“学校のムダな仕事”がなくならないのにはワケがある 現役教師が語る「ブラック職場としての学校」(2/3 ページ)
「常に数十人の生徒とその親たちが納得するやり方を目指さないとならない」。
長時間労働の一因になっている“モンスターペアレント対策”
もう1つ時間が取られてる仕事といえば、モンペ(モンスターペアレント)対策かな。
―― あれって、どうやって対策してるの?
例えば、「あの子、授業のときにやる気がなかったなあ」と低い成績をつけて、親から「『いつ』『どんな風に』やる気がなかったのか、具体的に教えてください」とツッコミが入ったとするでしょ。答えられないとまずいことになるよね。
だから、「何月何日の授業でこういうことをしていた」と記録を取ったり、「提出物のやり方がこうだったら、こういう成績にする」と事前に細かいルールを決めておいたりする。
―― 恣意的じゃないと納得させられるように準備しておくわけか。
そういうこと。でも、成績管理が煩雑になるから、手間が掛かってしまうんだよ。
そもそもの話をすると、昔は成績が相対評価で「テストの点数が上位○%だったら『5』、次の○%は『4』……」という具合に決まってた。シンプルだし、教員としては楽だよね。
でも、これだと「クラスのほぼ全員が100点で、1人だけ99点」というとき、99点の生徒の成績は「1」になっちゃう。
また、テストの“点数だけ”を見てしまうと「苦手な教科を頑張って、点数が5点→50点に上がりました」という場合も、生徒の努力を評価してあげられない。他の子がみんな80点とか90点とかだと、「1」の成績をつけるしかない。
―― 相対評価は分かりやすいけど、評価方法としては欠点があるわけか。
そういうわけで、今は「観点別絶対評価」が使われてる。他の生徒との比較(相対)ではなく、その生徒が基準の点に達しているか(絶対)を、「この教科に興味・関心がある」「○○をする能力がある」「○○の理解がある」といった観点別に見ていく方法。
このためにはテストの他に、提出物や授業内の課題なども成績に反映する必要があって。「小テストで平均8点以上なら、この観点は『A』」「宿題を10回提出する機会があって、9回以上なら『A』」みたいにほぼ毎回の授業で、成績に関することを積み上げていかないとならない。
個々人の頑張りが反映される成績の決め方で、評価方法としては悪くないかもしれない。でも、こういう発想が行き過ぎた結果、「この子はテストのとき具合が悪くて、本当の実力が出せなかったんです。成績を上げてください」みたいな主張をする親が現れるようになったんだと思う。
この他にも、クラス内の係決め、班決めなどいろいろなことがあるなかで、教員は常に数十人の生徒とその親たちが納得するやり方を目指さないとならない。そうすると、仕事が増えていくんだよね……。
(続く)
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