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ニコラップの先駆者“らっぷびと”はなぜネットにラップを投稿したのか 1曲の投稿きっかけに人生が変わった瞬間ニコスターインタビュー(2/3 ページ)

らっぷびと誕生の陰には伝説のサイト「歌詞→HIPHOP系」の存在がありました。

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――ライブではなくネットを披露の場に選んだのはなぜだったのですか。

らっぷびとそれは単純に僕が陰キャだったからだと思います(笑)。当時はオタクという感じでも陽キャという感じでもなかったのですが、「クラブ」と聞くと「なんだか怖い場所」というイメージがあって、「自分たちでライブしたいから出してください!」って言いに行く勇気が出なくて……。

 ただmixiに音源をアップしていたら、クラブの関係者の方から「ライブに出ませんか?」というお誘いを受けたことがあって、17歳のころにライブに出させてもらったことがあります。そのときは友だちを20人ぐらい呼んで、僕らのお客さんしかいないような状態だったので、何をやっても盛り上がったんですが、歌詞は飛ばしちゃうしめちゃくちゃでした……(笑)。

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――でも17歳でのクラブデビューって結構すごいですよね。当時からやはり頭角を現していたということだと思います。アニソンでラップを始めたのはなぜだったんですか。

らっぷびと元々はらっぷびとではない別名義でオリジナルのHip-Hopをやっていたのですが、ある日、「アニソンってHip-Hopと比べて曲のBPMが速いのでは?」ということに気づいたんです。ということは「アニソンでラップをするのは難しい」ということになり、「アニソンでラップをする=ラップがうまい」ということになるんじゃないかと思い、調べてみたら誰もまだやっていなくて。

 そこで、当時流行していたアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」のエンディングテーマ「ハレ晴レユカイ」のトラックでラップをした楽曲を、自分でスレッドを立てて2ちゃんねるへ投稿してみました。

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――反響はいかがでしたか。

らっぷびと当時のVIPの雰囲気も手伝って、意外とすんなり受け入れてもらえたというか、好評でした。

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 当時は平井堅さんの「POP STAR」を替え歌した「VIP STAR」がはやっていたり、「オタクが二次創作する」というような文化があったんですよね。有志が空想で楽曲をまとめたりしたアルバム「「VIP ~QUALITY~ THE BEST」というような企画もあったりしたんですが、そこに僕の「冒険でしょでしょ?ラップ」も入っていたんですよ。

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 そうこうしていたら今度はそれが「ニコニコ動画に転載されているらしい」という話を聞いて、初めてニコニコ動画を見てみたんです。そうしたらコメントのシステムがすごく面白くて、「これはいいプラットフォームだ!」と思い、自分でも楽曲を投稿し始めました。これが僕のニコラップのはじまりです。

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――転載がきっかけだったとは知りませんでした。らっぷびとさんといえばニコニコ動画で「歌ってみた」ではなく、「音楽」のタグを使っていらっしゃったのが印象的です。

らっぷびとよく気づかれましたね(笑)。僕はアニソンだったり、ボーカロイド曲をアレンジしてラップしていたので、原曲を変えている以上は「歌ってみた」ではないと思っていました。それに結構“アニソンらっぷ”のイメージが強い方も多いかもしれませんが、僕はオリジナルの曲も当時からたくさん出していたこともあって、「カラオケをしてるわけじゃないんだぞ」というような、ちょっとしたプライドもあったと思います。

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――とくに印象深い投稿曲を教えてください。

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らっぷびと人として軸がぶれているらっぷ」です。自分が投稿した楽曲の中でも特にコメントが伸びて、ランキングでも連日総合2位になっていました。今までの投稿曲とは明らかに反応が違うと気づき、1時間おきにバイト先を抜け出して反響を見に帰っていましたね

