連載

【M愛最終回】M愛はコロナ自粛中の“星”だった――「M 愛すべき人がいて」最終回を漫画でレビュー

伝説のMステを再現。

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 ドラマ「M 愛すべき人がいて」(テレビ朝日×ABEMA共同制作)が7月4日、最終回を迎えました。4月放送スタート、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響での放送中断を経て約3カ月間、一部インターネットを元気づけていた本作。最終回(7月4日放送)を振り返ります。

別れの道 選ぶふたり

 マサ(三浦翔平)はアユ(安斉かれん)との交際がバレた禊(みそぎ)として、解雇はされない代わりに別プロジェクトを大量に任されることに。毎日打ち合わせや会食に追われ、徐々にアユのチームから外れていきます。

 会えない間は置き手紙や手料理などで絆を深めていくように見えるマサとアユ。すれ違いながらもわりといい感じです。仕事の方も、マサは新プロジェクトも次々に成功させていき、まるですべてのことがうまくいっているかのように見えるよね……と思わされる出だしです。イライラする大浜社長(高嶋政伸)がヒゲをむしり秘書に止められる小ボケがかまされるなど、ここまではいつもの「M愛」。

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 しかしやはり最終回、だんだんと切ないゲージが上がっていきます。会えないことや約束をすっぽかされることより、マサの深酒を心配するアユ。酔って玄関で寝てしまったマサに寄り添って眠るアユには個人的にジーンときてしまいました。Mでこんな気持ちにさせられるなんて!

 マサとすれちがえばすれ違うほど歌詞に深みが増すアユ。だんだんと自己プロデュースもできるようになっていき、アーティストとして圧倒的成長を遂げます。そんなアユを見てマサは「アユは自分と幸せにならないほうがいいのでは?」とメンヘラモードになっていきます。え! まさかそれを理由に別れちゃうの?

 メンヘラをこじらせアユとの別れを決心したマサは、礼香(田中みな実)とキスをするところをアユに見せつけることで関係に終止符を打とうとします。視聴者の多くは初めて礼香に同情。ショックで立ち去るアユと号泣する礼香。ここの田中みな実の演技は最高にすばらしかったです。ここまで散々笑わされてきたのに、最後の最後で泣かせにくるなんてずるいぞみな実! ここの迫真の演技は、みな実自身の過去の恋愛が生きているのかしら……と思わずにはいられませんでした。ありがとうみな実。Mでこんな気持ちにさせられるなんて!(2回目)

伝説のMステシーンを再現

 「星は孤独だから輝ける」理論で自己完結するマサ。神に選ばれるって大変だなぁ~。一方アユは、マサに突き放され、創作意欲もステージへのモチベーションも吹っ飛んでしまい、数日間行方をくらまします。

 彼女が戻ってきたのは歌番組。このシーンは実際の出来事を再現したものです。1999年当時、「ミュージックステーションスーパーライブ(Mステ)」に登場し、ライブ形式で「Boys&Girls」「appears」を歌った浜崎あゆみ。しかし「appears」に入ったところで、あゆが感極まって歌えなくなり歌が途切れ途切れに。会場のファンが合唱してあゆを支え、持ち直したあゆが「ごめーん!」とファンに告げる……という感動的なシーンでした。

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 私は当時リアタイしていましたが、まさかマサとこんなすったもんだを繰り広げているとは思ってもみなかったので、のど風邪でもひいたのかなと思っていましたね。

あらためて見ると感慨がすごい「appears」MV

 「悲しいときつらいとき、心のシンバルを叩きまくるのよ!」とアユを叱咤激励する天馬まゆみ先生。前回の礼香さまがやってましたね。わかります。

 2人は別れの道を選びます。最後に言葉を交わした場所は海辺。1話冒頭の名言「あの日も海を見ていたな……」の「あの日」はもしかしてこの日なのでしょうか。「マサはアユに幸せになってほしいですか」の問いに「そうだ」と言いたい気持ちを押し殺し「輝き続けてほしい」と答えるマサ。アユは傷ついた心を奮い立たせ、マサへの最後の歌詞(ラブレター)をしたためます。これまでさんざん「M愛」を茶化してきた視聴者も、このシーンは茶化せません。Mでこんな気持ちにさせられるなんて……!(3回目)

 そこからシーンは3カ月後―――。神にえらばれたカップルの別れは、世の中を激変させておりました。なぜかマサはエイベックスの社長に。大浜社長は「マサを見ていていて自分もまたイチから好きなことを突き詰めたい」とのたまい社長を電撃辞任(「です」の秘書はマサの秘書に)。そして礼香さまは、a victoryを退職、おまけに失明していた目が手術で回復しているではありませんか。

 「手術をすれば治るかもしれないと言われていたけど、(マサをつなぎとめるために)こんなものにすがっていたの!」と眼帯を圧殺。「通りもんでは?」と話題になり、なんとCM提供までに発展した眼帯が……! ネットは「通りもんが“こんなもん”になったー!」と大騒ぎです。

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 めちゃくちゃ力業でシメてくる展開にネットは騒然。いつも漫画をつくるときオチに悩んできた苦労はなんだったんだ。この強引さは見習っていきたいです。

 そしてアユがマサに贈る最後の曲も完成。我々が当時ずっと「マリア」の頭文字だと思っていた「M」は「マサ」の「M」でした。1話のころから知ってたけど、やっぱりね。そうだよね。改めて見ると感慨深いです。

M愛は「星」でした

 マサへの別れの言葉とともに「私は世の中が暗いとき、ふと空を見れば輝いている星になりたい」と決意表明をするアユ。4月から最終回の7月4日にかけて、土曜23時15分からの1時間は疫病自粛中であることを忘れさせてくれたこのドラマは、まさに私にとって「星」でした。終わっちゃうのが寂しいです。散々おちょくり倒してきたこの連載の最後にこんな気持ちにさせられるなんて!

 伝説の歌手の伝記物語は、ファンの思い入れも深い分、どんなに丁寧に作っても制作側も見る側も敏感になりがちだというのに(しかもこのドラマの場合、本人はご存命)、ここまでやりたい放題を極めた制作チームと、特に大々的に怒るわけでもないあゆファンのみなさま、そして何よりあゆご本人の懐の深さに大感謝を表して連載を締めたいと思います。ありがとうございました。

蟹めんま

奈良県出身の漫画家・イラストレーター。自身の約20年間のバンギャル生活を描いたコミックエッセイ『バンギャルちゃんの日常1~4』(KADOKAWA)が発売中。30代に差し掛かったあたりから他人の恋バナをつまみながらの飲酒が日常化。Twitter:@kanimen

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