インタビュー

何年も治らない“心の風邪”、「治る力」を感じるための自傷行為 エッセイマンガ『うつを甘くみてました』 作者インタビュー(1/3 ページ)

双極性障害の闘病生活を当事者/家族視点で描いたエッセイマンガシリーズ。本編を一部掲載

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 うつ状態と躁状態を繰り返す「双極性障害」。エッセイマンガ『うつを甘くみてました』『家族もうつを甘くみてました』(ぶんか社)は、10年超にわたる心の闘病体験を当事者/家族の2つの視点で描いたシリーズ作品。作者・ブリ猫。さんにうつと向き合うことの大変さ、周囲がサポートすることの難しさをインタビューしました。『うつ甘』『家族もうつ甘』本編も合わせて掲載します。

マンガ『うつを甘くみてました』『家族もうつを甘くみてました』とは

 「当時 私は美容の世界で華やかにピカピカした日々を 過ごしていました」「ところがある日…それは突然やってきました」(『うつを甘くみてました』冒頭より)

 ブリ猫。さんは夫の浮気発覚後、心療内科でうつ病と診断(その後、双極性障害II型に変わる)。2017年から、その壮絶な闘病の日々をPixiv上にマンガとして投稿するようになり、2018年、それを書籍化した『うつを甘くみてました』が刊行。

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 続編となる『家族もうつを甘くみてました』(2020年刊行)は両親へのインタビューを行い、1作目『うつ甘』の出来事を“見守ってきた側の視点”で振り返った作品。双極性障害という1つの体験を2つのマンガ、2つの角度で捉え、「当事者/その周囲の人が感じる、心の病気に向き合う難しさ」を描いています。

作者:ブリ猫。(Twitter:@bnyan42

 東京都出身。元・美容関係店舗経営者。34歳の時に、夫の浮気がきっかけでうつ病を発症。その後、『双極性障害II型』と診断される。現在も闘病中。二児の母であり、3匹の猫飼いでもある。

『うつ甘』 #生まれて初めての心療内科

何年たっても治らない“心の風邪”

―― 初めて心療内科に行ったときは、どんな状況でしたか?

ブリ猫。さん(以下、ブリ猫。):作中にある通り、心療内科の先生への第一声は「助けてください」でした。

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 10数年前、私は子どもを外に預けながら、美容関係の会社を経営。旦那さん(すでに離婚)の仕事がちょっと特殊であまり家にいなかったので、私は乳飲み子のワンオペ育児をしながら働いているような状態でした。

 そのなかで、旦那さんが浮気していることが分かって。せめて話し合いの場が持てればよかったのですが、全て拒絶されてしまい……というのがことの始まりです。

 仕事中も帰宅後も、その浮気のことで頭がいっぱいで眠れない。旦那さんの浮気相手が、私も知っている人物だったこともあって人間不信。もう外に行くのも怖い。自傷行為もしていましたし、「我が子を手にかけて自分も死のう……」というくらい追い込まれていました。

―― 作中では予期不安、摂食障害、幻聴といった症状もあった、と書かれていますね

ブリ猫。:さらに身体にも症状が出ていたのですが、当初は「うつかもしれない」という発想が頭になく、原因が全く分からず困っていました。背中の痛みを何とかしたくてマッサージを受け続けていたら、疲労骨折してしまったくらい。

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 とにかく、この“痛い”“苦しい”を肯定してくれるところを探していましたね。心療内科に行ったきっかけは……たまたまネット上で「心の風邪」みたいな話を見掛けたことだったかなあ。

―― うつ病の代名詞のように使われていた言葉ですね

ブリ猫。:初めて行った心療内科の院内パンフレットにも同様のことが書かれていて、「これは心の風邪なのかあ。じゃあ、1~2週間もすれば良くなるかな」と言われた通りに薬を飲んでいました。でも、全く治る気がしない、という。

 処方されていた薬は“混乱した頭を混乱させないようにしているだけ”だったんですよね。飲むと思考停止できて、ツラいことを考えずに済む。でも、薬が切れると再び考え始めてしまう。だから、また飲む。確かに楽にはなるんですが、周囲からはボーッとしているようにしか見えないんですね。

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