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遺品整理ってどうやって頼めばいいの? 「孤独死のミニチュア」を作り続ける遺品整理人に聞く「現場」の話

いつ頼らなければならなくなるか、誰もわからない。

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※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 「孤独死が誰にとってもひとごとではないことを伝えたい」という思いから、自身が見てきた孤独死の現場を題材にしたミニチュア模型を作っている遺品整理人、小島美羽(こじま・みゆ)さん。2019年8月に出版した初の著書『時が止まった部屋 遺品整理人がミニチュアで伝える孤独死のはなし』(原書房)は、発売後2週間で重版がかかる大反響となりました。

 ねとらぼ編集部は、小島さんの働く遺品整理・特殊清掃の会社「遺品整理クリーンサービス」を訪れ、直接お話をうかがいました。連続インタビュー第2回目は、なかなか知る機会のない特殊清掃、遺品整理の現場に迫ります。

小島さんの作ったミニチュア
小島美羽さん

この企画は全3本の連載記事です。

第1回

【試し読みあり】遺品整理から、日本全体が見えてくる 「孤独死のミニチュア」を作り続ける遺品整理人はなぜこの道を選んだのか?(2019年9月21日公開)

第2回

遺品整理ってどうやって頼めばいいの? 「孤独死のミニチュア」を作り続ける遺品整理人に聞く「現場」の話(2019年9月22日公開)

第3回

オタクの孤独死、現場に取り残されるペット…… 「孤独死のミニチュア」を作り続ける遺品整理人に聞く「終活」(2019年9月23日公開)

『時が止まった部屋』(書影はAmazonから)

実際に遺品整理を依頼してくれた読者も

――『時が止まった部屋』の反応はもう入ってきましたか。

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 ちらほら見聞きしています! 結構みなさんいいことを言ってくださってて、ああよかったな、と安心しました。

――印象に残っている反応はありますか。

 エンディング産業展(※1)にいらした女性の方で、直接お話をして、その場で本も買ってくださった方がいました。その時は「心の準備をしてから読みます」っておっしゃっていて、後日Amazonにレビューを書いてくださったんですけど、「読んで衝撃を受けた」「まだ整理がつかない」と書いてくださいました。

 テレビや週刊誌、新聞とかにも載せてもらったのですが、それを見て(遺品整理クリーンサービスに)頼んできてくださる方もいました。見ていただいてるんだな、と思います。

 ※1……エンディング産業展とは、葬儀社や墓石屋など、人生のエンディングに関連した企業が集まる産業展。年に1度開催される。小島さんは3年前からエンディング産業展でミニチュアを発表している。

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自殺した若い男性の部屋
部屋には死生観にまつわる本と遺書が残されている

遺品整理ってどうやって頼めばいいの?

――遺品整理をどこに頼むかは、専門の口コミサイトがあるわけではないですし、難しいですよね。そういうときに小島さんの活動を知ったら「こんなこと考えてる人がいるならお願いしたい」と思うんじゃないかと思います。

 そうですよね。急に遺品整理を頼もうとしても、普通はどこがいいのかわからないですよね……。お客様からも、「相見積もりしたけど、(小島さんの会社とは)別の会社に見積もりを頼んだら怪しいところだったからやめた」という話はよく聞きます。

――遺品整理を依頼する場合、どういうプロセスになるんでしょうか。

 まずお電話ですね。最初に特殊清掃なのか遺品整理なのかごみ屋敷なのかをおうかがいして、作業日の1週間前に現地で見積もりを取ります。お写真を撮って、「これぐらいの量ならトラックで」「人数は何人で」などの条件を判断します。実際に依頼されたら、従業員を集めて作業の分担をして本番、という流れです。

――作業が終わったあとは?

