「東京独身男子」7話のアラフォー男性の苦闘を読み解く AK男子とは“結婚や幸せ”の固定観念に縛られた最後の世代なのか(1/2 ページ)
高橋一生の部屋はアラフォー男性の頭の中そのものだった。
太郎「岩倉さんと僕たちは、ズッ友だよ!」
6月1日放送のドラマ「東京独身男子」(テレビ朝日系)。AK男子(あえて結婚しない男子)たちの悩みは尽きず、そのせいで友情にひびが入り出した第7話。人生折り返し地点まで来ても、AK男子たちは仕事、恋愛、結婚でつまづいてしまう。
第7話あらすじ「変わらなくていい」と呼び寄せたものの……
AK男子・三好(斎藤工)は元妻との間に残っていた問題を解決し、その影響か「元気問題(男性更年期障害)」も改善し始めていた。岩倉(滝藤賢一)は、部下の透子(桜井ユキ)と父・和雄(小野武彦)と三人での同居生活をスタートさせた。
一方、太郎(高橋一生)は、自分が投資の提案をしていた電機メーカーへの融資を打ち切ると会社から告げられ、仕事のやり方に悩み始める。太郎のことを好きだったかずな(仲里依紗)には新しい男の気配がある。思うようにいかない状況を変えるために、外資系コンサルティング会社からのヘッドハンティングを受けるか悩むが、それも決断できない。
しかし、うまくいっているように見えていた三好と岩倉にも悩みがあった。三好は、経営している審美歯科医院が経営不振で、銀行からの融資を受けられるかどうかわからない状況だ。岩倉は、「変わらなくていい」と言って呼び寄せた透子と家族らしくなれないことに頭を悩ませる。
アラフォー男子を苦しめる「価値観アップデート」
事業を興したり結婚をしたり、女性と父親との同居を決めたり。人生で何か大切な決断をしたとしても、まだ人生は続くし悩みは生まれてくる。
透子「ご自分で歩いてください。私、お父さんを甘やかすつもりはありませんので」
歩くから肩を貸してくれという和雄に、透子は笑顔で言う。それを聞いて面食らう岩倉。三人での同居に対する不安が大きくなっていく。透子に「変わらなくていい」と言った手前、仕事をセーブしてほしいとも家事を分担したいとも言い出せない。岩倉は、自分の矛盾に悩む。
岩倉「そこがさ、俺の最大の矛盾点なんだよ。ぶっちゃけ、結婚してもしなくてもどっちでも良いと思ってる。そういう割り切った考えとは別に、親には一家団らん、昔ながらの幸せを味わってもらいたい。そういう旧価値観と、現価値観のうず潮が……!」
三好「俺たちって、結婚とはこういうものだとか幸せとは……、ってその影響をモロに受けてきた最後の世代ですよね」
まさに、現代のアラフォー男性の悩みそのもの。50代以上の男性は、価値観を変えなくても人生逃げきれる。20代、30代の若い世代は、共働きや家事分担なども当たり前で自然と新しい価値観をインストールできる環境にある。「結婚や幸せとはこういうものだ」と教えられてきたにもかかわらず、学んだことを自発的に意識して変えたり捨てたりしなければならない。その苦労を味わっているのがAK男子たちと同じアラフォー世代だ。
女性におけるフェミニズムのようにエンパワメントされる機会もなく、変化しなければ責められ、変化すれば同じ男性との仲がギクシャクする。AK男子たちのワチャワチャとした楽しい時間は結婚までのモラトリアム期間に見えていたが、変わっていく時代や環境に対して寄る辺ないアラフォー男性たちの自助努力の空間でもあった。
太郎ちゃんの部屋は、アラフォー男性の頭の中そのもの
岩倉は、父・和雄に厳しい透子の態度や生活の様子が気になり、二人で話す機会を作った。
岩倉「もちろん今までどおり働いてほしい。優秀な部下である君が誇らしい。でも、この家でちゃんと暮らしたい」
透子「お父さんにああ言ったのは、そのほうが自立支援になるって思ったから」
過去に、周りに世話をされていた祖父の身体が徐々に動かなくなっていく様子を見ていた透子。小さなことでも自分でできることはやったほうが、和雄の身体のためになると考えていた。そして仕事を頑張るのは、自分は器用ではないと感じていて、「優秀だ」と言ってくれる岩倉の期待に応えたいからだという気持ちも明かされる。
透子「だから、この生活もゆっくり時間をかけてやっていけたらって、甘えてました。ごめんなさい」
先に書いたように、価値観が変化する時代の中でアラフォー男性は迷うことが多い。AK男子たち三人でああだこうだと言っているあの太郎ちゃんの部屋の中は、アラフォー男性の脳内そのものなのかもしれない。
そして、その悩みは脳内でぐるぐると回しているだけでは解決しない。岩倉が透子に今の状況や自分の気持ちについて話したように、アウトプットが必要だ。
ドラマの序盤では、岩倉は親との同居も結婚も一人で悩んで一人で決めて、その結果、恋人に包丁をドーン! と突き立てられていた(まな板に)。透子に悩みや気持ちを打ち明ける姿に成長を感じる。その話を、家の中ではなくちゃんと落ち着いたバーに行ってする。そんな岩倉らしさを忘れていないバランスもすてきだった。
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