ロングシートなんて大嫌い? 乗り鉄がこだわる「座席」のお話:月刊乗り鉄話題(2020年7月版)(2/4 ページ)
ほんとはこだわりたいんです。でもロングシートもいいものです。回転クロスシートも褒め称えたいんです。
みんな何が好き? クロスシートのいろいろ
クロスシートは「座席の向き」による分類です。サービスや機構によってさらに分類されます。
座席数が最大になる「ボックスシート」
「ボックスシート」は、前述した宮脇俊三が説明した「四人向かい合わせの席」です。背もたれが垂直で、全体として箱のように見えるからボックスシートです。セミクロスシート車両のクロスシートはほとんどボックスシートです。
4人グルーブでは楽しい空間になりますが、他人ばかり4人だと、わりと気まずい(笑)。窓際の1人が降りたあと、混んでいてもそこに座ろうとする人がいなくてずっと空席という場面も見かけます。
国鉄時代、長距離運行する普通列車、急行列車はボックスシートだけがズラリと並んでいました。座席数が最大になるからです。「長時間乗るから椅子が多いほうがいいでしょ」ということですね。
しかし、大都市に乗り入れる列車の場合は、ボックスシートだけでは乗り降りに時間がかかります。そこで「乗降扉の付近だけロングシートにする」という車両が誕生しました。これがセミクロスシートの始まりです。
ロングシートは「乗客数を増やせること」です。国鉄時代の和田岬線(兵庫県)では、大混雑と近距離路線という割り切りで、ロングシートさえほとんど取り払った客車もありました。車両の中央に数人しか座れない。初めて乗ったときはびっくりしました。
前述した横須賀線の新型車両は普通車が全てロングシートになります。これは「横須賀線は、もはや通勤路線であり、中距離路線とは呼べない」とJR東日本が判断したということ。「それでもクロスシートで景色を楽しみたい、喫食しながら乗りたい人は、グリーン車に乗ってね」となります。その代わりに2004年からグリーン料金が改訂され、平日は休日より安く、車内で買うより乗車前に買う方が安くなりました。定期券や青春18きっぷでもグリーン券を買えば乗れます。
「回転クロスシート」と「転換クロスシート」の違い
「回転クロスシート」は、新幹線や多くの特急列車で採用されている座席です。座席をくるりと180度回転させると向かい合わせになる機構が付いています。
「特急列車の旅はクロスシートで快適」と書いてある場合は回転クロスシートのことと読み取って良いと思います。回転クロスシートのほとんどはリクライニング機構が付いています。快適です。回転クロスシートなのにリクライニング機構がない車両には、ひとこと文句を書きたくなります。
「転換クロスシート」は、座面部分は動かず、背もたれを前後にバッタンとスライドさせて前後座席の向きを変えるタイプのクロスシートです。回転クロスシートが登場する前は、ほとんどの特急列車で採用されていました。初代新幹線車両も例外ではありません。
転換クロスシートはJR西日本の快速・新快速列車に多く採用されています。関東の乗り鉄は「JR西日本は快速もクロスシートでいいなあ」とうらやましく思うわけです。
転換クロスシートは回転を考慮しないので、座席の間隔を詰められる利点があります。しかし、リクライニング機構は採用されません。普通列車向きのクロスシートといえそうです。
ちなみに、東海道新幹線0系でも、後期形は2人掛け座席が回転クロスシートのリクライニング機構付きになり、3人掛け座席もリクライニング機構付きになりました。しかし3人掛け座席は回転できなかったため、座席の向きは固定されました。このような「リクライニング付き固定クロスシート」といえる方式は、海外の列車で採用例が多いようです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.