インタビュー

何年も治らない“心の風邪”、「治る力」を感じるための自傷行為 エッセイマンガ『うつを甘くみてました』 作者インタビュー(3/3 ページ)

双極性障害の闘病生活を当事者/家族視点で描いたエッセイマンガシリーズ。本編を一部掲載

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『うつ甘』 #自傷しないではいられない理由

「自分にも治る力がある」と感じるための自傷行為

―― 作中でも描かれていますが、自傷行為をする心理とは、どのようなものですか?

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ブリ猫。:逆に聞いてみたいんですが、どのようなものだと思いますか?

―― そうですね……。「自分には分からないもの」として受け止めてしまっている節があるかもしれません

『うつ甘』担当編集者(以下、担当編集):痛そうだから、どうしてそういう行動を選ぶのか理解するのが難しいと思う。

ブリ猫。:行動を“選ぶ”という感覚はなかったかなあ……。「頭が痛いから頭痛薬を飲む」みたいな感じ。

 自傷行為をしていた理由の1つに、“自分にも治る力があることを感じたい”という気持ちがあったと思います。

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 すでに話した通り、薬を飲んでも治らなかったんですよね。病院で「良くなりたいんです」と言うと薬が増える。でも、改善はしない。余計に頭がボーッとしちゃう……。そんな悪循環に入ってしまっても、体の傷は時間がたてば治っていく。その過程を見て、「自分にも治癒力がある」という自信が持ちたかったんです。

 また、以前、他の自傷行為経験者さんの話で共感したのは“生きている実感が得られる”。踏み込んだ説明をするとアレなんですが、その方は私よりも自傷行為が進んでいて、「切って、自分の中身や体の反応を見ていると、生きているということが感じられるよね」と話していました。

―― そこまでしないと生きている実感が得られないものなんですか?

ブリ猫。:私もうつで薬漬けになっているときは、もはや死んだような状態だったんですよね。ご飯を食べても味は分からないし、時間概念も分からないし、とにかく頭がボーッとするし……。

 もう1つ言うと「自傷行為以外に、“生きている”を実感する方法が分からなかった」というのもあると思います。

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―― “生きている”を実感する方法……言われてみると確かに分かりませんね。生きていることが当たり前過ぎて

担当編集:「呼吸の仕方を考える」のような話。

ブリ猫。:「私はどうやって生きていたんだっけ」みたいなことを考えざるを得なくなるのが、うつなんだと思います。

 昔、自傷行為をしている若い子に「ダメだよ」と声掛けしていたことがあるんですが、自分も同様の経験をした今になって「あの子たちはどんな気持ちで、そういうことをしていたのか」と考えると胸が詰まります。

―― その人たちにもきっと、そこまでしなければいけない理由があったんでしょうね

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ブリ猫。それを否定するって……。いけないことだと分かっているんですよ、本人たちも。

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