インタビュー

便利だがリスクもある“ググれば辞書が無料で引ける時代” 『大辞林』編集長インタビュー(2/3 ページ)

辞書作りの難しさ。

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“ネットで辞書が無料で引ける”ことの問題点

――― ねとらぼ読者から質問を募集したところ、「『コトバンク』『Weblio辞書』の『大辞林』が第4版にアップデートされる予定は?」というものが。これらのサイトでは無料利用できるようになっていますね

編集長:第4版へのアップデートは未定です。辞書を使ってもらえるのはとてもありがたいことなのですが、基本的に“増補部分は有料で利用していただく”という方針になっています。

ながさわ:第3版、第4版が併存する形になりませんか?

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編集長:そこは私も悩ましいところなんですが……“辞書は無料提供していいものなのか”という問題があって。

――― ゲーム、マンガなどでも現れている、コンテンツを無料配信するビジネスモデルの問題ですね。辞書の場合は「書籍版だけ → 複数の辞書が使える電子辞書の登場 → ネットでの無料利用が可能に」と変化してきました

編集長:さまざまな媒体で利用できるのはユーザーにとって良いことだと思いますし、『大辞林』は第3版のころからそういった取り組みを続けています。でも、それによって辞書を提供する側が苦しくなってしまうと、かえってユーザーにとって悪いことになるかもしれないという懸念もあります。

 現状までは分かりませんが、数年前にこんな話を聞いたことがあります。韓国では国の機関が辞書を制作し、無料提供が行われた結果、出版社は辞書づくりをやめてしまったそうです。しかし、国の辞書がその後十分にメンテナンスされるわけでもなく、辞書が厳しい状況に陥ってしまった、と。

ながさわ:原因は違いますが、それも“辞書の無料化”に伴う変化ですね。

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編集長:日本でも無料で使えるものが幅を利かせると収益が上がらなくなり、出版社が辞書が作れなくなってしまうかもしれません。もちろん、われわれもそうならないように頑張ってはいるんですけど。

――― もしも辞書作りで利益が出ない時代がやってきたら、どうなるのでしょうか

編集長:可能性としてはいろいろ考えられると思います。例えば、「Wikipediaのように、ボランティアが制作するようになる」とか。情報が正確ではないのではないかという批判もありますけど、多くの人々の情報源になっていることは間違いありません。

 ただ、辞書を作るためには統制された編集方針、それに沿って作り上げる体制が必要で、ボランティアにそこまでの責任を求めるのは難しいのでは、と思うところもあります。品質を保つには、お金を払う利用者とのある種の緊張関係がないといけないんじゃないか、と。

 あとは「発達した人工知能が、勝手に辞書を作ってくれる未来」なんてのも想像できますが。

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――― 人工知能の話題は「いつか実現するかもしれないけど、具体的にいつかが見えにくい」という側面がありますからね

編集長:今の段階で、私が言えることは1つだけ。「紙でも電子でも、なるべくお金を出して辞書を使ってもらって、それに応える辞書づくりができるようにしたい」ということです。

(続く)

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