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「まず自分がスライムを倒せることを確認」 漫画家ナカシマ723さん これから個人で始めたい人へのアドバイス(4/4 ページ)

コミカライズ権を自ら取得し、単行本も自費出版し……でも「特別、私だけがお金を積んだからできたことっていうことは全然ない」という漫画家、ナカシマ723さん。これから個人で活動を始めたい人へのアドバイスも。

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※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

――ナカシマさんは、きっちりプロデュースなさっていますけど、もしうまく行かなかったら、と怖くなることはありませんか?

 いやでもTwitterは、すぐ反応が出ますから。やっぱSNSでネタイラストを描いてると「あ、これ滑ったな」みたいなことが、たまにはやっぱりあるんですよ。それはどうしてもみんなあると思うんです。しかしそれは次にフィードバックしていけばいいことですし。

 なんだったら見直して、「これはちょっとやな感じがする絵だな」みたいに思ったら、すっと消しちゃう。そういうものは燃えないうちに消しましょうと。

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――炎上マーケティングみたいなものも有効ならアリでしょうけど、創作者の人はそういう毒や闇をリアルに出すの、あまり狙わないほうがいいよなと思います。ナカシマさんの場合は、相手が無断転載のまとめブログで……

 相手が燃えてますもんね。こっちから火をつけたわけですけど。

――出版社の役割として「成功の再配分」。ぶっちゃけ「誰かが大ヒットを出してくれているおかげで、自分の本も出る」というところがあると思います。

 しかしそのために細かい企画のハンドリングは出来なかったりする。それも無理はない。しかし一方、ナカシマさんのように、きっちり自分のコンテンツを自分で動かしていくのであれば、結果に納得も行きますね。

 一度、打ち切られたストーリーを続けたり、商業出版の規模ではできない企画もやれたりいろんな可能性がありそうです。案外、「自分は絵に専念したい」というタイプのマンガ家さんもいたりしますから、ナカシマさんのように原作者と組むのもアリですね。

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 そうですね。私の場合、テキストで契約書をつくって「半年間、完全に連載が止まったら、原著者のロケット商会さんは、メディアミックスを他のマンガ家に自由に依頼してもいい」などと取り決めてやっています。他にも、たとえばネーム原作の人と、作画の人が組んでもいいと思う。自分も今は「勇者のクズ」に集中しないといけないですが、コミカライズしてみたいなと思う作品はあります。

――テキストの人もできることがあるし、文字もマンガも描かないがプロデューサータイプの人は、企画を立てたりマーケティングを考えたり、いろんなことができそうですね。

 みんなできますよ。印刷をして本を作ることも、Amazonとの取引もそうですけど、私がやっていることで、私じゃないとできなかったことは、ないんで。作品の内容以外のことで、たとえば流通経路の確保とか、売り方の考え方とかでは、なにか特別な人脈があったからとか、特別、私だけがお金を積んだからできたことっていうことは、全然ないんです。みんなできます。

 ただ、自分の場合、まとめサイトに画像を無断転載されたことで、最初にまとまったお金を用意できたのはやっぱりよかったです。丸々マンガを単行本1冊分、描き切るまで完全にほぼ他のことをしなくていい環境を作ることができた。この点が、これからやって行く人にとってもたぶん一番難しいと思います。

――コミカライズが実現して、収益も上がった。原作となったロケット商会さんの反応はいかがだったでしょう?

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 とても喜んでくれました。私も完全に勝手に描くわけにもいかないし、誰かに見てもらったほうがいい。だからネームができた時点で、ロケット商会さんにも見せているのですが、1巻分の内容で修正が入ったところは無くて、自由にやらせていただいています。

 第一線のベテランマンガ家と、新人のなにが一番違うのか? 「客観視するスキルだ」という人がいて、自分もそうかもしれないと思います。

 自分の作ったものは、自分で見て面白いに決まってます。だから客観視することは意外と難しく、そこに編集者の役割があるといってもいい。

 しかし自分でコンテンツを動かすとなると、編集者はいない。だからこそフォロワーが大事。フォロワーも数が少ないと、その反応はやっぱり個人の好みに左右されるでしょうが、ある程度の数になると違ってくる。そうした反応と「対話」してものを作れるのが、ナカシマさんのような今どきのマンガ家なのでしょう。

 しかしだからといって、自分の「主観」がなおざりかというと、そうではなさそうです。「主人公をかっこよく描きたい」とこだわって開きを逆にしたために、少ないながらも「どうしても馴染めない」という反応も。

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 考えてみれば「逆開き」は、商業出版だとなかなかやれない、めちゃくちゃ大きな冒険だと思います。しかし今の時代、法人のマーケティング的な判断よりも「むしろそういう作者のこだわりを信じる」という読者も多いでしょう。個人と個人、個人と法人、いろんな発信がこれからも出てくることだろうと思います。

堀田純司 大阪生まれ。作家。主な著書に「僕とツンデレとハイデガー」「オッサンフォー」、シナリオを担当した「まんがでわかる妻のトリセツ」(以上講談社)、「メジャーを生み出す マーケティングを超えるクリエーター」(KADOKAWA)、編著に「ガンダムUC証言集」(KADOKAWA)などがある。日本漫画家協会員。Twitter @h_taj

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