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デートしたり手をつないだり恋人同士なことたくさんしたい「ハイスコアガール」14話 “小足コンフュ”にかける恋(1/2 ページ)

ビシャンモン対フォボスは7:3とかなんとか。

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(C)Rensuke Oshikiri/SQUARE ENIX

 ゲーセンで燃やした青春があった。ゲーセンで育った恋があった。格ゲーが盛り上がっていた90年代を舞台に、少年少女の成長を描くジュブナイル「ハイスコアガール」(原作アニメ。ゲームを愛した2人の少女と1人の少年の、エモーショナルな恋の物語。

 14話は、ついに訪れた日高小春と矢口春雄(ハルオ)の決闘回。小春が勝てば二人は付き合うことに。ハルオが勝てば小春は手を引くことに。どっちにしてもハルオは微妙な感じになりそうですが、そこはゲーマーです。彼は真剣に「勝負に勝つ」のみです。

「ヴァンパイアハンター」に見る二人のテクニック

 格闘ゲームでの試合シーンが大部分だった14話、どの試合も2人の個性がよく出た名試合でした。

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 まず「真サムライスピリッツ」。他の2つと比べて、一撃が重いタイプのゲームなので、じりじり動くのが特徴。余計な行動をしたら死ぬゲームです。

 ここでは小春の橘右京「残像踏み込み斬り」という突進技でハルオの不知火幻庵を転ばせた後、起き上がりに「秘剣ツバメ返し(空中で1236+斬り)」を当てています。

 「ツバメ返し」はそもそも空中でコマンドを入れて出す技です。小春がやっているのはバックステップで少し浮いている状態からの「ツバメ返し」。地上で「ツバメ返し」のコマンドを入れた後、即バックステップを入れてボタン(123644+斬り)。超低空で出せる上に、しゃがみガードで防げない中段技になるため、非常に厄介。このころは飛び道具も出ました。

 めちゃくちゃ強いのは間違いないんですが、いかんせん今と比べてコマンド入力がシビアなので、きっちり入れないと出せません。

 「ザ・キング・オブ・ファイターズ’95」は、小春が普段から使っている女性格闘家チーム(キング、ユリ・サカザキ、不知火舞)を使わず、強いキャラを選びました。オメガ・ルガールはとにかく攻めも守りも強く、ダメージも取れる。もっとも小春は、距離による対空の使い分けをしたり、コンボをきっちり決めたりと、相当練習はしていたからこそ勝てました。

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 その後の「烈風拳」「ジェノサイドカッター」を空振りし、一気に畳み掛けられてしまったのは、強キャラへの過信。持ちキャラでの試合見たいですね……。

 プレイヤーの性格とテクニックが画面のビジュアルとしてわかりやすいのは、3本目の「ヴァンパイアハンター」だと思います。2人がどう戦っていたのか追ってみます。

即死連携!(6巻) (C)CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

 まず小春が使っているのが、ロボット型のキャラクター「フォボス」。高性能なビームやボム、リーチの長い通常技を持つ遠距離型キャラです。なのでガチガチに攻め込まれると、しんどい。

 そこを小春はしのぎきって、即死コンボをきっちり決めています。フォボスは、しゃがみ弱キック(弱K)からゲージ技の「コンフュージョナー」がつながります。「コンフュージョナー」は当てた相手を空中に浮かせて、ガード不能にする技(浮いたまま立ち通常技は出ます)。そこからテクニックを駆使すれば、永久コンボに持っていくことが可能。

 もっともそう簡単につながるわけではなく、距離をはかってきっちりパターンを研究する必要があるので、非常にテクニカルです。しかも小春の場合「ファイナルガーディアン」「EXマイトランチャー」そして再度「コンフュージョナー」など、ゲージをもりもり使って殺しきっています。確殺のために下準備が必要です。

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小足を全部取られると泣きたくなる(6巻) (C)CAPCOM U.S.A., INC. ALL RIGHTS RESERVED. (C)CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

 ハルオのビシャモンは、刀部分の判定が強い攻め型のキャラクター。彼が見せたのは、小春が「しゃがみ弱K→コンフュ」狙いなのを見切った、ガードキャンセル「鬼炎斬」

 ガードキャンセルとはヴァンパイアシリーズのシステムで、ガード中一定のコマンドを入れると相手を跳ね返すように攻撃できるもの。とても強いんですが、例えば通常技で連続でガチガチ固めているときならまだしも、一瞬しか見えないしゃがみ弱Kを見切ってとっさに昇竜コマンド(423P)で、何度も取り続けるのは並の反応じゃない。読んだ上での格ゲーセンスのたまものです。

 ハルオもすごいんですが、小春も地上・空中で「リフレクトウォール」(同じくガードキャンセル技)を使用し、何度もビシャモンを跳ね返しています。壁際でガードキャンセルを使ってよろけさせて、そこからコンボを入れるというのはかなりのテクニシャン。

