「ハスラーズ」を漫画でレビュー 「女の敵は女」じゃない、ド直球シスターフッド映画(2/2 ページ)
実際の事件を映画化。
一番大変な思いをするのは、社会の“下層”にいる人々
ITバブルもありそれまでずっと景気がよかったアメリカにとって、リーマンショックの衝撃は甚大なものでした。
リーマンショックの原因のひとつに、金融商品がどんどん複雑で不透明になっていったことがあります。銀行に借りたお金を証券会社の債券にして、ローンに加えほかの証券などさまざまなものをごちゃ混ぜにし、「これはリスクを分散させたから大丈夫ですよ」と売り出していました。
リスクを分散させたこのローンは「夢の商品」と呼ばれ、これまでお金を借りられなかった貧しい人でもお金を借りられるようになり、最初は非常に評価されました。けれども、どんどん売れていくから大丈夫だろうと、お金を返せない人にも節操なく貸していった結果、最終的には回収できなくなり、破たんしてしまいました。
複雑だからリスクが分散できると思いきや、そのせいでリスクを把握できなかったのです。誰に責任があるのかもわからず、誰も責任を取っていません。上層部は給料が減ったといってもたかが知れているので、結局、一番大変な思いをしたのは下の立場にいる人間です。
「ハスラーズ」の彼女たちも、誰を攻撃すればいいかわからなくなっていました。これは、リーマンショックの複雑さと不透明さの現れでもあるのではないでしょうか。
リーマンショックの日本への影響は、アメリカほどのインパクトがあったわけではないので、あまり印象にない人もいるかもしれません(リーマンショックのあおりを受け就職活動が散々だった筆者は苦々しい思いをしましたが……)。しかし、困ったときに助け合う女の友情や自分の人生に主体性を持ちたいというテーマは、普遍性を持って我々の胸を打つものとなっています。
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