レビュー

「きのう何食べた?」内野聖陽の「憑依」と「計算」の5話 全てがケンジだったサッポロ一番みそラーメン回

ケンジの愛らしさ、内野聖陽の神演技、ケンジ特製サッポロ一番みそラーメンを堪能。

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 サッポロ一番みそラーメン食べたぁぁぁ~い!

 と、見た人のほとんどが思ったはずのドラマ24「きのう何食べた?」5話。放送後、スーパーでサッポロ一番みそラーメンが売り切れている様子がツイッターなどで報告されていたが、その気持ちはものすごくよくわかる。Amazonならまだ在庫があるので、食べ損ねてしまった人は今からでもぜひ。もちろん、具だくさんで。

ケンジ(内野聖陽)の見せ場がたっぷりの5話 イラスト/たけだあや

 5話は、ケンジ(内野聖陽)の見せ場がたっぷり。冒頭、口うるさい母親(梶芽衣子)の待つ実家へ帰るのを渋るシロさん(西島秀俊)に静かに怒りを伝えるシーン、ウキウキとサッポロ一番みそラーメンをつくるシーン、ジャニーズらしき男子アイドルたちのカウントダウン番組を見ながら幸せを噛みしめるシーン、お餅料理をひたすら食べ続けるシーン、そしてラストのシロさんに掴みかかる(?)シーンまで、ケンジの愛らしさとそれを表現する内野聖陽の演技が堪能できるエピソードだった。

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計算された電話に出るまでの動き

 内野の演技は、「憑依」と「計算」が絶妙な具合でブレンドされている。

 5話でもっともケンジへの「憑依」を感じたのが、サッポロ一番みそラーメンをつくっているときの水を計るシーン。それまではかなりアバウトに野菜を切ったり、調味料を入れていたりしていたのに、「水はきっかり500cc……」と真剣な表情で計量カップを見詰めるケンジの顔は、一周回って人を殺しかねないドスの効いた役を演じる内野聖陽になっていた

 一方、ものすごく計算された動きだと思ったのは、サッポロ一番みそラーメンを食べ終わった後、カウントダウン番組を見ながらシロさんからの電話に出るまでのシーン。鳴り続ける電話に対して、突然椅子から立ち上がり、テレビのほうを向いて笑顔のまま、ひょこひょこと歩いて、スマホを持ち上げる。それでいて、電話に出ること自体もうれしそうなのだ

 「憑依」と「計算」が絶妙にブレンドされていたのは、美容室で客とおしゃべりしながらブローしているなんでもないシーンだった。もう、ものすごっく自然。手つき、笑顔、ちょっとした腰つきなど、すべてがケンジ(難しい客も難なくさばき、笑顔に嘘がない同性愛のベテラン美容師)としか言いようがない。

ケンジ流サッポロ一番みそラーメンのすべてをイラストレシピにしてみた イラスト/たけだあや

 内野はケンジについて「大人ですねこの人は。外への出方は子供っぽい感じがするんだけど、とても繊細で人の気持ちを汲み取れるキャラ」と分析している。ここまではよくわかる。冒頭の両親をないがしろにするシロさんへの静かな怒りは、ケンジの繊細で人の気持ちを汲み取れるキャラを表している。

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 だが、内野はこうも言っている。「美容師さんで、実はすごく寛容で優しい部分をもっているけど、時にサディスティックな感覚も併せ持ってる感じかな。そういうものがさらりと自然に出せればいいなと思っています」(引用はいずれもシネマトゥデイ 1月24日)。

 インスタントラーメンのためにシロさんからの電話を平気で無視できるところは、ケンジの「サディスティックな感覚」の表れなのだろう。最後の「あの憎い女の店のでいいから」と言いながらシロさんにパンを食べさせるよう迫るシーンも、コミカルなんだけどちょっと怖い。

 おっさんなのに可愛らしいケンジを表現するため、ケンジの内面を理解した上で「憑依」し、可愛らしい動きを「計算」で付け加えているのではないだろうか。それが自然にできてしまうのが名優ということなのだろう。

 なお、原作ではケンジのケータイ(スマホではない)にシロさんから電話がかかってきたときの着メロはTMネットワークの「Get Wild」に設定されていた。これはケンジの理想のタイプが冴羽獠で、シロさんを冴羽獠と同一視しているから。着メロの設定がどうなっているかと思ったら、そこは普通でちょっと残念。

 今夜放送の6話には、ついに“ジルベール”こと航(磯村勇斗)が登場! 0時12分より。お見逃しなく。

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意外にサディスティックなケンジの一面も見えて来た イラスト/たけだあや

1話見どころ

2話見どころ

3話見どころ

4話見どころ

大山くまお

ライター。「文春野球ペナントレース2019」中日ドラゴンズ監督。企画・執筆した『ドアラドリル』シリーズ発売中。

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たけだあや

イラスト、粘土。京都府出身。

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