コラム

人間の心をザワザワさせるNetflix「リラックマとカオルさん」 カオルさんの性格は「闇」なのか?(1/2 ページ)

かわいいリラックマを見て癒やされる10分間……ではないのである!

advertisement

 Netflixでの配信開始以来、「リラックマとカオルさん」が人間の心をざわつかせ続けている。無理もない。かわいいリラックマのショートアニメを見て癒されよう……と思って第1話を再生すれば、その内容は「中小規模の商社に務めるアラサーの女性が友達と花見をやろうとして重箱に弁当を作るものの、友達たちからは次々にドタキャンの連絡が入り、ヤケクソ気味にリラックマたちと花見をする」というもの。まあ正味、キツい。


ライターしげるが恋愛や人間について考える連載、今回のお題は「リラックマとカオルさん」

 あらためて説明しておくと、「リラックマとカオルさん」はタイトルの通り、サンエックスのキャラクターであるリラックマが出てくるストップモーションアニメである。1話10分ちょっととコンパクトで見やすく、なるほどこれは仕事帰りとかに大人が見る癒やしアニメ的な内容なのかな……と思いきや、内容はかなりハードかつソリッド。落ち着いた雰囲気の中にギラリと悪意が光る内容は、脚本の荻上直子(「めがね」とか「かもめ食堂」とかの人ですね)の面目躍如だ。制作期間は2年、撮影期間は7カ月とのことで、そんなに時間をかけてこんなアニメを……という恐怖すら感じる。


メチャクチャ凝って作られているストップモーションアニメ

 このアニメ、主人公カオルさんまわりのディテールの詰まり方が邪悪である。細部が生々しい。まずカオルさんの見た目の問題というのがある。おれはあのカオルさんの撮影用パペットの顔を見たときに衝撃を受けた。具体的にいうと、口の左右から顔の横にかけての凹凸である。ほうれい線というほどはっきりしたものはまだ発生していないけど、頬の肉が確実に重力に負けつつあるあの凹凸……。正確かつ邪悪、職人芸的命中精度である。

advertisement

 さらに言えば、カオルさんの性格というのもいささか露悪的だ。基本的には真面目で勤めもマトモ、他人に対してそこまで強く出ることはしないものの、頭の中ではけっこういろいろ辛辣で、いざ幽霊に襲われそうになればリラックマを身代わりに差し出す多少の自分勝手さがあり、そして意外と性欲が強い……。なんとすさまじい人物設計だろうかと、おれは舌を巻いた。いや~、いるんでしょうね、こういう人。とにかく露悪の力で視聴者に爪痕を残してやろうという、強い意志を感じる。


カオルさんの“質感”がすごい

 でもまあ、だいたい誰だって人間はこんなもんでしょ……と、おれはかねがねそう思って見ていた。そもそも、カオルさんのやることといえばかわいいものである。ちょっと突飛(とっぴ)なことをやろうとしてリラックマから生えてきたキノコを食べようとしたり(ここでいきなり炭と七輪が出てくるのがカオルさんのカオルさんたるゆえんである)、いきなり結婚を決めた後輩がハワイ土産に買ってきたマカダミアナッツのチョコレートに文句を言ったりと、まあこの年の人間だったらそんなもんだわな、という範ちゅうに収まっていると思う。

 それに、ストーリー的にはちゃんと因果応報というか、調子に乗ったカオルさんにバチが当たるという作りになっている。性欲が暴走した結果68万円も借金を作ったり(それにしても生々しい額である)、マカダミアナッツのチョコレートに文句を言ったら結果的に自分だけハワイに行けなくなったりと、ちゃんとお灸を据えられている。カオルさんはいわばアラサー女性版野比のび太であり、「リラックマとカオルさん」はちょっぴりビターでシビアな「ドラえもん」と言えるだろう。

       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

記事ランキング

  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. 「懐かしい」 ハードオフで“30年前のPC”を購入→Windows 95をインストールしたら“驚きの結果”に!
  4. 「靴下屋」運営のタビオ、SNSアカウント炎上を受け「不適切投稿に関するお詫び」発表 「破れないストッキング」についてのやりとりが発端
  5. 毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
  6. 餓死寸前でうなり声を上げていた野犬を保護→“6年後の姿”が大きな話題に! さらに2年後の現在を飼い主に聞いた
  7. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  8. 放置された池でレアな魚を狙っていた親子に、想定外の事態 目にしたショッキングな光景に悲しむ声が続々
  9. “プラスチックのスプーン”を切ってどんどんつなげていくと…… 完成した“まさかのもの”が「傑作」と200万再生【海外】
  10. 脱北した女性たちが初めて“日本のお寿司”を食べたら…… 胸がつまる現実に考えさせられる 「泣いてしまった」「心打たれました」