 ハルオは勝ちに行くための攻防の強いキャラ、小春はテクニカルなキャラ、大野は重量級の投げキャラを好んで使うのが、それぞれの性格にぴったり合っているのも見どころです。

知識とセンス

 格闘ゲームのみならずあらゆるゲームに言えることですが、プレイして勝つには、知識とセンスが必要になってきます。闇雲にやっていても勝てません。

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 小春は元々センスがよい方で、何も分からない状態でも技を出せるくらいの子でした。そこからさらにハルオに近づきたいと勉強を重ねた結果、周囲のゲーマーを圧倒する力を手に入れることに。

ある程度やりこむと、フレームはどうしても気になります(5巻) (C)CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

 二子玉フェリシアが小春に教えた知識の一つが、フレーム(F)。格闘ゲームの1Fは1/60秒。例えば「ヴァンパイアハンター」のフォボスの場合、しゃがみ弱キックの攻撃が出るまでが6F。ビシャモンがこれ以上のフレームの技(例・中パンチは8F)をだしていれば、フォボスのしゃがみ弱キックの方が発生が早い。といってもリーチの長さや当たり判定・やられ判定のサイズもあるので、早ければいいとも限らない。戻るまでのフレームや、ガードされた時のフレームも重要です。今までこれを勘でやって勝ち続けていたというのが小春のすごいところ。そして6F(0.1秒)をガードキャンセルするまでになったハルオはすごい。

これを見たくてゲーメスト買った人多いのでは(5巻)

 対戦格闘ゲームに欠かせなかった、有利不利を見極めるダイヤグラム。最近はあんまり作られなくなりましたが、ハルオや小春がプレイしていた当時は欠かせないデータの一つでした。

 この図の場合、左にある名前を先に選びます、てっぺんにいるのがビシャモン。ビシャモンがサスカッチを相手にした場合6:4、ちょっと有利という数値。5:5なら互角、9:1なら致命的な差がある、という数値表記です。

 逆を返せば、ダイヤグラムで不利な場合、どこかに弱点があるのが発見されていることになります。そこを埋められれば、勝機が見える。

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 「ヴァンパイアハンター」の場合、ビシャモンとフォボスは7:3なんて言われています。普通に戦うなら不利どころではない。ただしフォボスは「コンフュージョナー」からの即死コンボがある。小春はここに賭けました。

 あとは、熟知した2人のセンスの勝負。勝ったのは、しゃがみ弱Kを見切るセンスを手にしたハルオ。しかもその弱Kのガードキャンセル、大野から引き継いだもの。小春が成長したように、ハルオも成長していました。

ゲームを楽しむための発見

 今回小春は勝つために、ブレーキを踏むのを辞めました。

 その一つが「コンフュージョナー」からの即死コンボの解禁。相手からのヘイトを買いやすい技なこともあって、彼女は対戦台であまり使わなかったようです。その優しい思いを振り切ってコンフュに魂をかけ、ハルオに対して刃を向けました。

 格闘ゲームは相手と戦うだけあって、勝つ以外のことも考えてしまいます。この作品の場合、ハルオは第1話で待ちガイル(ソニックブームを撃った後、飛び込んでくるのを待ってしゃがみ大Pやサマーソルトキックで落とす)や投げハメ(弱Kをガードさせて投げる)を使用、大野を怒らせました。まあ勝ってもかっこよくはない。台パンされかねない。

 ハルオは最初から、勝つためには何でもする精神でした。一方小春はクリーンな戦い方をしていたので、今回始めてリミッターを外した状態。

 ここはゲーマーの意見が分かれるところだと思います。マナーは大事なのか。システム上できることなんだからやってもいいのか。かつてはゲーセンの貼り紙で「◯◯禁止」なんてのもありました。

 少なくとも今回は、小春は賭けるものが大きすぎたため、なりふり構いませんでした。優しい子です、頭をリセットして、プライドはかなぐり捨てました。

もう後ろにいたくない(5巻)

 かつてハルオがゲームをしていた時、彼女は後ろに座ってハルオを見ていて、ゲームを見ていたわけじゃなかった。でも今、彼女は隣に並びたい、と願いました。だったら同じではいられない。彼女なりの全力を尽くすしかない。

 その結果、彼女に真のゲーム愛が生まれます。

生まれた(6巻) (C)CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

 ハルオにはいつも心にガイルがいます。大野には常に心のザンギエフがいました。そして、小春には心のフォボスが誕生しました。

 恋愛面での勝ち負けはもちろん諦めていません。でも同じくらい、ゲームを好きになって、本気で勝ちたいと踏み込んだ。趣味がないと言っていた彼女が、1人のゲーマーとして歩み始めた瞬間です。

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