レビュー

戦慄回「緊急取調室」7話 「申し訳なさで好きになってくれるかもしれないでしょ!?」大久保佳代子が生々しく演じた女社長の苦しみ(1/2 ページ)

「刑事さん、誰かを信じたことあるんだ?」大久保佳代子の圧倒的生々しさ。

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 5月30日に「緊急取調室」(テレビ朝日系)の第7話が放送された。今回のゲスト・大久保佳代子の起用を支持したい。

大久保佳代子の苦しみに対して、天海祐希とおじさんたちの反応の違いも興味深かった。 イラスト/納口龍司

第7話あらすじ、身代わりになれば自分と結婚してくれるかもしれない

 宝石販売会社の敏腕社長・伴佐知恵(大久保佳代子)が、別れた夫・坂本彰夫(尾崎右宗)を殺したと自首してきた。しかも、佐知恵は証拠として、遺体のインスタント写真まで持参。

 23歳も年下のイケメン販売員・若杉純(稲葉友)と再婚する予定だった佐知恵。ことあるごとにお金を脅し取りに来る坂本と縁を切ろうとしたところ、もみ合いになって殺してしまったと彼女は説明する。物証もそろっており、佐知恵の容疑は固まったも同然。真壁有希子(天海祐希)は、早々に所轄の警察署へ引き渡そうとするが、小石川春夫(小日向文世)は、事件を洗い直すべきだと異を唱える。年の差再婚もさることながら、若杉が殺人にまで目をつぶる心理がどうも納得できないというのだ。だが、若杉は佐知恵を愛していると断言した。

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 そんな中、キントリ・メンバーと飲みに出かけた取調官・玉垣松夫(塚地武雅)は、こぼれた焼酎を見て、証拠写真に残された矛盾に気付く。坂本の遺体写真に写っているオリーブオイルのたれ具合が不自然で、調べてみると、写真を撮ったのは殺害時刻よりも後であることが判明。犯行時刻を前倒しして調べ直すと、事件現場にいた若杉の目撃情報が得られた。

 佐知恵は若杉をかばっているのでは? と疑いを持つキントリ。有希子と小石川は、若杉が届けなかった佐知恵との婚姻届と別の女性との婚姻届を見せた。若杉に裏切られていたことを気付かせ、佐知恵から真実を引き出そうとしたのだ。

 佐知恵は若杉が坂本を殺したことも、共謀した坂本と若杉が金のために自分に近付いたことも知っていた。幼少期からの環境や裏切りによって人間不信に陥った彼女は、身代わりになることで若杉が自分と結婚してくれるかもしれないと、愛情欲しさの自首だったことを自供した。

7話の見どころ。大久保佳代子の演技のリアルさ、天海祐希の表情も深い イラスト/納口龍司

大久保佳代子がもたらした、同世代女優では不可能なリアル

 まずは、ゲスト・大久保佳代子に触れたい。今回の彼女の起用を支持したいのだ。

 成功した女実業家が若き婚約者を捕まえるという役柄は彼女にぴったり。同世代の女優からどうしてもにじみ出るであろう美貌は、おそらく説得力を失わせる。演技力だけでは補えないリアルをもたらしてくれたと思う。キャラとしての説得力が彼女にはあった。生々しかったのだ。

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 というか、演技も健闘していた。取調室での受け答えは淡々としており、どこか不自然なのだ。これが、回想シーンになると途端に感情あふれる演技へスイッチする。2つのシチュエーションを比較すれば、取調室で被疑者はウソをついているのだと視聴者は察することができる。営業トークのごとき冗舌で有希子を閉口させた佐知恵。この辺りに、かつてコールセンター勤務だった大久保佳代子のバックボーンがうかがえる。

 クライマックスにはインパクトがあった。愛を信じる女なのかと思いきや、「刑事さん、誰かを信じたことあるんだ? 私はありません、一度も」と言い切ったくだりである。

 6話は、園児をかばう保育士が主役だった。そして、今回の主役は若い婚約者をかばう年上彼女。でも、かばう理由は対照的だ。佐知恵が他者をかばった理由は、自分が愛されるため。

 「もし私が身代わりになれば、あいつ申し訳ないと思って本気で私を好きになってくれるかもしれないでしょ!?」

 もう、女社長というよりも大久保佳代子の叫びそのものに聞こえる

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 反面、実際の大久保はこんなドツボにはまらない強さがあるはず、という信頼感もある。役柄と本当にダブっていたら、重過ぎてちょっと見るに耐えない。そのギリギリの線を狙う、絶妙なキャスティングだった。だから、この役は磯野貴理子にはオファーできなかったと思う。

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