馬の魅力に気づいていく「楽しい競馬入門」なのですが、軽快な掛け合いの中で2人の負の面があっけらかんと披露されていきます。

女の子の彼氏、トシ君がとにかくやばい

 特にやばいのは、彼氏・トシ君のクズっぷり。女の子が一人で来ている理由を尋ねられると、本当は競馬デートだったのに「トシ君…朝一でジャ◯ラーの6引いたから今日は行けなくなったって」と暗い顔。さらにデートはいつもパチ屋、誕生日プレゼントはお徳用の日本酒パック、しかもそれもトシ君が全部飲んじゃったこと、終いには無職……とダメダメっぷりが次々と明らかに。「トシ君安定のクズやな!!」とおっさんも盛大にツッコミます。

advertisement
クズっぷり甚だしいトシ君

 競馬歴40年のおっさんも只者ではありません。女の子が馬券を当てまくる横で、おっさんは不的中ばかり。「予想は当たってた(※ハズレと同義)」と意地を張るまではよかったものの、最終的にはあまりのハズレっぷりに馬券を「くがぁっ!!」と投げ捨て取り乱します。「ワシが馬券を床に捨てたってるおかげで清掃員の仕事が生まれるんや!!」という謎の正当化に、女の子も「おっさんクズやん!!」の一言。

金に翻弄されるおっさん

 しかしレースの審議結果、着順が変更され、捨てた馬券に約22万円の配当が付いたことが発覚。おっさんは血相を変えてさっきの馬券を這いつくばって探し回り、金に翻弄される醜態をさらけ出します。親切に競馬の楽しみ方を教えてくれていたおっさんの姿は一体どこへ……! 結局馬券は見つかりハッピーエンド、おっさんは意気揚々と十三(※歓楽街)へ。女の子も「色々あったけど楽しかったな」「また来よっと園田競馬場!」と明るく物語は幕を閉じるのでした。

 競馬の初心者ガイドといえば清らかな面だけを紹介するものが多いですが、「公式がここまで生々しいギャンブルネタぶちこんでいいの!?」と驚きと笑いが絶えないマンガ。一方で「確定するまで馬券は捨てちゃダメ」「ハズレ馬券はちゃんとゴミ箱へ」とちゃんとマナーも啓発しており、競馬の楽しみ方と注意すべき点をフラットに紹介する、誠実な入門書ともいえます。クズネタにも毎度秀逸なツッコミを入れて笑えるようになっている、作者の手腕も素晴らしいです。

ジョッキーをカラフルな中学生と表現するセンスよ

 Twitterではマンガを「公式なのにネジが飛んでて草wwww」と紹介したツイートが1万3000回以上リツイートされるなど話題に。「的確過ぎじゃないですかね」「あるある過ぎて笑った」とリアリティに共感する声、「すごく笑えるし、タメになる!」「競馬のことがよくわかる素晴らしい教材」と称賛する声が寄せられています。「その彼氏という名の外れ馬券はさっさと処分した方が良い」「トシくん、パチンコと競馬ばかりせんと、真面目に働けよ!」とトシ君が気になる人も多数。

 園田競馬場の広報課に取材したところ、マンガは3月26日から競馬場で配布しているガイドブックに収録していたもの。4月5日に公式サイトでも公開したところ今回の反響となり、「ガイドブックで配布したときは特に反応などなかったので、ネットの影響力にびっくりしています」と担当者は驚きます。

advertisement
描いたのはマンガ『サラブレッドと暮らしています。』の田村正一さん

 ガイドを描いたのは、マンガ家の田村正一さん。もともとは園田競馬場で厩務員をしながら、白泉社の青年誌『ヤングアニマル』でギャグエッセイマンガ『サラブレッドと暮らしています。』を連載。住み込みで馬を世話する実生活を笑いと感動を持ってリアルに描き、競馬ファンの間で評判を呼びました。2017年1月からは園田競馬場のサイトでも「うまのしごと」を月2ペースで連載。厩務員を引退した今もなお、中の人にしか描けない競馬場の魅力をマンガで発信し続けています。

連載中の「うまのしごと

 「馬券の買い方は割と堅苦しいので、初心者にマンガですらっと読んでもらいたい」ということで、園田競馬場は田村さんに今回の入門マンガの執筆を依頼。馬券の説明だけは必須で、あとは基本的に田村さんにお任せしたところ、例の内容になったのだといいます。公式であれほどパンチの効いたビギナーズガイドを出すのは問題なかったのでしょうか……?

 「普段から田村さんの作風はリアルと笑い。コーチ屋の下りやトシ君のクズ設定は、彼なりのギャグですね。表現の上手さやこうしたセンスがいいなと思って2年前から『うまのしごと』の連載をお願いしていたので、今回もこの内容で公開しました」(広報担当)

 「ただしネットでバズってしまった今になって、行き過ぎたのではないかと不安もあるのも正直なところです(笑)。でも今のところ批判的な意見はないですし、あんまり飾っても違和感があるものなので。最初はもっとひどい表現もありました……にしてもトシ君のクズ設定って、あらためて思うといらなかったですよね」

 「果たしてイメージアップになるか不安ではありますが、一人でも園田競馬場に足を運んでほしいですし、田村さん本人もそのつもりで描いているはずです。マンガに登場するイケメン騎手もちゃんと実在するので、一度見に来ていただけたらと思います。2018年末にスタンドがグランドオープンしてかなりきれいにもなりました……今思えばそこをマンガでPRしてほしかったです(笑)」

advertisement

 マンガで競馬の悲喜こもごもを平等に受け止めているのも含め、寛容さとユーモアがうかがえる園田競馬場。行ってみてレースを楽しむだけでなく、おっさんのような人間臭さに触れるのも一興かもしれません。

【2019年4月9日19時00分:お詫びと訂正】記事初出時、作者名を「田中正一」と表記しておりましたが、正しくは「田村正一」でした。お詫びして訂正いたします。

黒木貴啓

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

記事ランキング

  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. 「懐かしい」 ハードオフで“30年前のPC”を購入→Windows 95をインストールしたら“驚きの結果”に!
  4. 「靴下屋」運営のタビオ、SNSアカウント炎上を受け「不適切投稿に関するお詫び」発表 「破れないストッキング」についてのやりとりが発端
  5. 餓死寸前でうなり声を上げていた野犬を保護→“6年後の姿”が大きな話題に! さらに2年後の現在を飼い主に聞いた
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
  8. 放置された池でレアな魚を狙っていた親子に、想定外の事態 目にしたショッキングな光景に悲しむ声が続々
  9. 脱北した女性たちが初めて“日本のお寿司”を食べたら…… 胸がつまる現実に考えさせられる 「泣いてしまった」「心打たれました」
  10. 父「若いころはモテた」→息子は半信半疑だったが…… 当時の“間違いなく大人気の姿”に40万いいね「いい年の取り方」【海外】