――この楽曲をきっかけに驚くべきことも起きたそうですね。

らっぷびと『さよなら絶望先生』の原作に僕のラップの歌詞「火ヲ貸セヨ」というフレーズが登場したんです。このフレーズが出てくる当時の週刊少年マガジンは今でも大切に持っているのですが、「作者である久米田康治先生に自分の楽曲が届いた」という事実がこれまでやってきたことと明確に違いましたし、「自分の書いたリリックが漫画に載るなんて……!」と、本当に本当にうれしかったです。「火ヲ貸セヨ」は今でも僕の中で大切なフレーズになっています。

 また当初投稿したものは版権元に許可を得ていない形だったので権利者からの削除要請がありましたが、後日原曲を歌っていらっしゃる大槻ケンヂさんからのカバー許可も正式にいただくことができ、「人として軸がぶれているらっぷ」はデビューアルバム「RAP BEAT」に収録させていただくことができました。

「人として軸がぶれているらっぷ」はらっぷびとさんにとっても大切な一曲

 そして『さよなら絶望先生』の単行本第十六集・初回限定版OAD「獄・さよなら絶望先生 下」のオープニングには「空想ルンバらっぷ」を採用していただくなど、本当にあの1曲で全て変わりました。

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――作りこまれたリリックがらっぷびとさんの持ち味の一つだと思うのですが、特に言葉選びが秀逸だと感じたのが「When They Cry」です。楽曲に込めた思いなどを聞かせてください。

らっぷびとありがとうございます。「When They Cry」は僕がゲーム版の「ひぐらしのなく頃に」をプレイしてすごく感動したことからアレンジさせてもらった楽曲です。「これだけの感動をさせてもらったんだから、楽曲に落とし込まなくては気が済まない」という思いで、かなり気持ちを込めて作りました。

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タイツォンとは昔からの知り合い! コラボしたクリエイターたち

――さまざまなクリエイターとのコラボも話題を呼びました。ああしたコラボはどのように実現したのですか。

らっぷびと割と自分からコラボを申し込んだ人が多いですね。ただタイツォンだけはちょっと特殊で、彼が中学のころからその存在を知っていました。当時から一緒に楽曲を作ったりする仲だったんです。

 昔は僕もタイツォンも別名義でラップしていたので、最初は気づいていなかったのですが、ニコニコ動画にアップされている楽曲を聞いたら「あいつの声だ!」と分かって(笑)。ニコニコ動画では「オーディエンス沸かす程度の能力」という楽曲のコラボをしたりしましたね。

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――まさかお知り合いだったとは……! ほかにも印象深いコラボアーティストはいますか。

らっぷびとニコニコ動画で活動していたニコラッパーの中には、僕やタイツォンと同じように、ネットラップから流れてきた人が結構多かったんですよね。

 印象深いのは「Smiling」や「Fire◎Flower」でご一緒させていただいたhalyosyさんと、「Just Be Friends」のゼブラです。

 halyosyさんは珍しくコラボを打診してきてくださった方で、最初にすごい長文のメールをいただいたんですね。でもあまりにもていねいすぎて最初の印象は「怪しっ!」って感じで(笑)。ご連絡を取ったらすごく良い方でコラボにいたりました。

――あれだけのニコラップブームを巻き起こしていたのに、コラボの申し出が少なかったというのは意外でした。

らっぷびと先ほどのお話にもありましたが、僕は「音楽」タグを使っていたこともあって、ちょっと怖がられていたみたいんですよね……(笑)。今でこそこうやってお話できていますが、当時は根暗というか、コミュ障で、自分からガツガツ話しかけられるようなタイプじゃなかったので、イベントなどに出させていただいても孤立していましたよ。自分では仲良くしたかったんですけどね……(笑)。

 だからそういう状況にも関わらず仲良くしてくれたゼブラとかが逆に異質だったというか、ありがたかったですね。

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アルバイトからメジャーデビューアーティストへ ニコニコはどんな場所?

――ニコニコ動画でのブレイクをきっかけにメジャーデビューも果たしましたが、デビューまでの道のりはどういう感じだったのでしょうか。

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