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「新型コロナを前に、救われる人と救われない人がいるのはおかしい」――「SaveOurLife」会見で示された各業界の窮状

会見の内容を要約してお伝えします。

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 5月7日、COVID-19(新型コロナウイルス)の影響下においてすべての人の仕事と生活を守る運動「SaveOurLife」の記者会見が行われました。代議士、文化施設運営者、医療従事者、ナイトクラブ関係者などが登壇し、現状の報告と政府に対応の要求を行いました。

 この記者会見の内容をダイジェストでご紹介します。

会見の会場

代議士から

小池晃参議院議員

 代議士は逢坂誠二衆議院議員(立憲民主党)、安藤裕衆議院議員(自民党)、小池晃参議院議員(共産党)、福島瑞穂参議院議員(社民党)が登壇及びリモート出演しました。なお機材の都合で配信に遅れがあり、記者は安藤議員の発言の途中から視聴しています。

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 安藤議員からは持続化給付金の大幅な拡充が提案され、小池議員もそれに賛同しました。持続化給付金とは国が中小企業や個人事業者に対して最大200万円を給付する制度で、前年同月比で売り上げが50%以上減少している事業者を対象としています。安藤議員はこの50%という線引きについて「半額減らないと給付されないのは厳しすぎる」と批判しました。

 小池議員は「コロナの事態を通じてこの社会の歪みがあらわになった。医療機関を追い詰め、保健所の数を半分に削り、海外の生産拠点に依存し、文化を金儲けの対象としか見ない脆弱な経済を築いてきた」と、これまでの政策を批判し、文化や芸術の擁護を訴えました。

 福島議員からは学生やフリーランスなどの経済支援について言及し、第二次補正予算の提案を急ぎ行うことを述べました。

支援団体

ホームレス支援

 ホームレス支援を30年以上行っているNPO団体「抱樸」の奥田知志さんは、「新型コロナウイルスは新型とは言うが、今まであった社会の脆弱性が拡大しながら露呈しているのを見ている」と述べました。現在団体では、支援つきの住宅を支給するためのクラウドファンディングを実施しています。

入国管理局収容者支援

 入国管理局問題について取り組んでいる有志団体「FREEUSHIKU」の春日空さんは、10万円一律給付の対象から除外されている仮放免者について給付対象に含めるよう訴えました。日本は難民認定の関門が極めて厳しく、正規の滞在資格を得られずに日本で過ごしている人や入国管理局に収容されたまま過ごしている人が多くいます。

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 さらに春日さんは、正規の滞在資格を持たない人を収容している入国管理局の収容所における感染リスクの高さを指摘し、そもそも収容という行為自体を問い直すべきではないかと提言しています。

文化施設運営の立場から

クラブ

 clubasiaの店長である鈴木将さんは渋谷でクラブ4店舗を運営していますが、3月27日からいずれも営業を自粛しているといいます。現在4店舗のうち、clubasia以外の3店舗は閉店が決定しました。

 鈴木さんは閉店について「アーティスト、イベント主催者、お客さんのための場所を守れなかった。自分自身やスタッフも戸惑っている」と心境を述べました。大きな負担になっているのは家賃をはじめとする固定費であり、一律ではなく一物件ごとに対応した家賃補償の必要性を訴えました。

映画館

 渋谷のミニシアター・ユーロスペースの北條誠人さんは、現在SAVE the CINEMAというプロジェクトを立ち上げ、クラウドファンディングを行っています。

 ユーロスペースはclubasiaの隣に位置しており、このままでは街のカルチャーが消える恐れがあると危惧を示しました。ユーロスぺ―スは3月から5月にかけて実質3カ月間の休業を余儀なくされており、前年度と比較して売り上げが9割減と、経営は大変厳しい状況です。政府に対しては固定費の補償とともに、新型コロナウイルス収束後の集客回復の支援を求めました。

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演劇

 劇団TRASHMASTERSの劇作家である中津留章仁さんが登壇し、演劇業界の現状を説明しました。演劇に関しては、公共の劇場があるためにあらゆる発表の場所が消えてしまう事態は避けられているものの、民間の劇場や劇団は極めて厳しい状況にあり、「名前は言えないが、びっくりするような大手の劇団も潰れかけている」「持続化給付金を利用するように言われたが、小さい劇団でも900万円の損失を抱えているようなところもあり、どうにもならない」といいます。劇場・劇団双方への固定費の援助と演劇製作費の援助を要求しました。

教育・医療・福祉

児童のケア

 仙台市で障害児の通所支援事業を行っている佐伯秀行さんは、国からの開業要請を受けて事業所を開いてはいるものの、同時に外出自粛要請に応じて利用者の足が遠のいており、結果として売り上げが62%減ったことを明かしました。

 従業員の生活や利用者の安全を維持するためにも、開所要請に補償金を出すことや、みなし算定方式による給与の支払い、状況に応じた放課後等デイサービスの休業などの要望を表明しています。

