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狂気の映像兵器「がんばれいわ!!ロボコン」をきみは見たか コロナ禍で撮影された映画の新時代の幕開け(1/2 ページ)

公開中の映画「がんばれいわ!!ロボコン」には狂気がギッチギチに詰まっていた

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 現在公開中の映画「がんばれいわ!!ロボコン ウララ~!恋する汁なしタンタンメン!!の巻」がすごいことになっている。

(C)石森プロ・東映

 パッと見では夏休みの子ども向けの劇場用映画という印象を持つだろうが、公開されるやいなや、Twitterでは目を疑う感想がたくさん投稿されたのだ。

  • 「1秒たりとも正気ではない映像災害みたいな作品」
  • 「映像を使った人間の脳への人体実験」
  • 「ずっと具合悪いときに見る夢みたい」
  • 「人間の理性や良識への宣戦布告」
  • 「ぜひ一時停止も早送りも逃げ場もない劇場で観てほしい」

 これはなんだ、何が起こっているんだ。あの映画「キャッツ」のような衝撃の映画体験、もしくは「時計じかけのオレンジ」のルドヴィコ療法的なものを覚悟しつつも、極端な感想に惑わされることなくフラットな気持ちで見ようと思っていた。

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 結論を申し上げれば、映画「がんばれいわ!!ロボコン」はすさまじかった。みんな嘘は言っていなかった。上映時間はごく短いのだが、その中身は狂気でギッチギチだった。どういう気持ちになればいいかわからず、感情が迷子どころか島流しにあったんじゃないかと思った。なんなんだこれは。

 以下からは、中盤以降の衝撃の展開を伏せつつ、映画「がんばれいわ!!ロボコン」がすさまじい理由を記していこう。

映画「人体のサバイバル!/がんばれいわ!!ロボコン」予告

1:まっとうな経緯で復活したはずの「ロボコン」

 もともと「ロボコン」は石ノ森章太郎が原作を手掛けた特撮番組であり、1974年から1977年まで「がんばれ!!ロボコン」が、1999年から2000年には2作目となる「燃えろ!!ロボコン」も放送されていた。今回の映画は2作目からは20年、初代から数えればなんと43年という時を経ての復活になる。

(C)石森プロ・東映

 プロデューサーの白倉伸一郎氏によると、このたび「ロボコン」が復活したのは、カップリング上映の「人体のサバイバル!」と併映する実写作品の企画としてふさわしく、同じくアジア圏での認知があり、かつに今に至るまでの人気もあったことが理由なのだとか。すでに「ロボコン」のリメイク企画案はあったそうなのだが、今回は「人体のサバイバル!」とのバランスを考えたキッズムービーとして、一から作り直しているのだという。

 とてもまっとうな経緯で復活したはずの「ロボコン」だが……実際に出来上がったのは、前述した通り狂気という言葉が先に思い浮かぶ、とんでもない映画だった。

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2:開始5秒からおかしかった

 開始5秒でこの映画がヤバいことが分かる。ヘヴィメタルな音楽がガンガン鳴り響き、急激なスピードでズームインとズームアウトを繰り返して中華料理屋の店内を映し、女性が激しくヘッドバンギングをしながら料理を作っている。そこに天井を突き破ってやってきたロボコンは岡持ちに店主の頭をぶち込み、その子どもは「パパを出前してどうするんだよ~」とツッコむ。正気の沙汰ではない。

(C)石森プロ・東映

 そもそも、サブタイトル通りに「汁なしタンタンメンが恋をする」というメインプロットから常軌を逸している。確認のためにもう一度書くが、「汁なしタンタンメンが恋をする」のである。なぜ食べ物に意思が生まれるのか、なぜしゃべるのか、そうした問いかけは一切行われない。その後にこの麺は地球征服も企んでいることも分かるのだが、そこでの論理のトンチキぶりはたくさんの脳細胞の死を覚悟するほどに難解である。

(C)石森プロ・東映

 この汁なしタンタンメンの声を担当するのは、人気声優の鈴村健一。彼が赤ちゃん言葉で父と慕うロボコンに語りかけ、飛びかかってチンゲンサイでおっぱいを吸おうとするシーンでは意識を失いかけた。確認のためにもう一度書くが、鈴村健一ボイス(赤ちゃん語)の汁なしタンタンメンがチンゲンサイでおっぱいを吸おうとする。さらに、登場する中華料理は汁なしタンタンメンだけじゃない。あんなヤツが現れ、あんなことになるとは誰が予想できるのだろうか。

 すでに狂気の釜の底にいるわけだが、ヒロインのロボットが起こすある騒動に至っては、もう斜め上だとか超展開だとかという言葉では足りない、「一体何を見せられているんだ」と思うしかない、悪夢のような光景がスクリーンに広がる。劇場からは子どもたちが呆気にとられる空気が確実に伝わってきた。

(C)石森プロ・東映

 その後は、汁なしタンタンメンの成長物語へと展開していく。麺は精神的に成長するんじゃなく物理的に伸びるものだと思っていたが、その既成概念が覆される衝撃のラストが待っている。信じてくれ。嘘は書いていないんだ。たすけて。

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 恐ろしいのは、このどとうの展開がすさまじいスピードで繰り出されることだ。「ツッコミが追いつかない」どころか「ツッコむ隙が一切ない」のだ。あるのは、ただ狂気の禍中にいるという感覚のみ。Twitterの感想にあった通り、これは逃げ場がない劇場でこそ観るべき、全く新しい映像体験、いや映像兵器である。

3:プロデューサー・脚本家・監督それぞれの意向が噛み合って生まれた奇跡

 そもそも、なぜ汁なしタンタンメンをフィーチャーしたのか? と誰もが思うところだが、白倉伸一郎プロデューサーはまず「ロボコンががんばる話」にしてほしいと脚本家の浦沢義雄氏に提案し、そのロボコンが失敗してしまう例として「例えば出前のタンタンメンの汁をこぼして、汁なしタンタンメンにしちゃうとか……」という具体例をあげたところ、浦沢氏が「あ、それいいね」と気に入ってしまったことがその理由だそうだ。

 その浦沢氏は、「激走戦隊カーレンジャー」「人造昆虫カブトボーグVxV」などの不条理ギャグ脚本で知られ、「ペットントン」という特撮番組では「横浜チャーハン物語」というシューマイとチャーハンが結婚式をあげる話を手掛けていたりもする。「汁なしタンタンメンが恋をする」物語を作り上げるのにも不思議はない(?)というわけだ。

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