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今注目の「IR」……日本に必要なのか? 外国のIRに勝てるのか?

増え続ける訪日外国人旅行者。それでもIRは必要?

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12月31日、経済ジャーナリストの渋谷和宏がニッポン放送「報道スペシャル 日本初上陸! IRってナニ?」(出演:ジャーナリスト・須田慎一郎/新行市佳アナウンサー)に出演。2020年代には国内で最大3か所に誕生する予定の『IR=統合型リゾート施設』について分析、解説した。


世界で最も成功したIRと言われるシンガポールのホテル『マリーナベイ・サンズ』

増え続ける訪日外国人旅行者、それでもIRって必要か?

新行)2019年上半期の外国人旅行者は前年比4.6%増の1663万3600人で、半期として過去最高を記録した。「わざわざIRをつくる必要ないのでは」という声もあります。

渋谷)どんどん訪日外国人旅行者は増えているのですが、本当に来て欲しいエリアに来ているかと言うと、必ずしもそうとは言えない部分があります。多くの外国人旅行者は「ゴールデンルート」という東京―大阪を拠点にして、京都で寺社をめぐって、富士山や箱根に立ち寄るというのがほとんどなのですよね。その結果としてとにかく外国人が押し寄せてしまって、京都だとホテルに泊まれなかったり、あるいは路線バスが外国人だらけになってしまって、本当に必要としている地域のお年寄りが座れなかったりという「オーバーツーリズム」問題も出てきているのです。IRをつくることで、そういった「ゴールデンルート」以外のエリアに直接外国人旅行者に来て貰うという「ダイレクトインバウンド」が実現できます。もう1つは、MICEなどの国際会議でやって来る外国人旅行者の1人当たりの旅行消費額は33万7000円と、一般の外国人旅行者15万3000円の倍もあるのです。つまり、1人当たりの経済波及効果が非常に大きいことから、IRも必要なのではないかという位置付けです。

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須田)いま、外国人観光客が自然体に右肩上がりで増えているように見えます。あまり努力もしないで増えてはきたけれど、今後を考えると頭打ちになってきますよね。

渋谷)例えば、東京や大阪だとキャパシティに限りがありますよね。これ以上無尽蔵に数を増やすわけにはいきません。それから、外国人旅行者が増えている大きな前提として、円安があるのです。為替が1ドル90円や80円になった場合、日本が割高になってしまいます。須田さんが右肩上がりとおっしゃいましたが、実はこれは自然体ではないのです。環境にめぐまれているということがあるので、これにあぐらをかけない状況があります。


IR誘致先を想定している山下ふ頭=2019年8月27日 横浜市 写真提供:産経新聞社

新行)「ダイレクトインバウンド」という言葉が出てきましたが、IRを地方につくったとして、IRのなかにいろいろな施設があるということはその施設だけで完結してしまって、せっかく地方にIRをつくったとしても、地元にまでお金が回っていくのかというところは疑問に思うのですが。

渋谷)もっともな疑問ですよね。「IR実施法」という法律では、IRに送客機能施設をつくることを設けているのです。ですから、IRから周辺の観光地に行って貰う動機付けをするような。例えば、展示場があって、そのエリアの観光施設が写真で説明されていて「あそこへ行ってみようかな」とIRに来た人が思えるような施設を設けて、IRのなかだけで完結しないようにする機能を設けることです。昔は、温泉地に大きなホテルができるとみんなそこから出ませんでした。他が寂れてしまうことがないようにIRに送客機能を持たせる。言ってみれば、日本の魅力を伝えるショーケース機能を持たせようとしているので、なんとかそこは食い止められると期待しています。

新行)そういった送客機能施設がつくことによって、地元の人たちも楽しんで貰うためのアイデアを出し合って、活性化しますよね。

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渋谷)逆に送客機能がないとIRから一歩も出ないことになってしまうので、ここは重要なポイントだと思います。


『マリーナベイ・サンズ』の屋上プール『インフィニティプール』

外国のIRに勝てるのか?

新行)シンガポールやマカオのIRといった、すでに成功しているIRがあります。後からできる日本のIRに勝ち目はあるのでしょうか?

