ワーママ問題提起回「わたし、定時で帰ります。」2話 産休から復帰したワーママ・内田有紀が追い詰められた「妊娠=リセット」の恐怖
「子どもが熱を出しました。今日は定時で帰ります」当たり前のひとことなのに!
育休から復帰するとどうなる? 「わたし、定時で帰ります。」(TBS系)の第2話が4月23日に放送された。ワーキングマザー問題提起の回、意義があった。でも、不満点がないわけではない。
第2話あらすじ「子どもが発熱した」
東山結衣(吉高由里子)の先輩で、双子を出産し育休をとっていた賤ヶ岳八重(内田有紀)が職場復帰した。復帰早々、張り切り過ぎの賤ケ岳に結衣をはじめ周りの社員は動揺を隠せない。
大手飲料メーカーのPR案件のディレクターに指名された賤ヶ岳は空回りする。彼女が強引に進めたサイトのデザインは競合他社のものとそっくりで、クライアントから激怒されてしまったのだ。
その翌日、会社にいた賤ケ岳に夫の陽介(坪倉由幸)から「子どもが発熱した」と連絡が入った。結衣は帰るよう促したが、「みんなが帰るまで帰るわけにはいかない」と賤ヶ岳は聞く耳を持たない。結衣は部署のみんなに、机の下に隠れ、定時で帰ったふりをしてくれるようお願いする。賤ケ岳はこっそり隠れる同僚に気付いたが、心遣いに感謝。「子どもが熱を出しました。今日は定時で帰ります」と種田晃太郎(向井理)に報告し、ようやく帰宅した。
妊娠=リセットの恐怖
賤ヶ岳が職場に復帰してから、あからさまに変わったオフィスの雰囲気。以前は「帰れるときは定時で帰ろう」「休めるときは休もう」と言う人だったのに、半年の休みを経た賤ヶ岳は「残業でも何でもやります!」が口ぐせになっていた。さらに、共に働くメンバーにもハードワークを強要。彼女の空回りのせいでチームの士気はグングン下がった。
これには、理由がある。妊娠を会社に伝えるや、プロジェクトを外された経験が賤ヶ岳にはある。復帰の際も「現場を外れろ」と促された。今までのキャリアで築き上げてきたものがゼロにされる不安。妊娠=リセットの恐怖に彼女は苛まれていた。肩に力が入っているのは、戦力外と思われたくないから。社会や制度、そして周囲の固定概念が賤ヶ岳を追い詰めた。
必死になる彼女を見て福永清次(ユースケ・サンタマリア)が漏らした言葉が、賤ヶ岳を取り巻く状況を象徴している。
「男の育休許す上司って、どうなんだろうね? 会社のお荷物なのかな、ご主人? あっ……、もしかして失業したとか。でなきゃ、何であんな張り切ってんの? 赤ちゃんがかわいくないのかな?」
育休から復帰すれば「育児に専念しないの?」「育休を取らされた夫はどういう心境?」と陰口を叩かれる。これは、あるあるだ。もし制度が整っていたとしても、まだ世の認識が追い付いていないということ。
ある日、仕事と家庭でキャパオーバーになった賤ヶ岳は遅刻した。
「だから、無理しないでって言ったのに」(福永)
男なら決して言われないであろう一言。子どもを引き合いに出されるのは、やはり女性。産まなければ周囲からの圧が掛かるし、産んだら産んだで責められる。現実は厳しい。
「先輩は何と戦ってるんですか?」への回答
賤ヶ岳の子どもが熱を出した。結衣が帰宅を促すも、賤ヶ岳は聞く耳を持たない。
賤ヶ岳「今、私が帰ったら『やっぱり子持ちは……』って言われるの。ここで帰ったら負けなの!」
結衣「先輩は何と戦ってるんですか? そんなに仕事が大事ですか? 『子どもが心配だから帰ります』って堂々と言ってくださいよ」
今回、最も物議を醸した一言はこれだ。賤ヶ岳は一体何と戦っているのか? 彼女は答えに窮したが、その答えは明白である。社会だ。「子どもを産んだばかりの女は使えない」という視線と戦い、「育児は女がするもの」という価値観と戦い、理解のない社会と戦っている。ワーキングマザーに対応した世の中になるには、まだ時間がかかる。
「東山が思ってるほど時代は進んでないから!」(賤ヶ岳)
結衣の作戦を受け、賤ヶ岳はようやく帰宅することを選択した。
「子どもが熱を出しました。今日は定時で帰ります」(賤ヶ岳)
やっぱり、時代は進んでない。定時を過ぎているのに、なぜ断りを入れなければならない? 定時で帰ってはいけない意識が前提になっているからだ。
第2話は、ストーリー全体が問題提起そのものだった。しかし、ドラマ内でワーキングマザーの問題は何一つ解決に至っていない。晃太郎に心配された賤ヶ岳は「何か必死になり過ぎてたかな(笑)」とテヘペロし、そこで丸く収まったテイである。これだと、「頑張り過ぎなくていい」のメッセージだけ啓蒙するドラマに思えてしまう。賤ヶ岳が同僚と絆を深めただけ。根本的な問題についても突っ込んでほしかった。その部分は物足りなかった。
定時で帰宅するために上司からの了解を得る会社員。産休から復帰して居場所の喪失を恐れるワーキングマザー。これらのエピソードが笑い話になる日が来ることを願ってやまない。
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