インタビュー

【ゲームの世界史】なぜ米国のゲーマーはRTA(リアルタイムアタック)で東日本大震災の支援活動ができたのか(1/3 ページ)

国内最大規模のRTAイベント「RTA in Japan」の主催者・もかさんに「海外におけるRTAの歴史」などを伺いました。

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 欧米に遅れながら、日本でも対戦型ゲームを競技のように楽しむeスポーツが普及してきた――。 ここ数年、こんな報道をよく目にするようになりました。その裏側で静かに、しかし、着実に盛り上がりを見せているのが“最速クリアを目指す”RTA(リアルタイムアタック)。もしもeスポーツを「ゲーム界の格闘技」と表現するなら、100メートル走、ハードル走などのように個人の記録を追求する「ゲーム界の陸上競技」と例えられるかもしれません。

 今回は、国内最大規模のRTAイベント「RTA in Japan」の主催者・もかさんに、「海外におけるRTAの歴史」「世界的に有名な日本のRTAプレイヤー」などについて伺いました。

「この10年間で一番驚いたのは、蛍火氏の『スーパーメトロイド』」 世界的に有名な日本人RTAプレイヤー

―― RTAプレイヤーって世界でどれくらいいるんですか? 数万人くらい?

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 世界中のタイムアタック記録を集積している「speedrun.com」というWebサイトがあって、それを見ると……現在のプレイヤー数は28万人くらい(全世界)ですね。

2013年12月(2人)から右肩上がりで増えており、2020年1月には28万人を突破

 国別の人数までは分からないんですが、日本でもRTAは盛んで、海外からの評価も高いですよ。「日本のプレイヤーを海外のRTAイベントに呼ぶために、その渡航費を寄付で募るRTAイベント」が開かれたことがあるくらい。

 「RTA in Japan」を立ち上げたとき、「日本でこういうイベントが行われるのをずっと待っていた」と言われたことがあって。海外では「日本のRTAプレイヤーはなんかよく分からないけど、スゴいらしいぞ」という認識があったようです。

―― どういうことです?

 例えば、「ニコ生RTA Wiki」という国内の記録集積サイトがあって、日本に詳しい海外の方も見ているそうなんですが、ここはクリアタイムなどの記録が並んでいるばかりでプレイ動画がない。だから、「日本には明らかに俺たちより早い人がいるらしい。だけど、どうしたらこんな記録が出るのか分からない」と。

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 で、配信動画が出てきたら本当に早くて、ショックを受けたそうですね。

―― eスポーツではウメハラさんが国内外で知られていますが、RTAにもそのような“世界的な日本人RTAプレイヤー”はいるのでしょうか

 ゲームタイトルの壁を超えて“RTAの世界全体”で有名な日本人を1人挙げるなら、蛍火(ほたるび)さんでしょうか。

  2008年に「スーパーメトロイド」(SFC)の最速記録を出した人物なのですが、当時はその記録が革命的で。「Speed Demos Archive」(SDA)という海外の記録集積サイトが10周年を迎えた際、管理人が「この10年間で一番驚いたのは、蛍火氏の『スーパーメトロイド』」と名前を挙げたくらい。海外のRTAイベント関係者のあいだでもファンが多い方です。

「スーパーメトロイド」スピードランの歴史を解説する海外の動画。蛍火さんについての言及は5分30ごろから。「もっとも伝説的なスピードランナーの1人」として紹介されています
蛍火さんによるプレイは当時、にわかには信じられないほどハイレベルで、「SDA」では数週間にわたる検証作業が行われたという(その結果、不正は見つからず)

―― どこが革命的だったんですか?

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 そのころのタイムアタックは、最終セーブポイントに到達するまでの“ゲーム内時間”を測るもので、あるセーブポイントからその先のセーブポイントまでの区間を何度もやり直すのが当たり前でした。

 蛍火さんはそういう時代に、ストップウォッチで“実際の時間”を測定するRTAに近いやり方をしたんですね。つまり、他の人達が部分的なやり直しを繰り返して築き上げてきた記録を、ゲーム開始からクリアまでぶっ通しでプレイして塗り替えてしまったわけです。

 一度、ご本人に「あの記録、どうやって出したんですか?」と聞いたことがあるのですが、「大したことはしていない」「TASのプレイ方法を参考にしただけ」と話していました。

―― 「TASを参考にしただけ」って生身の人間が言うの、十分大したことだと思うんですが……

※TAS:Tool Assisted Speedrun/Superplayの略。エミュレータなどのツールを使い、ゲームの実行速度をスローにするなどして、スゴいプレイをすること。一般的には“人間には不可能なスゴいプレイを実現する手法”として知られる

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