渋谷)特にシンガポールのマリーナベイ・サンズとリゾート・ワールド・セントーサはすごい競争力で世界的に有名ですよね。そこにどう勝っていくかというのは大きなポイントになると思います。それを実現するための必要条件は3つだと思います。1つは「日本らしさ」をどう出すか。そのときの日本らしさですが、かつての“富士山”“芸者”ということだけではなく、外国人が日本らしさをどう評価しているのか、外国人の視点というフィルターを入れたらいいのではないかと思うのです。例えば、いま外国人の観光客に人気のスポットとして、渋谷のスクランブル交差点がありますよね。たくさんの人たちがぶつからないで四方八方から通り過ぎていくのが珍しいということで、たくさんの人たちが集まっているのですが、そんなことになるとは思いもしませんでしたよね。私たちにとっては当たり前の光景、当たり前のエリアのなかに外国人から見た面白いものがあるので、外国人の視点をどう入れていくのかがポイントだと思います。

2つ目は、「絶えざるリニューアル」です。シンガポールの2つのIRも7000億円を新規に追加して、拡充するのです。そういった絶えざる進化、リニューアルが必要なのですよね。それをどういう風に実現していくのかということが2つ目です。3つ目は、「コト消費」というものをどう取り込んでいくのかが大きいと思います。「コト消費」とは、ものを買ったり消費したりということではなく、時間を楽しむという賞日です。単にIRへ行ってギャンブルをするだけではなく、日本らしいエンターテインメントをどう楽しんで貰うのか、風光明媚な風景や食事をどう楽しんで貰うのかという「コト消費」を実現するためのいろいろなコンテンツですよね。これをどう継続的に打ち出せるのかがポイントになると思います。


『マリーナベイ・サンズ』のカジノで働く日本人ディーラー

新行)須田さんは海外のいろいろな場所へ行っていますけれど、海外のIRにはその国らしさや独自性があるものですか?

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須田)ないわけではないけれど、確かにシンガポールも成功しているし、マカオもそれなりに成功しています。韓国もいい方向へいっているのですが、点のカジノ、点のIRでそこからあまり人は移動しません。特に韓国は仁川空港に降り立って、空港とカジノの往復で、ソウル市内へ入っていかない状況があります。「日本らしさ」「コト消費」を考えていくと、施設は中心にあるのだけれど、周辺地域も一体化して外国人観光客をおもてなししていこうという……実は、2025年の大阪万博も同じような発想を持っているのですよ。万博会場だけではなくて、道頓堀にも来て貰う、北新地にも来て貰うという仕掛け。突き詰めていくと、IR施設の外側にある日本のいろいろな文化、飲食、サービスも楽しんで貰えば、かなり上手くいくと思います。

渋谷)日本って多様性があって、観光資源は世界でも突出してめぐまれていると思うのです。風光明媚な自然があったり、先端的な都市があったり。歴史、四季があって多様ですよね。そういうなかでのIRなので、都市国家のなかでのシンガポールのIR以上の連携による波及効果を見出せるポテンシャルがあるのではないかと思います。

須田)そういった点で、渋谷さんは『「IR」はニッポンを救う!』(マガジンハウス)という本を出されているのですよ。そういった視点で考えないと、IR=カジノというイメージが定着しているのは悲しいですよね。

渋谷)3%以下なのですよね。IRはカジノをエンジンにして、そのお金で多様な施設を継続的に発展させていき、それを見なさんに楽しんで貰おうというエリアなのです。『「IR」はニッポンを救う!』というタイトル案が出てきたときに、言い過ぎじゃないかと私自身思ったのですが、今はこれでよかったと思います。


須田慎一郎 渋谷和宏 新行市佳アナウンサー

番組前半では、須田慎一郎によるIR入門編解説や、ニッポン放送・宮崎裕子記者によるシンガポールのIR取材レポートも行われた。

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ニッポン放送「報道スペシャル 日本初上陸! IRってナニ?」

FM93AM1242ニッポン放送 12月31日(火) 17:00~18:00

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