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 作業中にお客様にその場にいていただくこともあるんですけど、「この時間に終わるので30分前ぐらいに来てください」と言っておでかけしてもらったり、鍵を預かって前日から作業してしまう場合もあります。

――遺品を処分するかどうかはどう決めているんですか。

 お見積りのときに残しておきたいものをあらかたお客様から聞いておくんです。契約書、写真、お金など、後から出てきて判断に迷ったものは残しておきます。それは立ち合いのときに「こういうの出てきたんですけどどうしますか?」と聞いて、いるいらないを確認していただいて、いらないものはこっちで処分したり、供養すべきものは供養したりしてますね。

――供養はどのようにしているんでしょうか。

 いつもお願いしているお寺さんがあって、そこにお焚き上げ供養を依頼しています。そのお寺さんでは、供養をすると「供養証明」というものを出してくださるので、遺族の方も「ちゃんと供養してもらえたんだ」とわかって安心できるようです。

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遺品の多い部屋
住人が亡くなる瞬間まで、生活は続いていた

特殊清掃/遺品整理の現場

――小島さんは現場ではどのような順番で作業しているんでしょうか。

 特殊清掃の場合は、私が最初に防護服と防毒マスクをして1人で入って、消毒を撒いちゃいます。防毒マスクというのは、ガスマスクみたいなものですね。夏場は脂汗でずり落ちてくるので、隙間から匂いが入らないようにぐっぐっと上げながらやるんですけど、結構苦しいです。

 それで、一番匂いがある……体液のある部分を最初に私が撤去して出して、他の従業員が安心して作業できるようにする、という流れですね。撒いた後に従業員が入ってきて、いるものいらないものを仕分けします。私も撒き終わったら道具を片付けたあとに仕分けに参戦します。

――体液のあるところは従業員みんなで作業するのかと想像していたんですけど、お1人で入っていくんですね。

 そうですね。とりあえず私が消毒作業をしてきたら、社長の仕切りでミーティングをします。私が現場の状況について報告をして、あとは社長が従業員に作業を割り振っていきます。

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――だいたい何人ぐらいで作業されているんですか。

 5、6人が多いです。量にもよりますが、一軒家だと7、8人になることもありますね。社員は12人なので、1日に複数件のご依頼を受けている日は、半々に分かれて作業をします。

風呂に入ったまま亡くなり、遺体が溶けてしまった現場

小島さんから広がったミニチュア制作の輪

――ミニチュアを作ってらっしゃる方は社内で何人いるんですか?

 4人ですね。社長も作っています。

――小島さんが作り始めてからほかの方も作り始めたんですか。

 そうです、それまで全く作ろうとしてなかったので。作り方を聞かれたら「これはこうするといいですよ」とか答えたりして、それぞれ工夫しながら作っています。私は主にYouTubeなどを参考にして作業しますね。

小島さんの作業道具。ミニチュアは主に会社で作っている

――ミニチュアに自分が見たものを落とし込んでいくときは、どういうことを考えてやっていますか。

 私は遺品整理の物件をいろいろ思い出しながら作るんですけど、作っている間は集中して作っているので、あんまり感情的には……(考えていることは)ないのかなと思うんですけど……伝えたいもの、核となるものはありますね。

――1つ1つのミニチュアに「こういうことを伝えたい」ってテーマを決めてから作ってるんですね。

 そうです。作り手によっても作ろうとしているものは違っているかなと思います。社長は1つの具体的な現場を再現したミニチュアを作っていて、私はいろいろな現場の要素が混じったミニチュアを作っています。

――今後作ろうと思っているミニチュアの構想はありますか。

 今ちょうど二世帯住宅のミニチュアを作っています。壁1枚隔てただけの二世帯住宅なのに、遺体が死後1週間発見されなかったお家があったんです。なぜそうなったのか考えたときに、家の構造もあると思うんですけど、(隣に住んでいる)義理の親と折り合いが悪いかったとか、あとは気を遣いすぎてあんまり関わらないようにしてるとか、いろんな理由があるな、と思って……。隣り合わせで暮らしていても、会話がなければ孤独死することはあるんです。隣に住んでるから大丈夫だろう、とは限らないんですよね。

 (続く)

新作ミニチュアに置く予定だという金魚の水槽

この企画は全3本の連載記事です。

第1回

【試し読みあり】遺品整理から、日本全体が見えてくる 「孤独死のミニチュア」を作り続ける遺品整理人はなぜこの道を選んだのか?(2019年9月21日公開)

第2回

遺品整理ってどうやって頼めばいいの? 「孤独死のミニチュア」を作り続ける遺品整理人に聞く「現場」の話(2019年9月22日公開)

第3回

オタクの孤独死、現場に取り残されるペット…… 「孤独死のミニチュア」を作り続ける遺品整理人に聞く「終活」(2019年9月23日公開)

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