レビュー

松本まりかにヤラれた「緊急取調室」 孫に娘を殺された祖母の絶望が生み出したのは……4話は早くも令和史上に残る神回(2/2 ページ)

小悪魔から無垢な子どもに退行する松本まりかの怪演に震えた。

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 そこから、さらに引っくり返る。松本まりか=ヤバい役という刷り込みが、完全にミスリードになっていた。ラスボスは祖母。弟を利用する狂気の姉による事件とばかり思っていたのに、最後に表れたのは虐待された孫の素顔だった。被虐待児として幼児退行すると、小悪魔的だった茜は無垢な子どものようになる。祖母に引き取られ、食事も与えられなかったころの顔。それに気付いた瞬間、母親のような雰囲気で茜に寄り添った有希子。天海祐希の演技も凄い。

「緊急取調室」シーズン1DVD-BOX(2014テレビ朝日/TCエンタテインメント)現在はシーズン3放映中

親を殺した子と孫に娘を殺された祖母による狂った世界

 事件は、娘を死なせた孫2人に対する祖母の恨みが原因だった。親を殺した子どもと、孫に娘を殺された祖母。孫は祖母から暴力を受け、洗脳され、その結果として今回の誘拐殺人を引き起こした。書いているだけで、狂った世界だと実感する。娘だけを愛した祖母のため、母の代わりになる女性を誘拐し続ける2人。姉弟は愛されたかったが、血縁者でも愛し愛されるとは限らない。それなのに茜と荘介は、最後まで澄江を「おばあちゃん」と呼び続けていた。

 冷静に考えてみる。町役場務めの茜は、荘介を連れてどこかへ逃げることもできたはずだ。老いた祖母に怒りをぶつけることもできただろう。つまり、今回のエピソードには共依存とネグレクトと家族愛が込められているのだ。第4話のタイトルは「私が誘拐しました」。この「私」が指すのは茜ではなかった

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状況が進むにつれてじょじょに見えてくる家族関係の真実をイラストで整理 イラスト/納口龍司

でんでんが怖過ぎる

 キントリの手法が、いよいよエグ過ぎる。被疑者(荘介)を釈放し、弟を危険に晒すことで姉に供述を迫るやり方。被疑者の命を最優先にした結果とも言えるが、はっきり言ってアウトだろう。第3シーズンは「緊急事案対応取調班メンバー総入れ替えの危機」というテーマが縦軸として貫かれている。今回の事件を経て、キントリの立場はますます危ういものとなった。

 何よりスレスレだったのは、釈放された荘介が帰宅すると、澄江の近くで菱本進(でんでん)が佇んでいた場面だ。あんなのは誰だって驚く。しかも、菱本がギコギコと弾くバイオリンの音色が心地悪過ぎるのだ。文字通り、あの家族の不協和音を表現していた。間違いなく、令和史上最も怖い場面だ。そして、キントリと上層部の不協和音も怖い。

寺西ジャジューカ

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納口龍司

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