 また、都内の保育園で働いている保育士の寺田さんからは、保育園が濃厚接触を避けられない場所であること、備品や感染対策のマニュアルも不足している現状について指摘がありました。簡単におもちゃをなめたり口をおさえずに咳をしたりする子どもたちを相手に、休園できないまま働いている現状に不安を感じているといいます。

非常勤講師

 3つの勤務先を持つという非常勤講師のNakayama Yoshikoさんは、大学の都合に振り回されている非常勤講師の立場の弱さについて指摘しました。突如勤務実態がないとして収入が絶たれたり、あるいはコマ数が減少したり突如休講となったりする場合があるといいます。あるいは大学の求めに応じてオンライン授業の準備を行うために、私費を費やすほかない状況があると述べました。

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医療従事者

 看護師コミュニティのFunnyからは、新型コロナウイルス以外の病棟にしわ寄せがきていること、医療従事者に対して保育などのバックアップがないこと、自粛したくてもできない立場である以上危険手当が必要であること、また防護具の不足について問題が示されました。

 看護師の多くは自らが感染を媒介する可能性におびえ、家族に接触しないために自腹でホテルに宿泊している人もいるといいます。

事業者

ナイトワーク

 水商売協会理事の甲賀香織さんは、これまで補償や融資の対象にされてこなかったナイトクラブ業界の在り方について言及しました。今回の一部の休業補償制度では初めてほかの企業と同様の扱いで補償・融資を受けられることになりますが、窓口レベルでそれが共有されているかは疑問が残ります。

 また、休業要請に耐え切れずに営業しているお店の存在と、生活に困って休業要請に従わないお店へアルバイトしに行ったまま引き抜かれてしまうキャストもいるといいます。 

 風俗店に関しては、セックスワーカーの妃 咲姫さんによると、現在は閉店している店が多いといいます。しかしながら経済的理由で営業せざるを得ない店は存在し、「セックスワーカーにはいろいろな目的で働いている人がいるので一概には言えないが、中にはお金に困って働いている方もいる。そのような状況で今働いている人は、みな生活と安全の葛藤のなかで仕事に従事している」と話しました。

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 また、働かざるを得ない状況にいるが自粛要請で家族が家にいるため出勤ができないというセックスワーカーや、店の休業に伴って後ろ盾のない個人営業に走ってしまうセックスワーカーがいることにも注意を促しています。いずれにしろ、セックスワーカーが安心して休業できる、あるいは安全に働ける環境が整っていない点が問題です。

美容院

 代官山で2店舗を経営しているという美容師のK.E.I.さんは、4月の売り上げが昨年比で67%下がったことを明かし、持続化給付金と雇用調整助成金では補填が間に合わないことを示しました。

 K.E.I.さんは昨年度の売り上げないしは売り上げ予想の70%を最低でも補償するよう訴えています。

飲食店

 居酒屋えるえふるを経営する會田洋平さんは独自に集計した飲食店経営者のアンケートを発表し、全体の約40%の飲食店が「3カ月もたない」と感じていることを示しました。一方で東京都が独自に設定している休業要請協力金を利用し、希望額が得られた場合、「3カ月もたない」と考える飲食店の割合は18%に減少するそうです。會田さんのデータからは、迅速な経済的支援が多くの飲食店の救済につながることがわかります。そして事業者に対する平等な支援として、個別の家賃補償が必要であることを強く訴えました。

 さらに自社ビルで飲食店を経営する池袋ロマンス通り商店会副会長の西形公一さんは、「今は国籍に関係なくみな苦しんでいる。ヘイトスピーチの問題もあるので、今こそフラットに手を携えて動くべきだと池袋から発信をしていく必要があると思っている」「財政規律を厳しくすることによって人命が失われるなら何の意味もない」と発言し、国籍関係なく大規模な給付金を行うよう求めました。

 また、アパレル業界やキックボクシングジムについても、極めて困難な経営状況にあることが提言されました。

総括

会見の総括を行うスガナミユウさん

 多くの事業者が口にしたのは、家賃を筆頭に光熱費などを含む固定費支出の負担の重さです。先が見えない状況において営業再開のめどが立たないまま固定費の支出を賄い続けるのは、極めて困難であると言えます。継続して生業の場を保っていくためには、現状の補償制度では不足しています。

 記者会見の最後にSaveOurLifeのスガナミユウさんは、語気を強めて「新型コロナウイルスの問題で、救われる人と救われない人が出てくるのは絶対におかしい」と述べ、国や自治体に向けて声を聞き情報を伝える努力を求め、社会に向けて「一丸にならなくていいので、大切な人や場所を思ってひとりひとり考えて動いていきましょう」と訴えました。収束までの継続的な支援を勝ち取るために、それぞれの立場から継続して問題提起を行い、声を可視化していくことが重要です。

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